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SSDの寿命とNANDフラッシュメモリ(2/3):SSDにとっての「保証書き換え回数」

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はじめに

 前回のNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」に関する記事から、NANDフラッシュメモリを不揮発性メディアとして採用したSSD(以降、単にSSDと記載します)の寿命、特にNANDフラッシュメモリ起因の寿命や信頼性についてまとめています。

 今回は、前回説明した「NANDフラッシュメモリの保証書き換え回数」について、SSDからみたこの値の意味、つまり「SSDの寿命」との関係についてまとめます。

まとめ

  • SSDにとって、搭載するNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」は「寿命のベース」を決める要素
  • 搭載するNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」をどう使うかはSSD(コントローラ)次第
    • 同じ「保証書き換え回数」のNANDフラッシュメモリを搭載した2つのSSDの寿命(あるワークロードでのTBW)が異なることはあり得る

SSDにとってのNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」の意味

 SSDにとって、NANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」は、SSDの寿命の「基本能力(キャパシティ)」を決める要素です。

 SSDの寿命は、搭載するNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」だけでは決まりませんが、とはいえ「保証書き換え回数」が多いに越したことはありません。ベースとなるキャパシティが大きくなるからです。

 以前「SSDの選び方(2/5):じゃあTBWって何なんだ?」という記事では、「SSDの使いかた」を要素に含まないSSDの「推定寿命」を、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリの容量と「保証書き換え回数」の掛け算で定義し、その「推定寿命」と「TBW」の差とその意味を説明しました。

 その記事で示した図を再掲します(図1)。

SSDの推定寿命とSSDによる寿命消費の違い(イメージ)
図1:SSDの推定寿命とSSDによる寿命消費の違い(イメージ)

 この「推定寿命」は「SSDの使いかた」を含まないため、搭載するNANDフラッシュメモリの保証書き換え回数やNANDフラッシュメモリの搭載量(容量)などが同じ製品であれば、「推定寿命」はどの個体でもほぼ同じと考えることができます。図1 (A)の「出荷直後」の状態は、その意味でSSD1とSSD2の寿命消費の状態が同じであることを示しています。

 しかし、この状態から推定寿命をどのように消費していくのか、推定寿命がどのように消費されていくのかは、SSDによって異なります。

 図1 (B)と(C)のように、同じアクセスパターン(=同じ使いかた)でも、SSDによって寿命消費の様子は異なります。

 このことは、SSDの寿命にとって搭載するNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」が重要であることは間違いないものの、SSDの寿命は「限りある寿命をどのように消費するか」という「SSDの実力」にも大きく左右される、ということを示しています。

 ここで注意が必要なことは、2つのSSDがあって、あるアクセスパターンにおいて図1 (B)と(C)のような寿命消費の様子になったとしても、それは「SSD1はそのアクセスパターンが得意だった」もしくは「SSD2はそのアクセスパターンが苦手だった」可能性があり、SSD2の性能(寿命消費の様子)が全てのアクセスパターンにおいてこのようになるとは限らない、ということです。

 SSDの性能と寿命消費は「使いかた(≒アクセスパターン)」に強く依存しますので、「使いかた」が異なると全く異なる性能や寿命消費の様子になることに十分注意してください。

SSDの機能でNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」を超えることも!?

 「推定寿命」は、SSDが搭載するNANDフラッシュメモリの容量と「保証書き換え回数」の掛け算で定義しました。「推定寿命」はSSDの寿命の基本能力ですので、もしこれを延ばす(増やす)ことができれば、SSDにとって大きなプラスになることは間違いありません。

 でもそんなことができるのでしょうか? 実はできます

 一つ前の記事で示したNANDフラッシュメモリのメモリセルのデータ保持能力保証の定義は、以下のようなものでした。

書き換え回数が○○回までであれば、××時間放置しても、△△(能力を示す表現)の誤り訂正機構があれば、書き込んだデータは正しく読める

 この定義の中の「書き換え回数○○回」の部分が、一般的に「保証書き換え回数」とされているものです。

 この定義の中には、保証書き換え回数の他に2つ、NANDフラッシュメモリのデータ保持能力を決定する要素が存在します。それは「放置時間」と「誤り訂正能力」です。つまり、「放置時間」を短くしたり、より強力な「誤り訂正能力」を備えたりすれば、「保証書き換え回数」を増やすことができるのです。

 逆に、放置時間がNANDフラッシュメモリのデータ保持能力保証期間よりも長くなる使いかたをする場合や、何らかの理由でより低い能力の誤り訂正方法で使用しなければならない場合は、書き換え回数が少なくなるはずです。

 いずれにしても、SSDメーカーがNANDフラッシュメモリの「保証書き換え回数」と異なる書き換え回数を謳っている(≒寿命計算のベースにしている)場合、SSDメーカー自身がNANDフラッシュメモリのデータ保持能力を決定する3つの要素つまり「書き換え回数」「放置時間」「誤り訂正能力」について十分な評価と分析を実施したうえで決定していることの裏返しとなります。

まとめ

 今回の記事では、前回「NANDフラッシュメモリの保証書き換え回数」を説明したことを受けて、SSDからみたこの値の意味、つまり「SSDの寿命」との関係についてまとめました。

 SSDにとって、「NANDフラッシュメモリの保証書き換え回数」が、SSDの寿命の基本能力を決定する重要な値であることは間違いありません。

 しかし、SSDの寿命は、「限りある寿命をどのように消費するか」という「SSDの実力」にも大きく左右されますので、(SSDメーカーが示す)「NANDフラッシュメモリの保証書き換え回数」が大きいからといって、SSDとしての寿命が長いとは限らないことに注意が必要です。

ライセンス表記

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

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