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OSS LTE(その2)

Last updated at Posted at 2019-06-11

はじめに

OSS LTE(その1)の続きです。前回OAI EPCをセットアップし、起動しました。
今回はOAI SIMでUEとeNodeBをシミュレートして、OAI EPCと接続してみます。

本当ならEUTRAN(enodeB)をセットアップして、UE(スマホ)-EUTRAN-EPCといったような実際にスマホを自作したLTE網を経由してインターネットに接続させるということを
想定していまいsた。しかしEUTRANをセットアップする場合、無線HWを機器に取り付ける必要があるようです。手元に使えそうな無線機器がなかったので今回はOAI SIMをセットアップして、OAI EPCと接続するというおままごとで我慢することにします。

OAI SIM

UEとeNodeBをエミュレートするシュミレータ。ソースファイルはOAI EUTRANのものを使用し、途中のビルド時にOAI SIMをセットアップするオプションを指定するとOAI SIMになるっぽいです(公式のドキュメントには記載ありませんでしたが、触っているとそのような造りになっていることがわかりました)

セットアップ(OAI SIM)

Tutorialにセットアップ手順が記載されていますが、ほぼガン無視でやりました。Ubuntuの推奨バージョンであったり、カーネルのバージョンアップだったり、CPUのチューニング等について記載されていますが、やっておりません。それでも動いたのでヨシとしています。

1.VM作成

以下の通りUbuntu VMを作成します。

  • ホスト名: sim01
  • OS: Ubuntu 16.04.5
  • Spec
  • CPU : 4vcore
  • Memory : 4GB
  • Disk : 50GB
  • Network
  • ens3 : 管理用インターフェース
  • ens9 : 内部通信(EUTRAN-EPC)用インターフェース
    image.png

2.ソースファイルのダウンロード

以下のコミットがスムーズにうごくという噂を聞いたため、ソースファイルのダウンロード後にそのコミットまでロールバックする。

# apt-get install git
# git clone https://gitlab.eurecom.fr/oai/openairinterface5g.git
# cd openairinterface5g
# git reset --hard 67df8e0e7b46200b2ee43a2705def3340ddfd719 

3.ビルド

# ./build_oai -I --oaisim --install-system-files

実行後にターミナルが文字化けしてしまいますが、ビルドは成功しています。
一度ターミナルから抜けて、再びログインしてください。

4.設定ファイルの編集

OAI SIMとOAI EPC(もしくはEUTRAN)はデフォルトで接続できるように設定されています。そのためインターフェース設定のみ変更します。

# vi /root/openairinterface5g/targets/PROJECTS/GENERIC-LTE-EPC/CONF/enb.band7.generic.oaisim.local_mme.conf

141     mme_ip_address      = ( { ipv4       = "172.16.0.52";
142                               ipv6       = "192:168:30::17";
143                               active     = "yes";
144                               preference = "ipv4";
145                             }
146                           );

148     NETWORK_INTERFACES :
149     {
150         ENB_INTERFACE_NAME_FOR_S1_MME            = "ens9";
151         ENB_IPV4_ADDRESS_FOR_S1_MME              = "172.16.0.115/24";
152
153         ENB_INTERFACE_NAME_FOR_S1U               = "ens9";
154         ENB_IPV4_ADDRESS_FOR_S1U                 = "172.16.0.115/24";
155         ENB_PORT_FOR_S1U                         = 2152; # Spec 2152

5.OAI SIM起動確認

# cd /root/openairinterface5g/cmake_targets/tools/
# ./run_enb_ue_virt_s1

[S1AP][W]Received unsuccessful result for SCTP association (3), instance 0, cnx_id 1
[ENB_APP][I][eNB 0] Received S1AP_REGISTER_ENB_CNF: associated MME 0
[ENB_APP][W] 1 eNB is not associated with a MME, retrying registration in 10 seconds ...
^C

このコマンド実行時、OAI EPCを起動していないため、MMEと接続できないという旨のメッセージが出力されます。そのため一度起動できることを確認したらctrl + Cで抜けてください。

接続(OAI SIM <----> OAI EPC)

1.OAI EPCの起動

EPC
# cd openair-cn/scripts/
# ./run_hss
# ./run_mme
# ./run_spgw

SPGW起動後にVMのインターフェースを確認すると、以下のようにgtp0という仮想IFが存在しています。これはPGWのインターフェースであり、接続されたUEはこのインターフェースを経由してインターネットへ接続します。
なおこのインターフェースのIPアドレスはSPGWで設定しているIPV4_LIST(UEのIPアドレスプールレンジ)の先頭アドレスが割り当てられるはずです。

EPC
gtp0      Link encap:UNSPEC  HWaddr 00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00-00
          inet addr:1.1.1.1  P-t-P:1.1.1.1  Mask:255.255.255.0
          inet6 addr: fe80::9046:6240:b838:9cfc/64 Scope:Link
          UP POINTOPOINT RUNNING NOARP MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:0 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
          TX packets:0 errors:3 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:1
          RX bytes:0 (0.0 B)  TX bytes:0 (0.0 B)

2.OAI SIMの起動

※それぞれの起動は別のターミナルで行ってください。

SIM
# cd /root/openairinterface5g/cmake_targets/tools
# ./run_enb_ue_virt_s1

ErrorとかWarningがでてきますが、気にしないでおきましょう。

3.接続確認

MMEを起動したらStatisticsテーブルが出力されます。
OAI SIMとOAI EPCが正しく接続できていれば、StatisticsテーブルのCurrent Status列のカウンターはすべて1になります。

EPC
======================================= STATISTICS ============================================

               |   Current Status| Added since last display|  Removed since last display |
Connected eNBs |          1      |              0              |             0               |
Attached UEs   |          1      |              0              |             0               |
Connected UEs  |          1      |              0              |             0               |
Default Bearers|          1      |              0              |             0               |
S1-U Bearers   |          1      |              0              |             0               |

======================================= STATISTICS ============================================

4.インターネットへ接続

OAI SIMのインターフェースを確認するとoip1という仮想インターフェースが存在していることがわかります。これがOAI SIMのUEのインターフェースであり、IPV4_LIST内のIPアドレスが割り当てられていることがわかります。

SIM
oip1      Link encap:AMPR NET/ROM  HWaddr
          inet addr:1.1.1.2  Bcast:1.255.255.255  Mask:255.0.0.0
          UP BROADCAST RUNNING NOARP MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
          RX packets:0 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
          TX packets:0 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
          collisions:0 txqueuelen:100
          RX bytes:0 (0.0 B)  TX bytes:0 (0.0 B)

このIFからPINGを8.8.8.8(Google Public DNSサーバ)に送信して、インターネットとの接続を確認します。ただ今のままではインターネットへのルーティング情報がないため、デフォルトゲートウェイをPGWに向ける必要があります。
以下の通り、PGWにデフォルトゲートウェイを向けるようにします。

SIM
# route add default gw 1.1.1.1
# netstat -rn
Kernel IP routing table
Destination     Gateway         Genmask         Flags   MSS Window  irtt Iface
0.0.0.0         1.1.1.1         0.0.0.0         UG        0 0          0 oip1
1.0.0.0         0.0.0.0         255.0.0.0       U         0 0          0 oip1
10.0.0.0        0.0.0.0         255.255.255.0   U         0 0          0 ens3
172.16.0.0      0.0.0.0         255.255.255.0   U         0 0          0 ens9

これで準備が整いました。それではPINGを送信します。

SIM
# ping 8.8.8.8 -I oip1
PING 8.8.8.8 (8.8.8.8) from 1.1.1.2 oip1: 56(84) bytes of data.
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=1 ttl=49 time=449 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=2 ttl=49 time=169 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=3 ttl=49 time=146 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=4 ttl=49 time=165 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=5 ttl=49 time=185 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=6 ttl=49 time=124 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=7 ttl=49 time=182 ms

インターネットと接続することができました!

現状の構成をまとめてみると以下のようになります。
image.png

(ちょっと)詳しく見てみる

OAI SIMとOAI EPCが接続されて、OAI SIM内のUEがインターネットと接続できるようになりました。ではOAI SIMとOAI EPC間およびOAI EPC内でどういう通信をしているかパケットキャプチャを行い、通信フローを詳しく見てみます。

OAI SIM-OAI EPCの接続時、OAI EPCのens9とループバックインターフェースでパケットキャプチャを行ってみます。

EPC
# tcpdump -i ens9 -w /tmp/epc_ens9.pcap
# tcpdump -i lo -w /tmp/epc_lo.pcap

いくつかのパケットを以下に載せておきます。

Initial UE Message

image.png

Authentication-Information Request

image.png

Create Session Response

image.png

PING(U-Plane通信)

image.png

PingのパケットがGTPでカプセリングされていることがわかります。

最後に

これでOAI SIMとOAI EPCを接続することができました。
次回はOAI EPCをdocker上にセットアップしてみようかと思います。
もしくはOAI以外のOSS(NextEPC, srsLTE)をOAI SIMと接続させてみようかと思います。

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