近年、Googleがディープラーニングを用いて医学研究を行っているのは有名な話ですが、
実際にどのような研究が行われているのかよくわかりません。
自分自身の勉強も兼ねて、
Googleが国際的医学雑誌に投稿している論文をフォローしてみたいと思います。
検索は、医学研究で頻繁に使用される以下からです。
Pubmed(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/)
今回は、昨年末(2019/12)にNat Biomed Engに投稿された以下論文です。
Detection of anaemia from retinal fundus images via deep learning.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31873211
日本語訳では、「ディープラーニングによる網膜眼底画像からの貧血検出」
中高年になってくると健康診断の項目で検査される方もおられるかと思いますが、
今回、眼の網膜眼底画像から貧血をディープラーニングを用いて検出しています。
英国バイオバンクから11,388人の研究被験者からの検証データを用いて、
①網膜画像②メタデータ(人種、年齢、性、血圧)③網膜画像+メタデータから、
貧血の指標とされるヘモグロビン濃度を予測
その結果、③網膜画像+メタデータでROC*0.88 (0.86-0.89)と ヘモグロビン濃度を最も良く予測できており、
さらに自己報告による糖尿病患者593人の被験者でも、貧血をROC 0.89 (0.85-0.93)で予測することができた。
*ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)
2018年にNature Communicationsに報告されている、
非侵襲的にスマートフォンで指の爪画像から貧血を予測する研究が行われており、
今回のGoogleの研究と類似していると考えられます(おそらく研究グループは異なると思います。)。
Smartphone app for non-invasive detection of anemia using only patient-sourced photos
Robert G. Mannino, et al. Nature Communications volume 9, Article number: 4924 (2018)
https://www.nature.com/articles/s41467-018-07262-2
今回の結果を、患者視点から考えると採血でなく眼底画像から貧血を診断してもらえるなら本当に有難いと思います。また、糖尿病による網膜症は、貧血が網膜症の危険因子と考えられているため、早期に貧血を発見できることは、糖尿病網膜症による失明の早期治療につながり大変意味ある研究だと感じました。
今後のGoogleによる医療現場で活用できるAIの研究開発が楽しみですね。