IPA(情報処理推進機構)の資格について
IPA(情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験は、ITに関する知識・技能を客観的に評価する国家試験です。様々なレベルと専門分野の試験があり、個人のキャリアや目指す職種に合わせて選択できます。
以下に、IPAの主要な資格について、難易度、勉強時間、合格率、試験の概要、役立つ職種・業務をまとめました。
IPAの資格の種類(主要なもの)
IPAの情報処理技術者試験には、スキルレベルに応じて以下の種類があります。
- ITパスポート試験(ITP):レベル1(ITを利活用する者)
- 情報セキュリティマネジメント試験(SG):レベル2(ITを利活用する者)
- 基本情報技術者試験(FE):レベル2(情報処理技術者)
- 応用情報技術者試験(AP):レベル3(情報処理技術者)
-
高度試験(レベル4):
- ITストラテジスト試験(ST)
- システムアーキテクト試験(SA)
- プロジェクトマネージャ試験(PM)
- ネットワークスペシャリスト試験(NW)
- データベーススペシャリスト試験(DB)
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
- ITサービスマネージャ試験(SM)
- システム監査技術者試験(AU)
- 情報処理安全確保支援士試験(SC)
各資格の詳細
1. ITパスポート試験 (ITP)
- 難易度:非常に易しい(レベル1)
- 勉強時間:50~100時間
- 合格率:50~60%台
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試験の概要:
- 形式:CBT方式(コンピュータを使った試験)
- 出題形式:多肢選択式
- 試験分野:ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の幅広い分野から出題。
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どのような職種、業務に役立つか:
- ITリテラシーを証明する入門資格であり、非IT職の方や学生がITの基礎知識を習得するのに適しています。
- 企業のIT部門だけでなく、営業職、事務職など、あらゆる職種でITを活用する上で役立ちます。
2. 情報セキュリティマネジメント試験 (SG)
- 難易度:易しい(レベル2)
- 勉強時間:100~200時間
- 合格率:50~70%台(近年は70%台と高めの傾向)
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試験の概要:
- 形式:CBT方式
- 出題形式:多肢選択式
- 試験分野:情報セキュリティ管理の知識が中心。組織における情報セキュリティ確保のためのマネジメント全般が問われます。
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どのような職種、業務に役立つか:
- 情報セキュリティ管理者や担当者、企業の総務・経理部門など、組織の情報セキュリティを確保する役割を担う職種に役立ちます。
- 一般社員の情報セキュリティ意識向上にも繋がります。
3. 基本情報技術者試験 (FE)
- 難易度:普通(レベル2)
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勉強時間:
- 情報処理の知識がある場合:50時間程度
- 情報処理の知識がない場合:100~200時間程度
- 合格率:40~50%台
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試験の概要:
- 形式:CBT方式
- 出題形式:多肢選択式(旧制度の午前・午後試験に相当する科目Aと科目Bに分かれています)
- 試験分野:プログラミング、アルゴリズム、システム開発、ネットワーク、データベース、セキュリティなど、IT全般の基本的な知識と技能が問われます。
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どのような職種、業務に役立つか:
- ITエンジニアの登竜門とされ、新卒や未経験でIT業界を目指す人にとって有利な資格です。
- システムエンジニア(SE)、プログラマー、ネットワークエンジニア、データベースエンジニアなど、IT技術職全般で基礎力が評価されます。
4. 応用情報技術者試験 (AP)
- 難易度:やや難関(レベル3)
- 勉強時間:150~200時間(基本情報技術者試験合格者なら200時間程度、初学者なら200~500時間)
- 合格率:20~26%台
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試験の概要:
- 形式:筆記試験(午前・午後)
- 出題形式:午前:多肢選択式、午後:記述式
- 試験分野:基本情報技術者試験の内容に加え、より高度なIT知識やマネジメントスキル、経営戦略などが問われます。
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どのような職種、業務に役立つか:
- IT全般の基礎力に加え、応用的な知識やマネジメント能力を証明できるため、中堅ITエンジニア、プロジェクトリーダー、ITコンサルタントなど、幅広いIT職種で評価されます。
- 高度試験の受験資格や午前Ⅰ試験の免除にもつながるため、キャリアアップの土台としても重要です。
5. 高度試験(レベル4)
高度試験は、特定の専門分野における高い知識とスキルを証明するものです。それぞれの試験で難易度、勉強時間、合格率が異なります。
共通事項:
- 形式:筆記試験(午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱ)
- 出題形式:午前Ⅰ・Ⅱ:多肢選択式、午後Ⅰ:記述式、午後Ⅱ:論述式または記述式
- 受験資格:基本的にはなし(年齢・学歴・実務経験不問)ですが、実務経験が求められるレベルの試験です。
資格名 | 難易度 | 勉強時間目安 | 合格率目安 | 役立つ職種・業務 |
---|---|---|---|---|
ITストラテジスト試験(ST) | 最難関 | 150~200時間 | 約15%前後 | 経営層とITをつなぐIT戦略策定、システム企画を行うITコンサルタント、CIO補佐など |
システムアーキテクト試験(SA) | 難関 | 150~200時間 | 10~15%前後 | システム設計・開発の上流工程を担うシステムアーキテクト、プロジェクトリーダーなど |
プロジェクトマネージャ試験(PM) | 難関 | 150~200時間 | 12~15%前後 | ITプロジェクトの計画・実行・管理を担うプロジェクトマネージャ |
ネットワークスペシャリスト試験(NW) | 難関 | 100~200時間 | 14~15%前後 | 大規模ネットワークの設計・構築・運用を行うネットワークエンジニア、インフラエンジニアなど |
データベーススペシャリスト試験(DB) | 難関 | 150~200時間 | 15~18%前後 | データベースの設計・構築・管理を行うデータベースエンジニア |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) | 難関 | 150~200時間 | 16~19%前後 | 組み込みシステム(家電、自動車など)の開発・設計を行うエンジニア、IoT関連 |
ITサービスマネージャ試験(SM) | 難関 | 100~150時間 | 13~15%前後 | ITサービスの安定提供や品質向上を担うITサービスマネージャ、運用管理者など |
システム監査技術者試験(AU) | 最難関 | 100~300時間 | 14~16%前後 | 企業の情報システムが適切に機能しているか監査・評価を行うシステム監査人 |
情報処理安全確保支援士試験(SC) | 難関 | 150~200時間 | 15~20%前後 | サイバーセキュリティの専門家として、組織の情報セキュリティ対策を企画・推進する職種(国家資格) |
※上記は一般的な目安であり、個人の学習経験や現在の知識レベルによって変動します。
IPAの資格は、IT業界でのキャリアアップや専門性の証明に非常に有効です。ご自身の目指すキャリアパスに合わせて、適切な資格を選択し、計画的に学習を進めることが重要です。