記事の目的
これまでさんざん大学との共同研究で失敗してきたので注意点をまとめておく。
なお、情報系以外の世界はよくわからないので、多分当てはまらないと思う。
1.基本教授は研究してくれない
- 教授は基本的に忙しい。予算を獲得するために国の会議に出たり、授業をしたり、教授会に出たり。実質研究していない教授も多い。
- そこで、実際には教授のネームバリューより担当する学生の質によって共同研究の成否が決まる
- 採用してもいいと思える学生が見つかるかどうかがカギ
- あるいは新進気鋭の助教とか研究員がいれば可能性はある
- 学生はやはり学生なのでプロジェクトマネジメントは結構困難
- 遠隔地から知らないおっさんに指示を出されてもだいたいやってくれない。チームとして入り込むレベルでかかわることが必要
2.共同研究は開発の外注契約というよりはコンサルティング契約に近い
- 通常の開発の外注なら契約を結んで仕様通りに作らせればよいが、研究は思った通りに行かない
- 事前にできると思ったことができなかったりすることはざら。
- 発注している側のほうが知識がない場合が多いこともあり、「XXXという理由でできません、XXXにしたほうがいいですよ」と言われたときに、「いや、最初に決めた通りやれ」ということも難しい
- 担当者が共同研究相手にほれ込んでいるかどうかがカギ。「○○先生が言うことだからきっと一理あるんだろう、私も勉強してみよう」と思えるかどうか
- 逆に担当者が「なんでこの人に(あるいはこのテーマを)頼んでいるんだろう」と思ってしまうようでは絶対にうまくいかない
- 共同研究相手は実施の有無の決定権を含めて実際にプロジェクトマネジメントを行う担当者が選べるようにしなければいけない
3.大学だから論文書ければいいんでしょというスタンスでもない
- 最近は大学も変わってきている。論文にならなくても社会的意義のために引き受けてくれることもある
- 一方で大学TLO(Technology Licensing Organization)という知財を扱う組織も一般的になり、あとから特許権を主張される可能性もある
- TLOとは事前によく話し合うことと、権利を安く買いたたけるという考えは捨てるべし
4.時間のレンジはやっぱり違う
- 企業は1年後にはものになるかなみたいなイメージでいても、大学は5年後かなと思っていることはままある
- 最近はそれなりに考えの差は埋まってきたがそれでも依然差はある
5.敵は内部にいる
- 社長や経営陣お気に入りの"先生"と付き合うときは注意が必要
- 担当者は失礼なことはできないので、対等な契約にならない。成果が出なくてもやめられない
- はじめはトントン拍子で進んだりもするが、お互いの担当者が出てきて、さて何をやろうみたいな感じになったり時間を無駄にすることもある
じゃあどうすればいいの?
- 本気でやる。学生を一人採用するレベルで社内に招くか、社員一人に博士号を取らせるレベルで大学に派遣するか
- 少額のコンサルティング契約にとどめる。あくまでも主体は自分たちで、隔週で意見を聞くなど
- いずれにしても自分たちが何もしなくてもやってくれるという考えは捨てる。基本自分たちでやらないと仮にうまくいっても技術が残らないし、うまくいかなくても技術は残る
- 大学発ベンチャーを当たってみる。彼らは社会人なので社会人的常識が通用する
- 大学以外の研究機関も視野に入れる。統計数理研究所とかNIIとか