はじめに
「Regional Scrum Gathering Tokyo 2022」の牛尾剛氏のセッションで、「アンブロック」という単語が登場した。
「アンブロック」という行動は、マネージャにとって、とても大切な行動だと思えたので、情報をまとめておく。
「アンブロック」とは
マネージャのすごく大事な仕事に「アンブロック」というのがあります。
開発者の人がどこかで詰まっている状態になると、マネージャが助けてくれる。ブロックされているものをアンブロックしてくれるんです。
例えば、僕が技術的に詰まるとして、誰かに聞かなあかんけど、誰か聞かなあかん人がなかなか答えてくれへんとか、そういうこともあるかもしれないです。そういうブロックをされる状況が一番生産性を阻害すると思うんですね。そういうときにマネージャがアンブロックを手伝ってくれる。ある人に繋いでくれたり、マネージャ経由で他の人が僕に協力してくれたりとか。
「アンブロック」に必要なこと
私もマネージャとして「アンブロック」を実施している。
「アンブロック」実施するうえで必要になるのが、以下の3点と考えている。
- 詰まっている状態を知る仕組み
- 様々な有識者との人脈
- アンブロックを手伝える余裕
1. 詰まっている状態を知る仕組み
私は、詰まっている状態を知る仕組みとして、以下を用意していた。そのときの状況によって、一部の仕組みしか使っていない場合もある。
- デイリーMTG(デイリースクラム、朝会)
- 日報
- 分報
詰まっている状態を知る仕組みを運用するときに大切になることは、「報告を受けた人ではなく、報告をした人が、その労力に見合う成果を得られるようにする」という考え方である。
また、「詰まったら打ち上げて」と言っても、「忙しい皆さんの邪魔になってしまうかもと考えると、打ち上げにくいです。」と言う若手メンバがいた。
これに対する対策として、『分報』とGoogle人工知能チームの『15分ルール』は、有効だった。
参考記事
2. 様々な有識者との人脈
私は、詰まっている状態をなんでも解消できるほどのスキルを有していなかったため、人にアンブロックの手伝いをお願いする必要があった。
そのために、社内の誰が何を知っているか把握し、社内の様々な人と関係を作っておいた。
関係を作るために、意識したのは以下の2つである。
- 頼まれたことは、ハイ!よろこんで(嫌がらない・断らない・後回しにしない)
まず自分が相手に何かしらの貢献をしておけば、次は自分に何か困りごとがあったときに助けてもらえる可能性が出てくる。つまり、Giveが先でTakeが後。 - 社内イベントへの積極的な参加
社内イベントに参加すると、普段のプロジェクトでは関連のない方々と、情報交換・意見交換ができる。この情報交換・意見交換に、時間を投資する。その時点では、すぐに価値がでないかもしれないが、ゆくゆく投資した時間が価値を生み出すことがある。
参考記事
3. アンブロックを手伝える余裕
詰まっている状態を知り、様々な有識者との人脈があっても、マネージャに余裕がなければ動けない。
プレーイングマネージャだと、早い「アンブロック」の行動は難しいかもしれない。
以下の書籍の考え方も重要だと思う。
- 「人月の神話【新装版】」,Jr FrederickP.Brooks
製作主任と技術主任を分けるべき(同一人物にすべきではない)
有能な管理的能力と強力な技術的能力を兼備している人間はめったにいない
技術主任の時間を圧迫せず、技術的判断を下せる権限を確立してやるべき
- 「ソフトウェアエンジニアリング論文集80's~デマルコ・セレクション」,トム・デマルコ, ティモシー・リスター
(ワインバーグの論文より)
1 自分に対する圧力を緩め、自分の業界や分野以外に興味をもち、他の業界や分野から学ぶ時間を作る。
2 自分に対する過度の管理をやめれば、他人への過度の管理もやめられる。
参考記事
おわりに
ちなみに、うちのチームでは、メンバもある程度の余裕が持てていたので、マネージャが「アンブロック」する前に、メンバがお互いに「アンブロック」をしてくれていました。
メンバに感謝です。ありがとう。