この記事はAteam Hikkoshi Samurai Inc. & Ateam Connect Inc.(エイチーム引越し侍、エイチームコネクト) Advent Calendar 2019 5日目の記事です。
エイチームコネクトでエンジニアのマネージャをしています @keki です。
最近、クラウドベースのコンタクトセンターシステム Amazon Connect を検討する機会がありましたので、メリット、デメリットと使い方を整理します。
Amazon Connect とは
Amazon Connect を一言で表現すると「拡張が容易なクラウド型PBXをAWS内に構築できる機能」です。
従来のオンプレミス型PBXの場合、データセンター契約から、電話回線の手配、各種ネットワーク機器の配置と設定、PBX用のサーバを構築等々を行うことで初めて使えるものになりますが、Amazon Connect を活用することで、AWSにて用意しているネットワークインフラ内にPBXの構築が可能となります。
コンソール画面での操作で、簡単にPBXを構築することが出来ます。また、ACD(着信呼の自動分配)やIVR(自動音声案内)を実装することも可能です。
メリット/デメリット
メリット
初期費用無料
AWSその他サービスと同様、使った分だけ料金が発生する仕組みのため、初期費用無料で使うことができます。
月額料金が安い
Amazon Connect の料金は、
1日あたりの利用料(1番号あたりの利用料)+ 通話料金という構成になっています。
- 受電時の料金
- 発信時の料金
※ https://aws.amazon.com/jp/connect/pricing/ より引用(2019/12月時点)
通常、オンプレでPBXを構築、他社のクラウドPBXを利用して発着信を行う場合は、PBXの料金(オンプレの場合はデータセンター費用やハード費用等、クラウドの場合は月額利用料)と通話料がかかりますが、 Amazon Connect の場合は、番号使用料と通話料のみで利用することができるので、とても安価です。
- 料金例
以下、Amazon Connect 料金ページからの引用です。
料金の例
アジアパシフィック (東京) リージョンで、エンドカスタマーが Amazon Connect の ドイツ直通ダイヤルイン (DID) 番号を使用して電話をかけ、エージェントが Amazon Connect ソフトフォンを使用して応答します。通話は 7 分間続きます。
この通話には 3 種類の料金が適用されます。
1.エンドカスタマーの通話時間に応じて Amazon Connect のサービス利用料金が発生します。1 分あたり 0.018 USD * 7 分 = 0.126 USD
2.日本 DID 番号を使用したため、1 日単位の料金が発生します。1 日あたり 0.10 USD * 1 日= 0.10 USD
3.また、日本 DID 番号には、1 分単位の受信通話料金が発生します。1 分あたり 0.003 USD * 7 分 = 0.021 USD
この通話の合計は 0.25 USD です。 (税金、手数料および追加料金が適用される場合があります)
0.25ドル/7分 (1ドル=110円 とすると 27.5円/7分)は、圧倒的に安いです。
導入が楽
後ほど使い方を説明しますが、ACDやIVR等の設定を行わず、単に通話ができるようにするだけであれば、30分もあれば構築が可能です。構築の手間は、他のPBXと比較して圧倒的に楽です。
信頼性が高い(SLA99.99%)
AWSのネットワークインフラを活用しているので、他のAWSサービス同様の信頼性を確保することができます。
AWSの各サービスと連携ができる
深層学習チャットボットサービスである Amazon Lex や音声文字起こしサービスの Amazon Transcribe といったサービスとの連携が容易です。
また、録音された音声データを S3 にアップしたり、Lambda と組み合わせて受信した電話番号を元に処理を実行したりといった使い方も可能です。
デメリット
取得できる電話番号に限りがある。0120番号が登録できないことも?
Amazon Connect の管理画面にてどの電話番号を使うか選択することができるのですが、
取得できる番号には限りがあるようです。
※ 今回検証した際には、0120番号を取得できましたが、数ヶ月前に試した際には0120で始まる番号を選択することはできませんでした。
既存の電話番号を移管出来ない
さらに、現在使っている電話番号を Amazon Connect に移管することはできないようです。
現在既にコールセンターシステムを導入しており、 Amazon Connect への移管を考えていらっしゃる方にとっては、致命的な課題かもしれません。今後のサービス成長に期待ですね!
モニタリング機能が弱い
例えばSV(スーパーバイザー)がメンバーの通話状況をリアルタイムで確認したり、モニタリング(メンバーが話している内容を別端末で聞いたり)、通話中にメンバーにのみ音声を発信したり(アドバイスを出したり)といった機能は備わっていないようです。
こちらも今後のサービス成長に期待といったところですね。
使い方
とりあえず電話ができるようにするまでの流れをまとめます。
※ 画面は2019/12時点のものです。
URL
操作手順
- TOPページ
- ID管理画面
Amazon Connectで使用するユニークなIDを指定します。
ここでは、「sample-contact-center」としています。
- 管理者の作成
管理者ユーザを設定します。
なお、 Amazon Connect のユーザーは IAM とは別で管理されます。
- テレフォニーオプションの設定
そのままの設定で、次のステップに進みます。
- データストレージの設定
ここも特に設定変更する必要はないでしょう。
ストレージ管理を変更したい場合は、必要に応じて修正してください。
- 内容確認
内容確認し、問題なければ、インスタンスの作成ボタンをクリックします。
インスタンスが作成されるまでに1~2分程度かかるので、しばらく待ちましょう。
- 完了
完了したら、今すぐ始めるをクリックして Amazon Connect 管理画面に移動します。
※ インスタンス作成直後は403エラーが表示されます。15分ほど待てば、管理画面に移動できますので、403エラーが表示された時はしばらく待ちましょう。
- Amazon Connect管理画面ログイン
先ほど設定した管理者ユーザーのIDとパスワードを入力し、ダッシュボードにログインします。
- 管理画面TOP
管理画面TOPのダッシュボードより、電話番号の発番を行うことができます。
「1. コミュニケーションチャネルの調査」にある開始ボタンをクリックします。
※ 画面の表示は日本語に変更しています。(デフォルトは英語)
- 電話番号取得画面
使用する電話番号を取得することができます。
2019/12時点では、0120番号を選択することもできました。
※ 以前試した時は0800番号しか選択できませんでした。タイミングによっては取得できないかもしれません。
- 発信テスト
発信のテストを行います。画面右側に表示されたCCP(Contact Control Panel) の Number Pad をクリックし、ご自身のスマホ等に電話してみましょう。
- 着信テスト
デフォルトの設定のままでは、着信してもガイダンスが流れるだけで受信ができないので、問い合わせフローの設定が必要です。
左メニュー内の「ルーティング」から「電話番号」を選択します。
先ほど取得した番号が表示されるので、電話番号をクリックします。
電話番号の編集画面にて、「問い合わせフロー/IVR」のプルダウンを「Sample queue customer」に変更し、保存します。
着信を受けるためにはCCPを起動しておく必要があります。
画面右上の電話アイコンをクリックすると起動できます。
CCPを起動すると以下のような画面になります。
左上のステータスを「Available」にした状態で、取得した電話番号に電話をすると、電話に出ることができます。
着信中の画面はこちら。
電話をすると、英語のガイダンスが流れた後、軽快な保留音が流れてきます。
こちらは、問い合わせフロー設定やプロンプト設定にて変更することができます。
まとめ
まだまだこれから発展していくと思われる Amazon Connect ですが、小規模なコールセンターを立ち上げる場合、0120番号にこだわりはなく、0800番号でも大丈夫という場合にはとても有用なサービスだと感じます。
逆に、既に大規模なコンタクトセンターを運用している状況の中で、コールシステムを移管するケースでは、 Amazon Connect を選択することは(現時点では)難しいですね。電話番号移管が出来ない点が、大きなボトルネックになってしまいます。今後に期待ですね。
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