秋葉原ロボット部の読書会の教科書「量子力学10講」第1講で触れられた前提項目のうち、高校物理の教科書で取り上げられていない内容をメモ書きしたものです。
波面を無数の波源の集まりであるとみなし、波源から送り出される球面波を素元波といいます。
波面の各点からは、波の進む前方に素元波が出る。これらの素元波に共通に接する面が、次の瞬間の波面になります。これをホイヘンスの原理といいます。
また、図1の点Aの上側や点Gの下側で観察されるように、波が障害物の背後に回る現象を回折といいます。すき間の幅に対して、波長が小さいときの、波の回折の模式図を図に示します。
図1.波の回折の模式図。黒い太線は障害物。a)観測開始。太い白線が平面波。b)t秒後に平面波が障害物に到達。点AからGは波源。c)2t秒後。波源AからGから素元波(細い白線)が発生。観測されるのは、太い白線の波。d)3t秒後の波。点Aの上側や点Gの下側の点線は障害物の背後に回り込んだ波面。
次にスリットを通った波が、スクリーンに作る模様を考えます。単色光がスリットを通った場合、スリットの延長線上に、明線が現れ、その両側に明暗の縞現れます。これは、スリットで回折した光の干渉によるものです。
単一スリットを通った光が全て打ち消しあう場合を、図2の例で考えます。
図2.波が打ち消しあう場合の単一のスリットを通る光a)幅dのスリットの部分を拡大。黒線はスリット、白線は一つの波源からの波の通り道。実線の白線は角度θ1傾いた場合。破線の白線はまっすぐ進んだ場合。点 A、B、Cは波源。DはBからAA’に下した垂線の足。EはCからAA’に下した垂線の足。b)黒線はスクリーン。P0はまっすぐ進んだ光の到着点。P1は角度θ1に傾いて進んだ光の到着点。
スリットに対してまっすぐ進む光は、スリットの延長線上に明線を作ります。
スクリーンに対してθ1の角度で傾いた場合、例えば、波Aと波Cの光が同時にP1点につく場合、AとCの光路差はAE=dsinθ_1になります。波長をλとした場合、AE=λ/2×2、 AD=λ/2であるなら、波Aと波Bの点P_1での位相差はπなので、打ち消しあいます。同様の考え方をすると、隣接する波の光路差が波長の半分になる場合、スクリーンの到達点の位相差はπとなり打ち消しあい、P_1は暗点となります。
最後に、光が一部打ち消しあう場合を、図3の例で考えます。
図3.波が一部打ち消しあう場合の単一のスリットを通る光。a)スリット近傍の拡大図、b)スクリーン近傍。線の意味は図2と同様。
最後に、波が一部打ち消しあう例を考えます。図3でFL方向の延長上に点P_2があるとします。FL=dsinθ_2=λ/2×3の場合、FJ=JK=KL=λ/2となるので、点Fから点Hの間に入射した光は図2の点Aから点Cに入射した光と同様に打ち消しあいます。一方、点Hと点Iの間に入射した光は打ち消しあわずに点P2に到達します。点P_2の明るさは点P0のものより暗くなります。
光路差とスクリーン上での明暗の結果をまとめます。
sinθ_1=λ/2×2:暗い
dsinθ_2=λ/2×3:やや明るい
さらにスリット幅を4分割、5分割して考えると、以下の様になります。
sinθ_3=λ/2×4:暗い
sinθ_4=λ/2×5:わずかに明るい
これらをまとめると、光路差と明るさの関係は以下の様になります。
dsinθ=λ/2×2n:暗い(nは自然数)
dsinθ=λ/2×(2n+1):明るい(nは自然数)。ただし、nが大きくなると、明るさは急激に小さくなる。
本稿には、単一スリットを通る波の回折と干渉および波の強度の定性的な考え方を示しました。定量的に考える場合、無限個の光に対して上記の考え方を適用することと、スクリーン上の光強度分布を考える際に、波の振幅の2乗が光の強度に相当することを使うことの2点を使って導出します。例えば、2000年の鳥取大学の入試問題の物理の大問4が参考になります。
参考文献 「新課程 親切な物理 下巻」渡辺久夫著、正林書院、昭和58年。