はじめに
こんにちは!今日は、リレーショナルデータベース操作言語として世界中で使われているSQL(Structured Query Language)の歴史と、その標準化の流れについてまとめます。SQLは、データベース技術を学ぶうえで避けて通れない存在であり、過去から現在に至るまでの発展を理解することで、なぜSQLがここまで広く普及し、標準化が進められてきたかを確認できます。
本文
SQLとは
SQL(構造化問合せ言語) は、関係データベース管理システム(RDBMS)に対するデータ定義、データ操作、データ制御など、あらゆる操作を行うための宣言的な言語です。
SQLの由来
SQLの起源は1970年代にIBMが研究していた SEQUEL(Structured English Query Language) という言語です。この言語は、関係モデル(エドガー・F・コッドが提唱)の理論に基づくデータ操作を実現するために考案されたものでした。後に商標権などの問題から名称が変更され、 SQL(Structured Query Language) という名称が定着しました。
当時、IBMだけでなく他のベンダも関係データベース製品を開発しており、共通のデータベース操作言語としてSQLが受け入れられました。SQLは英語に近い文法で学習しやすく、広く普及しました。その結果、ほとんどの商用・オープンソースDBMSでSQLが標準的な問い合わせ言語として使われるようになりました。
標準SQLの制定と拡張
SQLは複数のベンダが実装し、機能拡張を行ってきたため、一時期はベンダごとの独自仕様が乱立していました。これが開発者やユーザーにとって混乱のもととなったため、ANSI(米国規格)やISO(国際標準化機構)が中心となって標準規格が策定されました。
- SQL-86(1986年):最初のSQL標準規格で、ANSIによる標準化が行われました
- SQL-89(1989年):整合性制約が追加されました
- SQL-92(標準SQL2 / 1992年):大幅に改訂(ISO 9075として標準化)されました。データ型の拡張、動的SQL、言語の直交性の改善、整合性機能拡張、外部結合、一時表、動的SQL、DDL拡張、トランザクション分離レベルなど多くの機能が盛り込まれました
- SQL-99(標準SQL3 / 1999年):現在主流の標準SQL規格は1999年に制定されたSQL99で正規表現検索、再帰問合せ(推移的閉包)、トリガー、手続き型や制御フロー文、配列型などを導入しました。オブジェクト指向的要素やJavaとの連携(SQL/OLB, SQL/JRT)も追加されました
- SQL:2003 / SQL:2008 / SQL:2011 / SQL:2016:定期的な改訂により、XML関連機能、ウィンドウ関数、階層型問い合わせ、JSONサポートなど、現代的なニーズに応える機能が追加されています
ベンダ独自拡張と標準SQLの関係
OracleやMicrosoft SQL Server、MySQL、PostgreSQLなど、主要なRDBMSは標準SQLに従いつつ独自拡張を追加しています。これらの拡張は高機能かつ便利ですが、移植性を下げる原因にもなります。そのため、システム間連携やDBMS移行を考慮する場合は、可能な限り標準SQLを優先する設計が推奨されます。
日本国内規格と情報処理試験
日本では SQL:JIS X 3005 規格群(ISO/IEC 9075に準拠)が存在し、情報処理技術者試験ではこの規格を参照しています。SQL:2008相当の機能がベースとなりますが、実務上はこれ以降のバージョンの機能がサポートされているケースも多くあります。
現在のSQLと今後の展望
SQLは、関係データベースのみならず、分散型システムやクラウド環境でのデータ分析にも用いられるようになりました。NoSQLデータベースの一部がSQLライクなクエリ機能を提供するなど、SQLの文法や考え方が非伝統的なデータストアにも波及しています。
まとめ
SQLは1970年代のSEQUELから始まり、多くのベンダと標準化団体の努力によって整備・発展してきました。標準SQL規格(SQL-86、SQL-92、SQL:1999、SQL:2008、SQL:2016など)の更新に伴い、SQLはより豊かな機能と明確な定義を獲得し、関係データベース操作の事実上の標準言語となりました。
今後もSQLは進化を続け、非関係データストアや先端技術と組み合わせることで、データ活用の幅がさらに広がります。標準に沿ったSQLを学び、DBMSベンダ独自機能や最新規格をキャッチアップしていくことで、データベースエンジニアや開発者としてのスキルを強化できます。