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TISAdvent Calendar 2017

Day 1

ID生成大全

Last updated at Posted at 2017-12-01

セッションIDやアクセストークン、はたまた業務上で使う一意の識別子など、いろんなところで一意のIDを生成しなきゃいけないケースが存在します。
そこで世間で使われているIDの生成方法について調べてみました。

選択基準

ID生成における要求として、以下の観点が上げられるかと思います。

  • 生成の速度
    • 大量にデータを短期間で処理し、それらにIDを付与する場合、ID生成そのものがボトルネックとなることがあります。
  • 推測困難性
    • IDを機密情報と結びつける場合、IDを改ざんされても、機密データが見れないようにできている必要があります。
  • 順序性
    • 採番した順にデータをソートする必要がある場合は、IDがソートキーとして使えないといけません。

それぞれについて各生成手段を評価します。

ID生成の手段

データベースの採番テーブル

採番用のテーブルを作り、そこで番号をUPDATEしながら取得していくやりかたです。古い基幹システムではよく使われていました。

速度 推測困難 順序
× ×

ロックしてSELECT&UPDATEするので、高速に発番するのは不可能ですが、そういった要求がない&シーケンスのないRDBMSであれば採用しても構わないのではないでしょうか。

データベースのシーケンス(またはIDENTITY)

速度 推測困難 順序
×

RDBMSの機能として、一意性を保証した連番をふるためのSEQUENCEがあります。
Oracle RACのような分散環境では、ノード間で同期をとるために順序性を保とうとすると、とたんに性能が落ちてしまうので、やはり大量のデータに対して高速に連番をふる用途には適していませんが、性能を多少犠牲にできればデータベースに登録するものにID発行するには一番お手軽な方法ではあります。

UUID version1

速度 推測困難 順序
× ×

UUIDは現在バージョン1から5までが規格化されており、一意の識別子の用途でよく使われるのは、タイムスタンプベースのVersion1とランダムベースのVersion4です。バージョン1は以下のように、タイムスタンプとミリ秒ごとの連番、ノード(MACアドレス)から構成されます。

    0                   1                   2                   3
    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                          time_low                             |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |       time_mid                |         time_hi_and_version   |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |clk_seq_hi_res |  clk_seq_low  |         node (0-1)            |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                         node (2-5)                            |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

残念ながらJava標準でのUUID v1の生成はできませんが、いくつかオープンソースの実装はあります。
https://github.com/groupon/locality-uuid.java

Snowflake

Twitterで使われている(いた?)IDです。

速度 推測困難 順序
×
  • 41bit タイムスタンプ
  • 10bit マシンID (データセンタID + ワーカーID)
  • 12bit シーケンス

Flake

FlakeはErlangで実装されたSnowflakeを128bit長に拡げたようなIDです。

速度 推測困難 順序
×

UUID v1のタイムスタンプでソートできない、タイムスタンプが一般的なUNIXエポックでなく、1582年10月15日からのグレゴリオ暦からのエポックになっていて取っ付きにくい、といったところが改善されています。

    0                   1                   2                   3
    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                          time_hi                              |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |       time_mid                |         time_low              |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                     MAC address (0-3)                         |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |     MAC address  (4-5)        |             sequence          |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

ULID

速度 推測困難 順序

タイムスタンプとランダム値をつなげたものです。したがって、推測困難さもそこそこあって、タイムスタンプ順にソートも可能です。

 0                   1                   2                   3
 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
|                      32_bit_uint_time_high                    |
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
|     16_bit_uint_time_low      |       16_bit_uint_random      |
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
|                       32_bit_uint_random                      |
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
|                       32_bit_uint_random                      |
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

Firebase PushID

Firebaseで使われているPushIDです。

速度 推測困難 順序

全部で120bitで、

  • 48bit タイムスタンプ
  • 72bit ランダム

で構成されます。ULIDよりもランダムbit数が、ちょっとだけ少なくなっています。

Instagram ID

インスタで使われているID生成です。

速度 推測困難 順序
×
  • 41bit タイムスタンプ
  • 13bit シャードID
  • 10bit ミリ秒ごとの連番

ほぼSnowflakeに近い構成です。

UUID version4

速度 推測困難 順序
×

UUIDのバージョン(4bit)とバリアント(2bit)以外の122bitがランダム値で埋められたものです。ランダムによる推測困難性が高いので、セッションIDやアクセストークンの用途でよく利用されます。

    0                   1                   2                   3
    0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                          random                               |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |       random                  |0 0 1 0|         random        |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |1 0|                          random                           |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
   |                          random                               |
   +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

よく話題になるIDの衝突可能性ですが、現在人類が扱うデータ量からすれば、まず考えなくてよい程度です。(→ 十分大きな乱数をユニークな識別子として使うのがなぜ安全なのか)

世間のID生成事例

オープンソースのプロダクトたちを見てみると、IDの長さは(デフォルトで)だいたい128bitです。

TomcatのセッションID

        while (resultLenBytes < sessionIdLength) {
            getRandomBytes(random);
            for (int j = 0;
            j < random.length && resultLenBytes < sessionIdLength;
            j++) {
                byte b1 = (byte) ((random[j] & 0xf0) >> 4);
                byte b2 = (byte) (random[j] & 0x0f);
                if (b1 < 10)
                    buffer.append((char) ('0' + b1));
                else
                    buffer.append((char) ('A' + (b1 - 10)));
                if (b2 < 10)
                    buffer.append((char) ('0' + b2));
                else
                    buffer.append((char) ('A' + (b2 - 10)));
                resultLenBytes++;
            }
        }

デフォルトでは16バイトずつランダムなcharacterを生成しています。あまり高速性は重要ではないとの意志が感じられます。

JettyのセッションID

id=Long.toString(r0,36)+Long.toString(r1,36);

2つのLongをランダムに生成してつなげ合わせます。

Spring Securityのアクセストークン

DefaultOAuth2AccessToken token = new DefaultOAuth2AccessToken(UUID.randomUUID().toString());

UUID v4をそのまんま使っています。

RackのセッションID

        def generate_sid(secure = @sid_secure)
          if secure
            secure.hex(@sid_length)
          else
            "%0#{@sid_length}x" % Kernel.rand(2**@sidbits - 1)
          end
        rescue NotImplementedError
          generate_sid(false)
        end

secureフラグがtrueなら、/dev/randomが、オフならば/dev/urandomから128bit生成されます。

ID生成の速度比較

実際、各種生成手段によって、どれくらい生成速度に差があるのか簡単なベンチマークをとってみました。SecureRandomはNativePRNGで統一されている(ハズ)

openjdk version "1.8.0_144"
CPU: i7-5500U @ 2.40GHz
Mem: 8086444 kB 

Benchmark               Mode  Cnt         Score       Error  Units
GenIdBenchmark.flake   thrpt   20  11043386.675 ± 46283.482  ops/s
GenIdBenchmark.uuidv1  thrpt   20  10250694.091 ± 67545.760  ops/s
GenIdBenchmark.uuidv4  thrpt   20   2096022.751 ±  5687.221  ops/s
GenIdBenchmark.jetty   thrpt   20   1164988.060 ±  5680.736  ops/s
GenIdBenchmark.tomcat  thrpt   20    684121.048 ±  6194.204  ops/s

Java標準のUUID v4もなかなかのスループットなので、とりあえず順序性が必要ないときは、UUID v4使っとけでも良い気がします。

まとめ

以上まとめると、こんな感じで生成方法決めるとよいのではないでしょうか?

idchart.png

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