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【まとめ】NAND / SSD関連の出来事【2022年】

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はじめに

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 と言いながら、2023年最初の記事は2022年を振り返る内容になります。個人的に1年を振り返るために作成している内容です。年始の読み物として捉えていただければと思います。

インデックス

  • 技術:3D NANDフラッシュメモリの積層数は200超え
  • 技術:5 bit/cellのNANDフラッシュメモリをSSDに適用
  • 技術:Optaneメモリ終息の影響
  • 製品:PCIe Gen5対応SSDが続々発表
  • 製品:小型ストレージの進化
  • 価格:2022年のSSD店頭価格推移

技術:3D NANDフラッシュメモリの積層数は200超え

 2022年2月に国際学会(ISSCC)でSamsungが発表した220層3D NANDフラッシュメモリ(第8世代V-NAND)[1]を皮切りに、200層を超える3D NANDフラッシュメモリの開発や量産開始さらにはSSDへの搭載発表まで一気に技術開発・製品適用が進みました。

 そのSamsungは11月に第8世代V-NANDの量産開始を発表[2]、Micronは5月に232層3D NANDフラッシュメモリを発表[3]して年末にはそのNANDフラッシュメモリを搭載したSSDの出荷を発表しました[4]。加えて、同じく200層を超えた中国YMTCの3D NANDフラッシュメモリを搭載したSSDを確認したという記事[5]もあります。

 Samsungは「1,000層を超えるV-NANDの開発を2030年までに行う」という計画を発表しており[6]、また今年(2023年)のISSCCではSK hynixが「300層を超える積層を可能にした」という研究開発成果の発表を予定しています[7]

 引き続き、3D NANDフラッシュメモリの容量密度向上の主力はワードライン積層数増加で変わらないようです。

 [1] PC Watch、Intel、IBM、AMDが次世代プロセッサの技術概要をISSCC 2022で披露、2022年2月3日(2022年12月19日閲覧)
 [2] Samsung, "Samsung Electronics Begins Mass Production of 8th-Gen Vertical NAND With Industry’s Highest Bit Density", November 7, 2022
 [3] EE Times Japan、Micron、2022年末までに232層3D NANDを製造開始、2022年5月24日(2022年12月19日閲覧)
 [4] Micron, "Micron Delivers the World’s Most Advanced Client SSD Featuring 232-Layer NAND Technology", December 6, 2022
 [5] Tech Insights, "YMTC's Xtacking 3.0, first to 200+ layers", 2022年12月19日閲覧
 [6] Samsung, "Samsung Electronics Envisions Hyper-Growth in Memory and Logic Semiconductors Through Intensified Industry Collaborations at Samsung Tech Day 2022", October 6, 2022
 [7] 日経クロステック、NANDフラッシュメモリーがついに300層に、記録面密度も前年比55%増、2022年11月30日(2022年12月19日閲覧)

技術:5 bit/cellのNANDフラッシュメモリをSSDに適用

 積層数増加が主力の状況でも、各社は多値度の増加つまりメモリセル1つで記憶できるビット数を増やす研究開発も継続しています。

 昨年(2022年)2年ぶりに開催されたFlash Memory Summitにおいて、元IntelでSK hynixに売却されて発足したSolidigmが5 bit/cell技術(Penta Level Cell: PLC)を適用したNANDフラッシュメモリを搭載したSSDの動作確認を発表しました[8]。現在までに製品適用された技術はQLC (4 bit/cell)が最高です(2021年にKioxiaが発表した6 bit/cell動作は摂氏およそマイナス200度という低温下でのもの)。

 積層数の増加もプロセス技術的に困難を伴いますが、多値度の増加の場合、得られる容量増加(効果)がだんだん目減りするにもかかわらず実用的な処理時間で書き込みを行い一定のデータ保持特性を実現する技術的難易度が格段に高くなります。QLCはTLCと比較して容量が4/3倍(33%アップ)でしたが、PLCはQLCと比較して5/4倍(25%アップ)に留まります。

 多値度を増加させる技術開発がこのまま進むかどうかには注視が必要です。

 [8] Solidigm, "Solidigm Demonstrates World's First Penta-Level Cell SSD at Flash Memory Summit", August 2, 2022

技術:Optaneメモリ終息の影響

 技術動向では、複数存在した次世代インターコネクト規格が、Intel提唱の技術仕様をベースとするCompute Express Link (CXL)に統合される流れが加速しました。

 GPU含むプロセッサをはじめとした演算器(アクセラレータ)とメモリを直接高速に接続することを目的とした主要なインターコネクト規格には、CXLの他にも、Gen-Z、IBMのCAPI (Coherent Accelerator Processor Interface)やNVIDIAのNVLinkの流れを汲むOpenCAPI、そしてCCIXがありますが、このうちGen-Zは既に2021年にCXLとの統合を発表しており、2022年8月にはOpenCAPIの成果をCXLに移譲することが発表されました[9]

 IntelのOptaneメモリ事業終息発表[10]を受け、大容量(ワーキング)メモリを実現する手段として、OptaneメモリのようないわゆるStorage Class Memory (SCM)とそれを使用した製品ではなく高速インターコネクトが注目を浴びる結果となり、2022年8月に開催されたFMSはまさに「CXL祭り」でした[11]

 [9] CXL Consortium, "CXL Consortium and OpenCAPI Consortium Sign Letter of Intent to Transfer OpenCAPI Specifications to CXL" [PDF], August 1, 2022
 [10] PC Watch、Intel、Optaneメモリ事業の終息を発表、2022年8月1日
 [11] Forbes, "CXL Dominated The 2022 Flash Memory Summit", August 15, 2022

製品:PCIe Gen5対応SSDが続々発表

 近年PCIeの性能向上を牽引する製品のひとつに数えられるまでに成長したSSDですが、2022年は引き続きPCIe Gen5接続に対応したSSDコントローラおよび製品の発表が続々と行われました。

 2021年9月にPCIe Gen5対応SSDコントローラの開発を発表していたPhisonは、2022年1月にPCIe Gen5対応SSDコントローラE26を展示しました[12]。プレスリリースの中で「このコントローラはエンタープライズからコンシューマまで幅広く対応する」とアピールしています。同じ1月にはTeamGroupもPCIe Gen5対応製品を発表しました[13]

 その後、KioxiaはPCIe Gen5接続に対応したデータセンター向けSSDを発表し[14]、InnoGritがPCIe Gen5対応SSDコントローラのサンプル出荷を発表しました[15]。MSIは、上記PhisonのE26コントローラを使用したPCIe Gen5対応SSDを発表しました[16]

 プラットフォーム側はIntelもAMDも既にPCIe Gen5を利用可能ですので、2023年(年末?)にはとうとうPCIe Gen5接続のコンシューマ向けSSDが発売されることになりそうです。

 [12] Phison Electronics, "Phison Kicks Off the Future of Gaming During CES 2022", January 3, 2022
 [13] TeamGroup, "TEAMGROUP T-FORCE Debuts the Latest PCIe Gen5 SSD: Leaping Into a New Era of SSDs with Groundbreaking Technologies", January 27, 2022
 [14] Kioxia、次世代データセンター用PCIe 5.0向け第2世代SSDのサンプル出荷について、2022年3月23日
 [15] InnoGrit, "InnoGrit Corporation Announces Next-Generation PCIe Gen5 SSD Controller – Tacoma IG5669", May 27, 2022
 [16] MSI, "MSI Reveals Superb SPATIUM PCIe 5.0 Storage Performance & Enriches Its Lineup with SPATIUM M460 (HS)", Sepetmber 22, 2022

製品:小型ストレージの進化

 NANDフラッシュメモリを搭載したストレージ(SSD)については、エンタープライズ向けやデータセンター向けの「(体積が)大きい」フォームファクタだけでなく逆に「(体積が)小さい」フォームファクタでも新技術・新製品が続々登場しています。

 半導体に関する標準化団体のJEDECは、Universal Flash Storage (UFS)の最新仕様(バージョン4.0)を8月に発表しました[17]。UFSはハイエンドスマートフォンのストレージとして使用されるBGAパッケージのストレージです。

 UFSは物理層にPCIeではなくMIPIのM-PHYという技術を使用していて、UFS 4.0が採用するM-PHYバージョン5.0の1レーンの物理帯域は最高で23.32 Gbpsです。UFS 4.0は2レーン使用しますので合計すると46.64 Gbpsつまり5.83 GB/sとなります。これはPCIe Gen3x4接続のSSDが持つ物理帯域を上回るものです。

 SamsungはUFS 4.0準拠デバイスの量産を2022年8月に開始する予定だとを発表しています[18]ので、今年(2023年)中にUFS 4.0搭載スマートフォンが発売される可能性があります(まだ出てないですよね……?)

 またJEDECは2022年、Automotive SSD仕様も公開しました[19]

 この文書では、車両をいわゆる「自家用車」と「商用車」に分類してそれぞれの分類において搭載されるSSDの様々な仕様を規定しています。具体的にはPCIe / NVMe接続のBGAパッケージSSDをベースとして、容量、暗号技術を含むセキュリティ、信頼性、寿命、温度を含む動作環境、などを定めています。動作保証温度範囲は摂氏マイナス40度から105度と規定されています。

 [17] JEDEC, "JEDEC Updates Universal Flash Storage (UFS) and Supporting Memory Interface Standard", August 17, 2022
 [18] Samsung, "Samsung Electronics Unveils Far-Reaching, Next-Generation Memory Solutions at Flash Memory Summit 2022", August 3, 2022
 [19] JEDEC, "JEDEC Publishes Automotive Solid State Drive (SSD) Device Standard", December 13, 2022

価格:2022年のSSD店頭価格推移

 最後に、2022年を通じてのSSD店頭(小売)価格推移(個人調べ)をまとめます。

 調査方法は、複数の小売Webサイトでの販売価格(税込)を毎週調査してその単純平均を算出する、といういわゆる定点観測です。調査期間は2022年年頭から12月第4週(12/24)までです。

 分類は、SATA SSD (6Gbps) およびPCIe Gen3x4接続とPCIe Gen4x4接続のNVMe SSDの3種類とし、それぞれ容量帯別の単純平均値を示します。

 実際の価格はメーカーなどによりピンキリですし、新旧モデルを区別していませんし、セールなどでの最安値を追いかけているものでもありません。さらにこの値は単純平均値です。ここで示した価格で購入できることを保証するものではないことにご注意ください。

SATA SSD (2.5 inch)

 まずSATA SSD (6Gbps)です。M.2ではなく2.5インチケース品に絞っています。

SATA 6Gbps SSD(2.5インチケース品)年間平均価格推移
図1:SATA 6Gbps SSD(2.5インチケース品)年間平均価格推移

 全体的に「ほぼ横ばいもしくは値上がり」という傾向に見えます。4 TBや8 TBモデルはサンプル数(製品数)が少ないのであまり参考にならないと考えると、2 TBや1 TBモデルの値動きが最も市況を反映していそうです。

 2021年末には「2022年中に1 TBモデルが平均で10,000円を切るかどうか」と書いていましたが、グラフを見る限り10,000円の線に近づかずに2022年末を迎えたようです。

NVMe SSD (PCIe Gen3)

 次にPCIe Gen3x4接続対応NVMe SSDです。こちらはM.2形状のみでかつヒートシンクなしです。

PCIe Gen3x4接続M.2 SSD(M.2、ヒートシンクなし)年間平均価格推移
図2:PCIe Gen3x4接続M.2 SSD(M.2、ヒートシンクなし)年間平均価格推移

 4 TBモデルの値動きが激しいのはやはりサンプル数(製品数)が少ないためです。

 こちらは2 TBモデルが正しい(?)値下がり傾向を示しています。2022年末と2022年始を比較すると平均で2,000円程度値下がりしたようです。1 TB以下のモデルの価格はほぼ横ばいです。SSDの価格はNANDフラッシュメモリの価格が大半ですので、その影響を大きく受ける大容量品のほうが価格変化が大きくなるのは妥当な姿です。

NVMe SSD (PCIe Gen4)

 最後にPCIe Gen4x4接続対応NVMe SSDです。こちらもM.2形状のみでかつヒートシンクなしです。

PCIe Gen4x4接続M.2 SSD(M.2、ヒートシンクなし)年間平均価格推移
図3:PCIe Gen4x4接続M.2 SSD(M.2、ヒートシンクなし)年間平均価格推移

 こちらも4 TBモデルの値動きが激しいのはサンプル数(製品数)が少ないためです。

 Gen3接続製品と異なり、Gen4接続製品では2 TBモデルだけでなく1 TBモデルや500 GBモデルも価格が下落しています。下落幅が一番大きいのは2 TBモデルで、平均で7,000円程度下落しています。そのほか、1 TBモデルは平均でおよそ2,000円、500 GBモデルは平均でおよそ200円下落しています。

 Gen3接続製品とGen4接続製品のどちらでも2 TBモデルが値下がりしていること、およびGen4接続製品では2 TBモデルの価格下落が一番大きいことから、現在最も競争が激しいのは2 TBモデルであると言えます。

価格比較

 最後に、サンプル数がそれなりにある500 GB、1 TB、2 TBの3つの容量帯について、SATA、PCIe Gen3、PCIe Gen4の接続構成間で価格を比較した結果を示します。

 あくまでも私が調査した範囲内での比較結果であることにご注意ください。

表:2022年容量帯別SSD平均価格比較表(単位:円)

容量帯(GB) SATA PCIe Gen3 PCIe Gen4
500 年始 6,457 7,433 12,033
年末 6,738 7,790 11,116
価格差(下落率) ▲281 (▲4%) ▲357 (▲5%) 917 (8%)
1,000 年始 11,491 12,673 20,852
年末 11,884 12,791 17,456
価格差(下落率) ▲393 (▲3%) ▲118 (▲1%) 3,396 (16%)
2,000 年始 24,622 29,196 42,978
年末 25,975 26,871 35,823
価格差(下落率) ▲1,353 (▲5%) 2,325 (8%) 7,155 (17%)

注:▲は値上がりを示す。下落率は「(価格差)÷(年始平均価格)」の百分率表記(小数点以下四捨五入)。

 見渡すと1 TB帯が最もコストパフォーマンスが高そうです。製品数も豊富です。性能や寿命を考えると1 TBよりも2 TBの製品を選びたいのですが、1 TB帯とはまだまだ2倍強の価格差があります。

まとめ

 今回の記事では、NANDフラッシュメモリやSSDにまつわるニュースや出来事を取り上げて、2022年を振り返りました。

 2023年も市況には先行き不透明感が拭えず、またコンシューマ向けでは現時点で大きなイベント(新型ゲームコンソールの発売など)の予定はないという認識です。となると、華々しく新製品や新技術が披露されるというよりは、着実に技術が進化する一年になりそうです。

 2023年もどんなことが起きるか楽しみです。

ライセンス表記

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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