この記事は前回の続きです!
線形空間(1次元)
まず、線形空間の1番簡単な例を紹介します。
中学校の数学の最初の授業で数直線を習いましたね。
ここで点が0から+5に移動したとき、5は右向きの大きさ5の矢印と言えるでしょう。
このように向きと大きさを持った情報をベクトルと言います。
この矢印に2をかけると+10になります。このようにベクトルに数を掛けることをスカラー倍と言います。そしてここでは引き算(差)をマイナス倍したものを足すと解釈します。こうすることで和とスカラー倍だけで話が進みます。
そして数直線上で表される数は実数と言います。数直線上で表されない数は複素数です。本記事では実数を扱います。そしてこの実数全体の集合をRとします。集合の要素のことを元と言い、ある要素に足すとその要素が0になる元を逆元と言います。
実数の計算法則
Rの任意の元(すべての実数)について、
(1)(a+b)+c=a+(b+c) (結合法則)
(2)a+b=b+a (交換法則)
(3)a+0=0+a=aを満たす一つの元0が存在する。 (0の存在)
(4)a+x=x+a=aを満たす一つの元xが存在する。 (逆元の存在)
(5)1×a=a
(6)k(a+b)=ka+kb
(7)(k+l)a=ka+la
(8)(kl)a=k(la)
座標平面
実数の集合Rは数直線上のベクトルで表せましたが、これを座標平面(x軸、y軸があってグラフを書いたりするやつ)に広げます。
原点(0、0)を始点としてA(4、3)を終点としたベクトルはx軸方向に+4、y軸方向に+3という点の移動を表します。
\vec{OA}=\vec{a}=\begin{pmatrix}
4\\
3
\end{pmatrix}
始点、終点を並べたOAや、省略してaと表すことも多いです。
この内容は高校数学のベクトルの内容ですね。しかし今年2022年からはベクトルは高校の指導要領からなくなってしまいました。私がスムーズに線形空間を学べたのはベクトルを学んだおかげなので、これからは大学に入学してから線形代数を扱う際に少しだけ敷居が高くなってしまう可能性がありますね。
二次元の線形空間
k\vec{a}+l\vec{b}
ベクトルa,b をk倍、l倍したものの和を1次結合と言います。そして、OPがどんなベクトルであってもOPをka+lbの形で1通りで表せる時、a,bはR²の基底と言います。
基本的にいつもはx軸方向に2,y軸方向にー3のように座標を表していましたが、ここではa,bを最小単位(基底)として表します。x軸、y軸に対してそれぞれ1目盛りずつ線を引いていくと格子状になりますね。それをa,bで行うわけです。斜交座標と検索して頂くとわかりやすいと思います。
また、基底には、a,bの方向が異なるという条件があります。a,bの方向が同じだと格子状ではなく1本の斜線しか表現できないです。そのためa,bを基底とした斜交座標が導入できません。
3次元の線形空間は同じようなものなので省略します。
線形空間
ここまでにR、R²、R³の例を見てきましたが、すべて線形空間です。R²も平面ですが空間の中にあるため線形空間です。
線形空間の定義
集合Vの任意の元a,bとkについて
a+bとkaがVの元となるように定義されていて次を満たすときVを線形空間といいます。
(1)(a+b)+c=a+(b+c) (結合法則)
(2)a+b=b+a (交換法則)
(3)a+0=0+a=aを満たす一つの元0が存在する。 (0の存在)
(4)a+x=x+a=aを満たす一つの元xが存在する。 (逆元の存在)
(5)1×a=a
(6)k(a+b)=ka+kb
(7)(k+l)a=ka+la
(8)(kl)a=k(la)
線形独立と線形従属
この二つの概念は線形代数入門ではトップレベルに重要です。
線形空間Vの元に対して
c_1\vec{a_1}+c_2\vec{a_2}+...c_n\vec{a_n}=0
を満たすcを求める。
1.c_1=c_2=...c_n=0
のみであるときaベクトルの組は線形独立である。
2.c_1、c_2...c_n
のうち少なくとも一つが0でないときaベクトルの組は線形従属である。
線形独立はどのベクトルも他のベクトルの定数倍ではなく、平行ではないということです。

また、基底は方向が同じ、線形従属の場合には成り立ちませんでした。そのため定義に線形独立であることが追加されます。
次元
基底に含まれるベクトルの個数(n)が線形空間の次元です。次元は英語でdimensionと言うため、Vの次元をdimVと表します。
dimV = n
dimV > n 次元よりベクトルの個数が多い場合、必ずどれかが平行(同じ平面上)になるため線形従属になります。
部分空間
部分空間の定義
Wを線形空間の空でない部分集合とする。
(1)Wの任意の元a,bに対して、a+bはWの元である。
(2)Wの任意の元a,任意の実数kに対して、kaはWの元である。
上の2つが成り立つときWをVの部分空間という。
また、部分空間はR²では原点を通る直線,R³では原点を通る直線や原点を通る平面のみ部分空間になります。