みなさん,AAI(AWS Authorized Instructor)って知ってます?
この度私はAAIになりました。この機会に,(国際的な?)技術講師の面白さを書いておきます。
AAI(AWS Authorized Instructor)とは
一言でいうと,AWSの公式トレーニングを開催できる講師です。
普通のエンジニアとは違います。AWSの技術を分かりやすく伝える技術を持ったエンジニアです。
メリット
公式トレーニングコンテンツにアクセスできる
図解が豊富な公式トレーニングコンテンツにアクセスできます。
みなさん,AWSの公式ドキュメント読みまくってますよね?とっても分かりやすいでしょ?あれ?
実際には,なかなかAWSの公式ドキュメントだけでは分からないこともあります。理由の一つは,AWSの公式ドキュメントが文書ばかりで図解が少ないこと。機械翻訳にかける都合で,図解を扱いにくいのかな。
ところが,公式トレーニング教材は非常に図解が多いのです。
なので,AAIになると「うーん,この文章意味がわからん」というときに,トレーニングコンテンツで情報を補完できるのです。
世界中のイベントに招待される
せっかくAWSで遊んでいるなら,海外の人達といっしょにやった方が面白いと思いませんか?
AAIになると,毎月,毎年のペースでAAI限定セミナーやカンファレンスがあります。
特に世界のAAIが模擬講義を行うセミナーでは,貴重な他の講師の講義テクニックを学ぶことができます。
すぐに日本での講義に活かせるかというと難しいことも多いのですが,非常に刺激になります。むしろ海外でセミナー開けるようにすればいいよね。
注意点
英語力が必要になる
AAIの運営拠点とのコミュニケーションは英語です。講義中にトラブルが発生したときの対応でも,最終的には英語力が勝負になります。とはいえ,基本はメールやチャットなので,あまり構える必要はありません。
ノルマがある
AAIを維持するには一定のノルマがあります。講師の品質を維持するためなのでやむを得ないのですが,他の仕事と兼任している場合,状況によってはノルマが厳しいかも。
スポンサーを見つける必要がある
適切なATP(AWS Training Partner)に,スポンサーになっていただく必要があります。
自分の経験談
AAIになるための制度はしょっちゅう改訂されているので,私の経験談はあくまで個人的なものです。
会社から「AAIをやってみないか」という打診を受ける
会社から「暇な人」ということで話を受ける(笑。いや講座コンテンツを再開発している最中だったので,まったく暇じゃないけど,さすがにリスキリングの必要性を感じていたので,お受けすることに。ここ数年,基幹システムプロジェクトに関わっていたので,最新技術べったりにあこがれていたのです。
何度かAWSJとレビュー
ICA(Instructor Candidate Authorization)という試験を受ける前に,何度かAWSJの方と講師レビュー。講師としての説明力には自信があったけれど,AWSは完全トーシローですから大変。久しぶりにネットワークプロトコルや今どきのセキュリティを勉強しました。会社としても初めての経験なので,何をどう準備すればいいのか全く検討が付かず,リーダーも私もとんちんかんなレビュー対策をする日々が続きました。でも対策を通じて,最近の技術動向を改めて把握できました。
まだ私も現場エンジニアできるんじゃないか,と錯覚するくらい勉強できました。
ちなみにこの時にもっとも役に立った書籍は,
「AWSコンテナ設計・構築[本格]入門」
https://www.sbcr.jp/product/4815607654/
土日をまるまる潰して,2,3回,ハンズオンを実施しました。何も考えずに手を動かしている時間が好き。この本,改訂してほしいなぁ。
あと,この間に,以下の資格を取得しときました。
- AWS Certified Cloud Practitioner
- AWS Certified Solutions Architect – Associate
- AWS Certified Developer – Associate
- AWS Certified Machine Learning – Specialty
「なんでMLSとってんの?」って言うと,自分が機械学習の知識がゼロだったからです。幅広くレビューされるということで,できるだけ幅広く,自分の未経験分野を取ったと。あと個人的に数学が好きだから。
公式コンテンツを使ってICA準備
On Boarding開始!6か月以内にICAを受験する必要があります。なんだが私の場合,最初のAWSアカウント登録で躓いたり,途中で他の案件が入ったりでなかなか進みませんでした。AAI用のメールアカウントは,独自に取得することをお勧めします。個人アカウントでトラブると,個人でやっていたことまでできなくなるので。
ICAが対象としているコースのは3日間コースなので,準備も100時間以上はかかるとみて良いです(平日夜中,土日にやって3か月くらいか)。
私の場合,リスキリング状態なので・・・
- 資料の章,節,項をノートに書き出して暗記する(何も見ずに構成が再現できるまで。でもすぐ忘れる)。
- 資料の図をかたっぱしからノートに手書きする(カラーペンで。楽しい)。
- 演習を3回通す(飽きるまで。やってないと忘れる)。
- 自分で解説に使用するデモを作る。
私の場合,デモ作成がつらかった・・・何しろ私が自社で初めてのAAIだから,先輩の作ったデモと
かないので完全手探り。でもおかげで一人でやっていけるくらいの講師準備経験を積めました。
ICA当日
実施の様子は細かくは書けないのですが,講師として大事なことは分からんことは持ち帰って調査です。暗記して即答する作戦はNG。だってAWSは頻繁にサービス内容が変更されるから。しかも,受講者はその場の回答をもってただちに自分の仕事をするわけでもありません。時間がたったら解説内容も古くなってしまう。必ず公式ドキュメントを見せながら質問に答える。その場で回答した場合も公式ドキュメントを後で提示する。
受講者に最も持ち帰ってほしいのは公式ドキュメントの調べ方なんじゃないだろうか。
これはどんな技術研修でも同様だけど,どんな場合にどういう理由でその技術が必要になるのかを説明するのが大切。だから例えばLambdaの細かい機能とか説明できなくて良い。なぜ,どんな時にLambdaが必要になるのか,実際使うときにどんな注意点があるのか,を受講者を見ながら説明できる程度の能力は必要ってこと。
ちなみにICA受験中に痛感したのは講師登壇するならSolutions Architect - Professionalの設問を解説できるレベルの知識は必要,ということ。考えてみれば当たり前。
課題
自分の技術ポートフォリオを持つことが最大の課題。AWSは技術ポートフォリオの一部でしかありません。
AWS公式トレーニングの扱う範囲は,AWSのサービスです。フルスタックではありません。
あと,いくらDirect Connectの調査をしたところで,会社で専用線サービスを扱っていないならルータの設定すらできないでしょう。
私の場合,今どきのフロントエンド開発,コンテナ開発のところがすっぽり抜けてます。AWS公式トレーニングではTailwindとか出てこないし。手を動かせば理解できる,ということでもAWSの物量におぼれていると気づかないんだよね。
終わりに
ここまで読んでくれてありがとうございます。
いつかみなさんと一緒に勉強できるといいなーと思ってます。
講座でなくても,勉強会とかで。