SRE本 第9章「シンプルさ」詳細まとめ【複雑さとの闘い・設計原則・実例付き】
🔰 はじめに
SRE本 第9章「シンプルさ」では、Googleがインフラや運用において**「複雑さ」こそが最大の信頼性低下要因**であると認識し、シンプルな設計を重視する文化と哲学を解説しています。
信頼性・運用性・拡張性をすべて維持し続けるために、なぜシンプルさが重要なのか?どうすればシンプルに設計できるのか?この章ではその問いに向き合います。
🧱 複雑さの本質とは
✅ 定義
複雑さ(Complexity)とは、「あるシステムの振る舞いを予測しづらくする要因の総体」です。
🔥 複雑なシステムの弊害
- トラブルシュートが難しい
- 変更の影響範囲が読みづらい
- 障害が連鎖しやすい
- 人による運用・保守が困難になる
複雑さは技術的負債であり、障害の温床です。
🧠 なぜエンジニアは複雑にしてしまうのか?
誘因 | 説明 |
---|---|
機能追加 | ユーザー要求を満たそうとして仕組みが増える |
スケーリング対応 | トラフィック増加でインフラ構成が多層化 |
チーム交代 | 歴史的経緯の理解不足で設計が継ぎ接ぎになる |
コンウェイの法則 | 組織構造がシステムに投影されてしまう |
📌 シンプルさを設計に組み込む方法
✅ 設計時の原則
- 理解しやすいこと
- 変更しやすいこと
- 予測可能であること
- 不要な依存を避けること
🔧 シンプルにするための具体策
- 機能を分離してモジュール化
- 可視性・監視性を意識した構成にする
- 明示的なエラー処理とタイムアウトを設計に含める
- 単一責任の原則(SRP)を守る
🧭 システム設計の複雑化を防ぐフロー(図解)
📊 例:複雑 vs シンプルな設計比較
観点 | 複雑な設計 | シンプルな設計 |
---|---|---|
デプロイ方法 | 5段階の手動スクリプト | CI/CDで自動化 |
ログ構成 | ローカル保存+FTP+手動圧縮 | Cloud Logging一元管理 |
エラー処理 | 例外が沈黙し原因不明 | ログ+アラート+メトリクス連携 |
🧠 Googleの事例と学び
- Googleでは「スケーラブルだが複雑な設計」をシンプルにリファクタリングした事例が多数ある
- 複雑な依存関係は、新人オンボーディングの障壁になる
- 「このシステムを1週間で再構築できるか?」という問いが設計の健全性を測る指標になっている
✅ SRE的シンプル設計の鉄則
- 理解できないシステムは運用できない
- SLOやエラーバジェットの可視性がある構造を選ぶ
- SREはシステムの「なぜそうなっているか」を説明できるようにしておく
- シンプルであることはセキュリティにも寄与する
📌 まとめ
- 複雑さはあらゆる障害の母体
- シンプルな設計は、信頼性・変更容易性・学習コスト削減につながる
- シンプルを保つには、設計段階から運用まで一貫した意識づけが必要
🚀 次にやること
- 自システムにおける「複雑な箇所」を3つ書き出す
- その構成・依存関係・手順を図解する
- 「1週間で作り直せるか?」を自問してリファクタリング計画を立てる