「転職にはポートフォリオが必須」とよく言われますよね。未経験からエンジニアを目指す人ほど、「まずは個人開発を頑張って、企業にアピールしよう!」と意気込むものではないでしょうか。
私自身、未経験・異業種から東京のIT企業・Xincere株式会社に転職し、現在はエンジニア1年目として日々コードを書いています。そんな私がまずお伝えしたいのは、「ポートフォリオに時間をかけすぎるのは非効率」 ということです。
なぜなら、未経験の段階で高度なアプリを作り込んでもプロ並みのクオリティには到達しづらく、企業が重視しているのは 「作品の完成度」 ではなく 「コードの書き方や技術選定の理由」 だからです。私が転職活動をしていたときも、ポートフォリオの完成度の高さより、設計の考え方や「なぜその技術を使ったのか」を繰り返し問われました。
もちろん、「ポートフォリオ作りなんて不要」というわけではありません。大切なのは、ほどほどに作ってサクッと仕上げることで、基本的な技術力や考え方をしっかりアピールすることです。この記事では、未経験からの転職で 「ポートフォリオの個人開発はほどほどに」 と言える理由と、その具体的なポイントを、私の実体験を交えながら解説していきます。
ポートフォリオは作るべき、でも時間をかけすぎるのはNG
未経験者にとって、ポートフォリオは「自分の実力を客観的に示せるツール」です。しかし、そこに時間をかけすぎると、本来優先すべき学習や勉強時間を奪ってしまうリスクがあります。特に、フルスタックに近い大規模アプリを一人で作るとなると、想像以上に手間と時間が必要です。
もちろん、完成度の高いアプリケーションがあれば目を引くかもしれません。しかし、実際は設計やコード品質がプロの水準に達していないケースがほとんどです。その結果、時間ばかりかかってしまい、肝心の言語の基本やアルゴリズム、Webの基礎知識などがおろそかになる可能性があります。
私も転職活動中、採用担当者の方から「やたらと凝ったアプリを作っている人がいるが、コードを見せてもらうと読みづらくて何をしているのか分からない」といった話を何度か聞きました。未経験者が評価されるポイントは “作品の派手さ” よりも “基礎の理解” です。ここを意識せずに時間をかけすぎると、本末転倒になってしまいます。
採用担当が重視するのはクオリティではなく「技術の基本」
では、採用担当は実際にどこを見ているのか。私が複数の企業を受けた経験や、面接官との会話を振り返ると、以下の4点が最も重視されていました。
1. コードが原則に沿って書かれているか
- 変数名や関数名に無理がないか、役割が明確か
- ファイルやディレクトリの構成が整理されているか
- コメントやドキュメントが必要最低限まとまっているか
2. 技術選定に理由があるか
- なぜそのフレームワークを選んだのか
- どのような課題を解決するために、そのライブラリを使ったのか
- 設計思想やアーキテクチャへの理解はあるのか
3. Gitを適切に使えているか
- コミットメッセージが具体的で、変更内容が分かりやすいか
- ブランチを活用しながら、機能ごとに作業を進めているか
- バグ修正や機能追加の履歴が適切に残っているか
4. READMEがしっかり書かれているか
- アプリの概要や動作環境、実行方法が明確に示されているか
- 使用技術や設計上の工夫点が整理されているか
- リリース手順や改善予定など、未来の展望を見据えているか
これらを見てもわかるように、「ポートフォリオの見た目の完成度」 はそれほど重要視されていません。むしろ 「基礎を正しく理解し、論理的にコードが書けているか」 こそが評価のポイントになります。どれだけ派手なUIや豊富な機能を盛り込んでも、コードの質や技術選定の妥当性が欠けていれば、高評価にはつながりにくいのです。
個人開発よりも基礎知識を優先しよう
ポートフォリオの個人開発に何カ月も費やすより、まずは基礎知識を徹底して学ぶことが大切です。特に未経験であれば、以下の4つは最優先と考えてよいでしょう。
1. プログラミング言語の基本
- 変数、関数、クラス、非同期処理など、言語仕様そのものをきちんと理解する
- エラー文やドキュメントを読んで、自力で問題解決できる力を養う
2. Webの仕組み
- HTTPやRESTの基本的な概念、リクエストとレスポンスの流れ
- クライアントサイドとサーバーサイドの連携方法
3. アルゴリズムとデータ構造
- 配列、リスト、スタック、キュー、ソートや探索などの基本的な考え方
- 大規模になった際、効率的に処理するにはどうするか、といった思考力
4. Gitの使い方
- ブランチを切っての開発や、適切なタイミングでのコミット
- 共同開発を想定した運用ルール(Pull Request、レビューなど)
これらの基礎力が弱いまま高度なアプリを作ろうとしても、コードは複雑化しやすく、バグが増えたりメンテナンス性が悪化したりする可能性が高いです。企業はそうした状態を見抜き、「この人は基礎を飛ばして無理をしているな」と判断してしまいます。結局のところ、「地に足のついた理解」 が最も大切なのです。
ほどほどに作ってサクッと仕上げるコツ
しかし、ポートフォリオそのものが不要なわけではありません。企業に「自分がどの程度コードを書けるのか」を示すには、何らかの形でアプリを作る必要があります。そこで、時間をかけすぎずに基本をアピールできる作り方のコツを3つご紹介します。
1. GitHub にコードをアップする
ポートフォリオを作るなら、必ずGitHubなどのバージョン管理サービス上にコードを置きましょう。面接官はコミットログを見て、どのようなステップで開発を進めているのかをチェックします。
コミットメッセージには、変更内容とその理由を簡潔に書く
大きな機能追加や修正の際はブランチを分けて作業を行う
こうすることで、「チーム開発を意識できている」 と判断されやすくなり、ポイントが上がります。
2. README をしっかり書く
READMEはあなたのアプリを初めて見る人にとって、マニュアルや解説書のような役割を果たします。具体的には、以下を最低限まとめておきましょう。
- アプリの概要(何ができるのか、どんな課題を解決するのか)
- 開発環境と実行方法(使用言語やフレームワーク、インストール手順など)
- 工夫した点や今後の改善予定(技術的チャレンジや残課題)
このREADMEを充実させることで、「目的意識を持って開発している」「技術選定に理由がある」 ことを自然にアピールできます。
参考:README の良い例
以下はREADMEが整備されていて見やすい事例です。概要、使用技術、実行方法などがしっかりまとめられているので、書き方の参考になります。
t-hoshino206 / recorally
shiramizu-junya / personal_history
terakura-aina / Date_me
READMEにどのような情報を載せるとわかりやすいのか、ぜひ実際に覗いてみてください。
3. シンプルなアプリで十分
未経験の方が初めから大規模アプリに挑戦すると、学ぶことが膨大になりすぎて手が回らなくなります。まずは基本的なCRUD(Create・Read・Update・Delete)機能を備えたアプリケーションで良いので、「動くもの」を早く作って公開することが大切です。
- ユーザー登録とログイン機能
- 投稿フォームやコメント機能
- シンプルなAPIの利用(天気情報やニュースの取得)
こうした機能を作るだけでも、HTTPのリクエストとレスポンスの理解、データベースのCRUD操作、認証やセキュリティなど、Web開発の基本要素を一通り経験できます。
UIやデザインにもこだわりたい方へ
一方で、開発をしていると UIやデザインにこだわりたい! と思う方もいるでしょう。私自身、転職前に「もっと見た目をオシャレにしたい」「凝ったアニメーションを実装してみたい」と感じたことが多々あります。
結論から言うと、UIやデザインに時間をかけるのは決して悪いことではありません。Figmaなどのデザインツールを活用し、ユーザーが使いやすいUIを考える経験は、実務でも必ず役立ちます。最近はフロントエンドとデザインの両方がわかるエンジニアが重宝されるケースも増えており、スキルの幅が広がる点でもプラスに働くでしょう。
しかし、転職活動の際に大きなプラス評価につながるかというと、そこまでではないのが現実です。基礎力(言語仕様や設計、Git運用など)を疎かにしてUIばかりに時間を注ぐと、企業から「根本的な技術が弱い」と見られてしまう恐れがあります。
したがって、「まずは基礎力を固め、余裕があればUIを凝る」 くらいのスタンスがベストです。UIやデザインの実装は作っていて楽しい部分でもあるので、モチベーションを保ちながら開発を進める意味でも取り組む価値は十分にあります。ただし、「やりすぎて他の学習が止まる」状態には気をつけましょう。
結論:ポートフォリオはほどほどに、基礎力をつけることが最優先
未経験からエンジニア転職を目指す上で、ポートフォリオは確かに重要です。しかし、こだわりすぎて全エネルギーを注いでしまうと、肝心の基礎力が疎かになりかねません。
- 採用担当は「コードの質」や「技術選定の理由」を最重視
- 複雑なアプリを作るより、基礎を身につける方が長期的なメリットが大きい
- 時間に余裕があればUI・デザインにもこだわってOK。ただし「やりすぎ」には注意
「ほどほどに作って、サクッと仕上げる」ことを意識しながら、学習や転職活動を並行して進めるのがベストです。私も転職後に現場で感じているのは、やはり基礎力があるかどうかが業務キャッチアップのスピードを左右するということ。ポートフォリオ作りはあくまで“基礎力を証明する手段” と捉え、優先度を見誤らないようにしましょう。
実際、私も最初は派手なアプリを作ろうとしましたが、途中で「これは時間のムダが多すぎる」と気付き、軽めのアプリを複数作りながら言語仕様やGit運用を丁寧に学習しました。その結果、転職後すぐに実務環境へ適応でき、「吸収が早い」と評価していただけています。
みなさんも、ポートフォリオ作りを大きな武器にしつつ、基礎力を疎かにしないことを意識して、ぜひエンジニア転職を成功させてください。応援しております!
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