はじめに
3DCGでモーションブラー表現を適用する方法を説明します。モーションブラーを加えることで、カクカクした感じが消えてより自然な動きにすることができます。
注意
ここで説明する方法では、 ReelSmart Motion Blur という有償のプラグインを利用しています。フラッシュバックジャパンから購入できます。体験版が無償で利用できますので、効果を試してから購入を検討することができます。
環境
- Autodesk Maya 2017 Update 5
- Arnold5.0.1.0 (MtoA 2.0.1)
- AfterEffects CC 2017
モーションブラーを加える方法
ボケ表現を加える方法として、以下の方法が挙げられます。
- Arnold でのレンダリング
- AfterEffects でのコンポジット
レンダリングでモーションブラーを加える方法については、 SolidAngle のマニュアルを参照してください。
ボケ表現を加える方法の投稿で説明したように、レンダリング工程でブラーを適用すると、コンポジットの工程で手戻りが発生する可能性があります。ここでは、コンポジット工程でのモーションブラーの適用について説明します。
モーションベクター
コンポジットの工程でモーションブラー効果を加えるには、モーションベクターを利用します。モーションベクターとは、RGBで表現された動きの情報のことです。Rは横方向、Gは縦方向の情報を含んでいます。Bは通常は使用されません。
上の画像では、動きのない部分は濃い黄色で表されています。濃い黄色部分は RGB で表すと (127, 127, 0) となっています。
モーションベクターの特徴をまとめます。
- R が横方向
- G が縦方向
- B は利用しない
- 移動量が 0 のとき、色の値の範囲の真ん中(255 が最大のとき 127)
上記のモーションベクターを色情報と一緒に Maya から書き出せば、コンポジットでモーションブラーを適用することができます。
手順
大まかに以下の手順でモーションブラーを実現します。
- Maya からモーションベクターチャンネルを含む EXR ファイルを出力する
- AfterEffects で EXR ファイルを読み込む
- AfterEffects でモーションベクターチャンネルを調整する
- モーションベクターチャンネルを合成して モーションブラーをかける
OpenEXR については、こちらの投稿を確認してください。
OpenEXR の書き出し
Maya からモーションベクターチャンネルを含む OpenEXR ファイルを出力する方法について説明します。Maya で RenderSetting ウィンドウを開いてください。Common タブで 出力形式を exr に変更します。
Arnold Render タブの Motion Blur の項目の Enable チェックボックスをオンにします。
AOVブラウザで motion vector を追加します。
Select Driver を選択して、アトリビュートエディタを表示します。
Merge AOV のチェックボックスがオンになっていることを確認します。
これでレンダリング画像にモーションブラーがかかるようになるのですが、レンダリング結果にブラーをかけたくないので、これをキャンセルする必要があります。Diagostics タブの Feature Overrides 項目にある、Ignore Motion Blur のチェックボックスをオンにします。
これでレンダリング時のモーションブラーはオフになります。
念のため、動きの激しいフレームを選んで、Arnold RenderView で表示結果を確認してみます。以下のように動きのある場所のみ色がついていれば大丈夫です。
コンポジット
ボケ表現には標準エフェクトが利用できましたが、今回のモーションブラー表現には、ReelSmart Motion Blur という有償のプラグインを導入する必要があります。体験版を公式サイトからダウンロードできますので、購入の前に効果を確認することが出来ます。
プラグインの確認
無事にプラグインがインストールされていれば、Effects & Presets パネルの検索窓に 「RSMB」と入力すると、以下のようにプラグインが表示されます。今回は、この中の RSMB Pro Vectors というプラグインを使用します。
モーションベクターの調整
前回と同様、EXR をフッテージとして読み込み、マルチチャンネルを複数のコンポジションに変換します。
motionvector source というコンポジションを選択します。
ExtractR の Black Point と White Point の調整を行います。
静止しているピクセルの R と G の 値が 127 になるように調整します。
RSMB Pro Vectors の適用
モーションベクター画像の調整が終わったら、assemble コンポジションを開いて、RGBA レイヤーに RSMB Pro Vectors エフェクトを適用します。
Motion Vectors の項目から、 motionvector を選択します。
これでようやくモーションブラーが反映されます。
ブラーなしとブラーありを比較してみます。
同じフレーム数で動きがより滑らかに見えます。
作例
今回の方法で制作した作品を Vimeo で公開しています。