プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(Project Management Professional)(以下「PMP」)という資格に、2020年6月にオンライン研修と独学で合格しました。
プロジェクトマネジメントに関わる知識は、エンジニアにとっても欠かせないものとなってきています。
試験そのものは6割程度の合格率と言われていますが、受験までのハードルが高い試験なので、どのようにして受験し、合格できたのか記録しておこうと思います。
<背景>
私は現在、ITコンサル系の業務(計画策定、業務分析、要件定義、システム調達、PMOなど)を8年間ほど行ってきましたが、システム開発の経験はなく、ベンダ側のプロジェクトマネジメントに関してはど素人です。(クライアント側のPMOだったり、コンサルプロジェクトのPMの経験はありますが、少し視点や必要とされる経験は異なると思います。)
また、大学では民俗学を学んでいたど文系の人間です。
こんなど文系ど素人の人間ですが、ITコンサルとして8年もやっていればもう一人立ちする必要があり、改めてプロジェクト管理の知識を身に着けて、それを対外的に示していくために、資格取得を行うことにしました。
ちなみに、プロジェクト管理に関する資格としては、PMP以外に、IPA(情報処理推進機構)の情報処理技術者試験(高度区分)「プロジェクトマネージャ試験(PM)」や、日本プロジェクトマネジメント協会の「P2M(PMC、PMS、PMR、PMA)」などがあります。
IPAのPM試験は年に1回しかないことや、他の資格は種類が多くて調べるだけでも時間がかかりそうだったので、日本国内だけではなく海外も含め最も知名度がありそうな、PMPを今回は受験しました。
日本国内の知名度で言っても、よくシステム開発やPMOの入札資格では、PMPかIPAのPMが必須要件として課される場合が多いので、その面でもまずはPMPを取っておくのがよいのかもしれません。
実際、就職・転職や、社内の評価・昇格、入札参加資格など多くの場合は、PMPとIPAのPMは同等レベルの資格として扱われるので、業務経験や知識等を証明するための資格としての違いはあまりなく、どちらを取得してもあまり変わらないかと思います。
費用と時間に余裕があるならPMP、記述試験の対策ができて試験タイミングが合えば、IPAのPM取得を目指すのがよいかもしれません。
<研修受講>
まず、PMP試験受験に先立ち、研修を受講しておく必要があります。
後述するAuditに引っかからなければ、受講しなくてもよいのですが、Auditの選出は完全にランダムですし、研修を受けておくことで知識体系が整理されるので、事前に受講しておく方がよいと思います。
私は、イープロジェクトという会社のEラーニングを受講しました。
https://www.e-project.jp/lecture/pmp-e-learning/
大手の予備校などでも、PMP受験に必要な35hの研修を証明するための対面研修が提供されていますが、10万円以上するところが多いです。
上記のEラーニングは、3万円という破格の値段で、テキストとなるPMBOKRGuide+アジャイル実務ガイド代(通常に購入すると1万円)を含めても3万7千円なので、お得だと思います。
こちらのオンライン講義を受けて、課題を提出すると、修了証明書が発行されます。
<試験申し込み>
事前の研修を終えたら、米国PMIのサイトから、試験の申し込みを行います。
https://www.pmi.org/certifications/types/project-management-pmp
PMP試験の申し込みを行うに当たっては、PMI会員になるか、一般のまま受験するか選択します。
PMI会員にならなくても受験はできますが、金額的に若干お得なのと、合格後にPMIの各種イベントへ参加できる(資格維持のためのPDUを取得できる場合もある)ので、PMI会員になっておいた方がよいかと思います。
試験申し込み時には、Application(経験)の作成も必要になります。
いくつかのプロジェクトについて、PMとしての各分野での経験時間と、プロジェクトの概要をすべて英語で書く必要があります。
けっこう時間がかかる作業なので、事前に作成しておいた方がよいと思います。
字数制限があるので、プロジェクトの詳細までは書けないと思いますが、各分野での経験を示すために、キーワードを散りばめておく必要があります。
しかも英語で書かなければならないので、google翻訳の力も借りながら、PMIホームページなども参照して、「Initiating the Project」「Planning the Project」「Executing the Project」「Controlling and Monitoring the Project」「Closing the Project」という各分野でどのような実績を経験したか、客観的に示す必要があります。
試験申し込み後、Auditに引っかかった場合にはすぐにその旨の連絡があります。
私はAuditに引っかかり、「Your application has been selected for PMI's audit process」というタイトルのメールがきました。
このAuditに引っかかると、以下の3点を郵送で提出する必要があります。
・経験(application)にcontact person の文書サインを入れ、封筒の封止箇所にもサインを入れたもの
・35h研修証明
・最終学歴証明書(英語)
上記のうち下2点はすぐに何とかなるとして、一番上がやっかいです。
Applicationに記載したものによりますが、それが昔のものだと、昔の上司に連絡を取らないといけませんし、最近のもので今の上司にサインをもらう場合であっても、昨今のコロナ禍の影響で、対面で上司に会う機会がめっきり少なくなっているでしょう。
CISAの場合は、オンラインで提出できたのですが、PMIは紙で郵送しなければならないのもやっかいですね。
書類を郵送後に、約2週間でAuditの結果が連絡されます。
私の場合、郵送してから約10日後に「Your PMI application audit materials have been received」というタイトルのメールがきて、同日中に「You have successfully completed PMI's audit process」というメールがきて、PMP受験のプロセスに進めるようになりました。
その後、PMIのサイトの指示に従って受験料を支払い、ピアソンVUEで受験会場及び受験日程を選択します。
<受験勉強>
私の場合、上記の研修受講~試験申し込み~Audit通過が2019年12月下旬~2020年2月初旬で、本当は年度内に受験したかったのですが、コロナの影響や年度末対応で業務が繁忙になってしまったため、ずるずると受験日程が5月までずれ込んでしまいました。
ちなみに、3月中旬にPMIから、COVID-19の影響で試験をリスケする場合には、変更・キャンセル料がかからない旨のメールがありました。
このおかげで、私も一度試験日程をキャンセルしていたのですが、キャンセル料がかからずに済みました。
そして、結局、受験までに間が空いてしまったので、この期間に再度改めて受験勉強を行いました。
主に使用した教材は、研修で使用したイープロジェクトのオンライン問題集などだったのですが、個人的な趣味ですが暗記には紙媒体の方がよいと思ったため、紙の問題集を追加購入しました。
使用したのは、「PMBOK(R)ガイド問題集第6版対応」(アイテックIT人材教育研究部)です。
PMBOK(R)ガイド問題集第6版対応
PMBOK(R)ガイド問題集第6版対応
アイテック
2018-10-22
こちらの問題集は、難易度的には易しいと思いますが、基礎を改めて押さえるのには良かったと思います。
Amazonのレビューにも書いてありますが、正直、本番対策にはあまり役立たないものの、PMBOK知識の基礎の確認のためにはよかったです。
この問題集だけで何とかするのではなく、分からない用語はPMBOKガイド本編を参照したり、Eラーニングの教材と併用することで、弱点の克服にはなったと思います。
あと、私は結局ほとんど使わなかったのですが、「PMPパーフェクトマスター」(伊熊昭等、海部雅之、鈴木安而)も独学用の参考書としてはおすすめです。
PMPパーフェクトマスター PMBOK第6版対応
PMPパーフェクトマスター PMBOK第6版対応
鈴木 安而
評言社
2018-07-13
そもそも、PMPの独学用の参考書は数が少ないですが、その中ではポイントが分かりやすくまとめられていると思いました。
巻末に簡易的なものですが、参考問題集も載っているので、こちらもPMBOK知識の基礎の確認のためにはよかったです。
<受験>
私は札幌在住なので、イーエデュケーションズ札幌北口テスティングセンターで受験しました。
https://testing.e-educations.net/
こちらのテストセンターはPMI試験以外にTOEFL/TOEICなどの試験をやっており、けっこう混雑していました。就活などのある時期は混雑して予約も取りにくいかもしれません。
また、テストセンターによって、受験環境や持ち込めるものなど詳細は違ってくるかと思います。
札幌は、目薬や時計は持ち込み禁止、ティッシュは袋から出したもののみ持ち込み可でした。また、メモ用の紙や鉛筆を渡されるかと思いますが、こちらの試験会場では小さいホワイトボードとペン2本でした。
試験内容になりますが、PMBOKの基礎的な知識というよりは、実践的な場面でどのように行動するかを問う問題が多かったように思います。
例えば、コンフリクトに関して何を優先すべきか、リスク発生時や変更管理時の対応、品質のマネジメントと品質のコントロールの違いなど。
どの問題も、複数の選択肢でどちらも間違いではないが、よりBetterなものや、Priorityの高いものを選択させるものが多かったように思います。
選択式ですが、部分点があるようなので、私自身も迷った選択肢が多かったのですが、恐らく部分点で何とか合格できたようです。
ちなみに、最近の試験変更により、90問が終了した段階で、強制的に10分休憩に入るようです。(ダミー問題の関係で、何問目で休憩に入るかは少し前後するみたいです。)
200問ぶっ通しでやるのかと思いきや、私の場合は90問目に入ったところで、ここから先に進むと戻れなくなりますというようなメッセージが出て、焦りました。
なお、90問目のときに、それまでの問題は見直せます。
逆に言うと、休憩に入ってしまうと、前半90問の見直しはできないので、このタイミングでしか見直せないみたいです。
また、時間は、トータルで240分なので、前半が早く終われば、その分は後半にまわせます。
後半の問題も終了し、200問すべて解答すると、瞬時に試験結果が出て来ます。
試験結果は、試験会場を出るときに紙でももらえます。
<試験結果>
試験当日の夜に「Congratulations, you have obtained a PMP」というメールが送られてきます。
認定書のオンラインでの発行も早く、上記のメールを受け取った後、当日の深夜には発行されていました。
<まとめ>
私の場合のスケジュールと費用のまとめです。
研修・事前準備:約1か月
Audit対応: 2週間
受験勉強:約3か月(期間としては3か月ですが、実質的に勉強した期間は1か月くらいでしょうか)
受験:1日
合計:4か月弱
研修+PMBOKガイド:4万円
PMI登録料:2万1千円($189)
Audit郵送代:190円
受験費用:4万5千円($405)
合計:10万7千円
試験そのものについても、もちろん勉強しなければならないため困難はあるものの、試験を受けるまでのハードル(英語の実績記入、上司の署名など)が異常に高い試験だったと思います。
個人的には、昨年末に公認情報システム監査人(CISA)試験に合格しており、勉強の波に乗れたので比較的スムーズに試験勉強をすることができました。
↓参考
ど文系ど素人の公認情報システム監査人(CISA)合格体験記
http://blog.livedoor.jp/meda3594/archives/51512136.html
コロナウイルス禍により、Afterコロナの社会では、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速度的に進んでいくことが予想されます。
また、AIやロボティクス、Iotなどの必要性も年々増しています。
これから先、プロジェクトマネジメントの知見を証明できるPMP資格の需要はさらに高まっていくと思われます。
みなさまもPMP試験、がんばってください。