はじめに
遠い昔、ラジオ放送でやってました。著名な作家の小説のストーリーを変えて朗読するコーナー。ストーリーは変えますが、その作品らしさ、文章の言い回しなどを変えません。
そんなストーリー変更がChatGPTならば可能かな、と思ってやってみました。青空文庫の芥川龍之介作「蜘蛛の糸」の一説をChatGPTに読ませて、変更を指示します。
「蜘蛛の糸」のストーリーは、ハッピーエンドとは言えません。これをハッピーエンドにします。ChatGPTに指示したのは、以下2点です。
- 蜘蛛の糸が切れずに全員が地獄から抜け出すことができた
- 最後、御釈迦様が大喜びする
結果
以下、ChatGPTが出力した文章です。場面は蜘蛛の糸を手繰って主人公カンダタ(青空文庫では犍陀多にルビ)と大勢の罪人が昇ってくるところです。
もし途中で断たれてしまったら、せっかくここまで登ってきた自分も、元の地獄に逆戻りしなければなりません。そんな事態になったら、とても困ります。
しかし、驚くべきことに、蜘蛛の糸がしっかりと全員を支え続けています。数え切れないほどの罪人たちが一列になって登ってきて、地獄から抜け出すことができたのです!カンダタは喜びに満ちた表情で、周囲を見渡しました。彼らは皆、自由の地へと歩みを進めるのです。
御釈迦様は極楽の蓮池のふちに立ち、この一部始終をじっと見ておられました。そして、カンダタたちが地獄から抜け出し、成功したことを知った瞬間、御釈迦様 の顔は大きな喜びに包まれました。御顔を輝かせ、手を打ち合わせながら喜びの言葉を述べられました。「素晴らしい! この蜘蛛の糸は巧妙に織りなされており、全員が地獄から抜け出すことができたのだ。皆さん、おめでとうございます!」御釈迦様 の声は喜びに満ち、極楽の空に響き渡りました。
《略》
御釈迦様 は大きな喜びを胸に抱き、蓮池のふちに立っている全員を見渡しました。彼らが地獄から抜け出し、極楽の自由な世界に辿り着いたことに心から感謝し、幸せな笑顔を浮かべました。「おめでとう! 皆さんは本当に立派です。自分の力だけで抜け出すのではなく、困難を乗り越えて助け合い、結束して上に登ってきた。これが真の勇気と団結の証です。極楽への道は険しいものでしたが、皆さんの努力と信念が報われました。喜びの瞬間です!」御釈迦様 の言葉は皆の心に響き渡り、大いなる喜びと感動が広がりました。
極楽の空は、幸せと喜びで満たされ、御釈迦様 の御姿は輝きに包まれました。全員が幸せに微笑み合いながら、新たなる自由の旅路を歩み始めました。
《略》の部位は、原文とほぼ同じ文章です。この文章は糸が切れたことに御釈迦様がネガティブに反応する内容となっていますので、矛盾する文脈になっていました。
終わりに
ストーリーは気持ち悪く陳腐な内容に変換されました。内容はちっとも面白くはありません。作家が絶対選ばないようなストーリーに変えて、でも、語り口が同じようなところを楽しむという点では、まあまあ面白いかなと思います。また、原文の方が圧倒的な味わいがあることも分かります。
著作権を考慮すれば、どの作品でも行えるわけではありません。そして《略》の部位のように文脈がおかしくなる点、完全自動というわけにはいかないでしょう。やっぱり、人の推敲が必要です。