はじめに
これまで、NANDフラッシュメモリを使ったSSDを選ぶ際に良く参照される「寿命」と「性能」について、以下のような内容をご紹介しました。
- SSDの選び方(1/5):TBWは値だけ見ても意味がない!
- SSDの選び方(2/5):じゃあTBWって何なんだ?
- SSDの選び方(3/5):SSDの寿命を縮める使い方
- SSDの選び方(4/5):SSDの性能表記はワナだらけ
このままでは「じゃあどうやってSSDを選んだらよいのか」ということが不明なまま終わってしまいますので、この記事では、一連の記事のまとめとして、「SSDの選び方」をまとめます。
サマリ
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SSDの使いかた(SSDの使われかた)を確認することがSSD選びの第一歩
- SSDの使いかたによってSSDの何を重視すべきかが変わります
SSD選定用チェック表
これまでの記事でご説明した通り、NANDフラッシュメモリを使ったSSDの寿命や性能はSSDの使いかたに大きく依存します。
したがって、SSDの使いかた(SSDの使われかた)を確認することがSSD選びの第一歩です。
表1は、SSDの使いかたに着目した、SSD選定用のチェック表です。「ReadとWriteの比重」や「アクセスの傾向」などの「項目」列の内容が「SSDの使いかた」にあたる内容です。
SSDを選ぶにあたり、まず、表1の各項目について、想定される「SSDの使いかた」がレベルSからCのどの内容に該当するか(最も近いか)を確認してください。
そして、レベルSからCのそれぞれのレベルに何個の項目が該当したかを確認してください。
ケース別「SSDの選び方」
SSDの選び方は、表1のレベルSからCまでの各レベルに何個の項目が該当したかによって変わります。
それでは、各ケースについて見ていきます。
「レベルS」がひとつでもあるケース
<公表されている指標だけでは選定不可能! 実運用レベルの評価・試験に基づく選定が必要>
いずれかの項目のうちひとつでも「レベルS」の内容に該当する場合、SSDの選定は可能な限り慎重に行う必要があります。
というのも、寿命にしても性能にしても、カタログに記載されている数値やベンチマーク性能を取得(計測)した環境と、実際にSSDが使用される環境との乖離が、とても大きいからです。
このケースにあてはまる使いかたをするSSDを選ぶ場合は、可能な限り、実際のシステムにSSDを組み込んで、実ワークロードで性能確認や寿命の推定などを行い、要求仕様を満たすものを選定すべきです。
メーカーサポートの有無や(契約)内容なども重要な選定ポイントになり得ます。
「レベルA」がひとつでもあるケース
<できる限り容量の大きいものを! エンタープライズ向けSSDも選択肢になり得ます>
「レベルS」の内容には該当しないものの、ひとつでも「レベルA」の内容が該当する場合、できる限り容量の大きいSSDを選定すべきです。
これは、「レベルA」の内容が高性能と長寿命(高信頼性)を求めるものであるのに対し、NANDフラッシュメモリを用いたSSDは基本的に容量が大きければ大きいほど性能が高く寿命が長いことを期待できるからです。
また、このケースの場合、いわゆるエンタープライズ向けSSD(エンタープライズSSD)が適している可能性があります。したがって、「エンタープライズSSDを評価する」というのも選択肢の一つです。
というのも、「レベルA」の内容の多くは、データベースシステムやミッションクリティカル系システムといったエンタープライズシステムにおいてSSD(エンタープライズSSD)が使われているユースケースおよび環境に近いからです。
なお、ここで言う「エンタープライズSSD」は「データセンター向けSSD」とは異なりますのでご注意ください。
もちろん、「レベルS」の内容に該当するものがあった場合と同様に、実ワークロードで性能を確かめたり寿命の推定を行えるのであれば、それがベストです。
もしそのような評価ができない場合は、とにかく大容量のSSDを選択すべきです。
「レベルB」がひとつでもあるケース
<寿命に要注意! 選定は「寿命」を重要基準に>
「レベルS」と「レベルA」の内容に該当しない場合でも、ひとつでも「レベルB」の内容に該当する場合、SSDの選定には注意が必要です。
「レベルB」の内容に該当する場合、特にNANDフラッシュメモリの寿命、ひいてはSSDの寿命に対して十分な考慮が必要です。
なぜなら、「レベルB」の内容は、いずれもNANDフラッシュメモリのデータ信頼性や寿命に対して厳しいアクセスパターンだからです。
このケースの場合、使用されているNANDフラッシュメモリの品質、およびSSDコントローラによるNANDフラッシュメモリのケアなど、寿命に関する情報を収集して選定すべきです。
ひとつの方法としては、「レベルA」に該当した項目があったケースと同様に、できるだけ容量の大きいSSDを選ぶ、という方法があります。
もちろん、他のケースと同様に、実ワークロードで性能を確かめたり寿命の推定を行えるのであれば、それがベストです。
「レベルC」の内容のみ該当するケース
<選択肢が最も多いケース! そのぶん玉石混合なので注意も必要!>
「レベルC」の内容にのみ該当した場合、選択肢が最も多くなります。
価格、容量、メーカーなど、お好みの条件で選定しても、選定(購入)時点で最新のものであれば、大きな問題は起きないと考えられます。
ただし、選択肢が多い分、性能、寿命、品質等、様々な製品が存在します(ばらつきが大きい)。したがって、逆に注意が必要である、とも言えます。
このケースにおいても予算が許す限り大容量の製品を選んだ方が良いです。
また、実ワークロードで性能を確かめたり寿命の推定を行えるのであれば、それを行うに越したことはありません。
おわりに
これまで一連の記事で、NANDフラッシュメモリを使ったSSDを選定および使用するにあたって、誤解されていることが多い点や、知っておいていただきたい点をまとめてきました。
NANDフラッシュメモリとそれを搭載したSSDは、その大容量化に伴って、これまで以上に「上手に使うためにはその性質を正しく理解することが必須であるデバイス」となり、使いかたによって寿命や性能が大きく変化するようになりました。
SSDの性質を正しく理解していただき、より良く使って頂ければと思います。
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