個人情報保護法改正後のゲノム情報学術研究利用に関する提言 (案)
Feb 21,2016 H.Kawaji 私案
生命科学の進展によってヒトのゲノム情報を生活へ活かす術が見いだされつつあるが、我々が十分な根拠を持ってそれらを活用するためには我々日本人のゲノム情報の探求が必須である。一方、我々個人の人格は尊重されるべきとの理念に疑念を挟む余地はなく、これらの両立によって未来を切り開くことは現在を生きる我々の責務である。
「個人情報の保護に関する法律」が2015年に改正され (以降、改正法)、ここで規定される個人識別符号(2条1項,2項)や要配慮個人情報(2条3項)に該当する情報の範囲が現在議論されている。改正法は学術研究を適用除外対象と位置付けており(66条)、ゲノム情報を用いる学術研究を規制するものとして「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(以降、ゲノム指針)等の指針が現存する。改正法の運用や、これら学術研究を規制する指針等のあり方として、次を提言する:
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(明示的な学術利用規制) ゲノム情報が改正法における個人識別符号あるいは要配慮個人情報と分類される・されないに関わらず、指針等の規制に適正に従うことでこれを学術研究に利用できると明示すること
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(複数目的への利用) 学術研究目的と非学術研究目的の双方に同じゲノム情報を適正に利用できるよう、学術利用規制と改正法の運用を整合させること。特に、産官学連携等で実施される公益性の高い研究に民間からの貢献を萎縮させない配慮が期待される
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(国際連携) 規制体系が日本と異なる他国と共同した学術研究を妨げないよう、学術利用規制の国際的な整合性を保つあるいはその為の仕組みを整えること
これらの実現によって、より確かなエビデンスに依拠したゲノム情報利用が実現され、我々の生活がより豊かなものになることが期待される。また生命情報を探求する研究者として、研究活動に骨身を惜しまないことを改めて表明する。
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