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トム・デマルコ「ゆとりの法則」に関係する経験則 ~マネージャーの圧について~

Last updated at Posted at 2021-09-04

はじめに

トム・デマルコの書籍「ゆとりの法則 - 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解」に、以下の一文があります。

第7章 プレッシャーの代償
プレッシャーはパフォーマンスとまったく無関係ではないが、私たち多くが考えるほど、少なくとも管理者になってある時期に考えるほど重要なものではないことは確かである。
優秀な管理者は、プレッシャーをめったに使わず、また長期間にわたって使うこともない。

また、ティム・リスターの言葉に以下があるそうです。

人間は時間的なプレッシャーをいくらかけられても、速くは考えられない

これに関連する、マネージャーの圧について、教えていただいたこと・議論したことをまとめておきます。

教えていただいたこと

2019年くらいに、松尾谷徹さん・小川清さんに、マネージャーの行動や心理的安全性について教えていただき、マネージャーにとって、以下は重要な考え方だと思いました。

※注意
以下の教えていただいたことの表現は、松尾谷徹さん・小川清さんの言葉を私が解釈した言葉ですので、少しニュアンスが異なる可能性がございます。松尾谷徹さん・小川清さんが同席している場で、お聞きした言葉ではなく、別々の場で同じようなお話をお聞きしたことを私がまとめております。

芸能人・野球部のマネージャーから学ぶ

主役は、マネージャーではなく開発メンバである。メンバが最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートすることが、マネージャーがするべきこと。

これは、結構意識してやってきました。ただし、どうしても、マネージャーである自分の手柄を求めてしまいがちでした。

圧をかけない

圧をかけられ育った場合、恐れずに挑戦するという行動が苦手になってしまうのではないか?
圧をかけられ育った場合、何をやるにも上の指示・許可を得てからでないと行動してはいけないと思いがちではないか?
例え、比較的に心理的安全な環境(チーム)に変わっても、一度ついてしまった怖がる癖は、簡単には変えられない。

自分の経験則でも、確かにそうでした。

教えていただいたことに対する実体験

ちなみに、自分は親と上司に恵まれて、許可を得る癖や怖がる癖はそんなにはなさそうです。
若い頃に、とある上司(山本佳和さん)の下で、育ったことがよかったです。圧をかけられず、挑戦させてもらい、たくさん失敗させてもらえました。親と佳和さんをはじめとする上司の方々に本当に感謝です。ありがとうございました。

教えていただいたことに対する議論

議論1

とある二人の会話

Mさん
芸能人・野球部のマネージャから学ぶってやつは、スクラムマスターも同じ考え方ですね。そういう役割の人がいるからこそ、最大のパフォーマンスが出せるというのは、同感です。
圧をかけないってやつは、かけすぎないの方が良い気がします。
前向きにどんどん仕事を進める人であれば、圧をかけなくて良いかもしれませんが、人間は、楽な方に逃げてしまうので、適度の圧は必要だと思います。
なぜなぜ分析は、適度に圧をかけて、考えてもらうためための道具だと思ってます。

Kさん
圧を適度にかけるというのは難しくて…受ける人によって悪い圧となるかどうかの境目が異なる気がします。だったら、圧はかけないということにしようと考えています。圧なしにチャレンジしてみます。圧以外の手段をもっていない自分に気づいてしまうかもしれませんが。
人から圧をかけられるではなく、何かをきっかけに自分で自分に圧をかけるのがいいですね。
自らやるなぜなぜはいいのですが、人からやらされるなぜなぜは、前向きなアクションがうまれにくいです…実際今までうまく行きませんでした。
メンバどうしで、よい刺激・気づき・きっかけを与えあえるような、振り返りの場を作りたいなぁと考えています。

Mさん
適度な圧は、例えば、問題解決の一つの手段として、なぜなぜを提案し、もし、受け入れてもらえるのであれば、期限を設定する。
その期限が、適度な圧になればと思ってます。
ただ、逃げ道を用意しておかないといけなくて、うまく進まなかった時に聞きやすい雰囲気だったり、途中で進んでるか声かけしたりしてあげるのはどうでしょうか?
期限設定を調整することで、徐々に圧をかけて行くのはどうでしょうか?

Kさん
ちょっと考えてみると、スクラムが、よい圧のかけ方なのかなぁと思えてきました。
自分たちで今週やることを宣言してやりきる、自分で今日やることを宣言してやりきる、できなかったら振り返り問題を解決する。できるようになったら、やると宣言することを増やす。これを繰り返す。
チームみんなで、ずっと適度な圧をかけてる感じです。
例えが悪いかもしれませんが、みんなで神輿を担いでる感じです。6人で担ぐことができたら、次は5人で担いでみる。または、神輿を重くしてみる。誰かが手を抜いたら、周りの担ぎ手の負担が増える。誰かが苦しそうだったら、まだ頑張れる人が力を入れる。
ずっとチーム全体に適度な圧がかかってる感じです。

Mさん
確かに、スクラムはどんどんベロシティを上げていかないといけないので、ある意味圧がかかってますね。
でも、お金をもらって仕事をしていること自体、圧がかかっていると思います。

Kさん
確かに、顧客と直接、お金と納期を調整し、約束をする立場の場合は、適度ではない圧(プレッシャー)がかかりますね。

Mさん
役職(役割)や立場によって、圧(プレッシャー)は変わりますね。

議論2

とある二人の会話

Kさん
プロジェクトで「問題 vs 私たち」の状態を作ったり、「人を責めないレビュー」をすれば、心理的安全性って高まるかなぁ?

Hさん
難しいと思います。「問題 vs 私たち」の状態を作っても、その問題を起こしたのが自分だとしたら、どうしても自分が責められているように感じます。「人を責めないレビュー」がされていても、レビューで責められている成果物が自分の成果物であれば、どうしても自分が責められているように感じます。自分の成果物は、自分の分身のようなものなので。

Kさん
確かに。そうだよね。

おわりに

経験則(仮説)

  • マネージャーからメンバに圧はかけないほうがよい気がします。人から圧をかけられるのではなく、自分で圧をかけている状態がよい気がします。
  • メンバの心理的安全性を確保するというのは無理であり、心理的安全でない状態で開発をしているという前提で、マネージャーはメンバとコミュニケーションをとったほうがよい気がします。
  • 「メンバを誰かの代わりになるように育てる。」という思考も、圧を生むように感じます。「メンバを育てる。」という思考ではなく、「メンバの皆さんに、自分の能力を最大限発揮していただく。そのための環境を整える。そのための機会を作る。」という思考であれば、ある程度うまくいくように思います。心理的安全性を高めるためのコミュニケーションに力を入れるのではなく、能力を発揮しやすい環境整える・機会を作るに力を入れたほうが効果的かもしれません。

参考文献・記事

松尾谷徹,「改善か動機づけか,どっちが効果的? - 顧客満足(CS),従業員満足(ES),+パートナー満足(PS)」,3rd NSPICE Conference,2019,http://nspice.net/archives/748

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