目的
この記事ではクラウド系エンジニアである筆者が取得したIT資格について、受験の所感と試験対策で行ったことをまとめます。
私は資格取得が趣味の一つで、社会人になってからたくさんの資格を取得してきました。せっかくたくさん取得したので、これから資格取得を考えている方の参考になればと思い、この記事をまとめました。
取得した資格
取得した資格を時系列順に並べてみました。1つだけ学生時代に取得したものを含んでいます。
取得日 | 資格名 |
---|---|
2018/12 | 基本情報技術者 |
2019/6 | 応用情報技術者 |
2019/12 | ネットワークスペシャリスト |
2020/1 | Oracle Master 12c Bronze |
2020/5 | Azure Administrator Associate |
2020/9 | AWS Solution Architect Associate |
2020/12 | Certified Kubernetes Administrator |
2021/3 | Certified Kubernetes Application Developer |
2021/4 | Azure Developer Associate |
2021/6 | Azure Solution Architect Expert |
2021/8 | Azure DevOps Engineer Expert |
2021/11 | Certificate of Cloud Security Knowledge |
2021/12 | データベーススペシャリスト |
2022/3 | Azure Security Engineer Associate |
2022/4 | AWS Solution Architect Professionals |
2022/12 | AWS SysOps Administrator Associate |
2023/1 | Google Cloud Certified Associate Cloud Engineer |
2023/6 | システムアーキテクト |
こうして振り返るとかなり頑張って取得したなあと我ながらに思います。
資格を取る意義
所感と対策に入る前に、資格取得の意義について個人的な考えをお伝えしたいと思います。私は趣味で資格取得しているので、これから記載する意義だけをモチベーションに取得しているわけではないですが、私が実際に取得してよかったと思った点も踏まえて資格取得の意義を2つお伝えしたいと思います。(あくまで個人の見解です)
① 知識の目次が増える
この意義が一番大きいと思います。どういう意味かというと、資格取得のために勉強しているとその資格の出題範囲に対して網羅的に学んでいくことになると思います。そうなるとその技術領域に対して「深くはわからないけど、広く浅く知識を持っている」という状態になります。その状態になると、その技術を業務などで扱う上で情報を調べる際に「あのあたりを調べれば良さそうだ」や「この専門用語が関係しているから詳しく調べてみよう」といった調査の当たりをつけることができるようになります。もし資格勉強で「広く浅い知識」を学習していなければ、まずは「どういうキーワードで調査すればいいのか」から調査しなくてはならず、時間がかかってしまいます。
このように本の目次のような「そのキーワードについて深くはわからないけど、基本的な情報は持っている」という知識が増えれば、何か新しい取り組みをする際の効率が上がり、ハードルも下がります。
この意義を踏まえると、資格取得はプロジェクト内で新しい技術を取り入れることになったエンジニアが最初に取るべき行動と言えるかもしれません。
② 社内でのプレゼンスが向上する
これは特に社内や所属部署内で他にその技術領域について詳しい人が少ない場合に感じることができると思います。私自身、所属部署内に有資格者がいないような資格を取得した後、(他に知っている人がいないから当たり前ですが)その技術領域に関する意見を求められることが多くなりました。そのような状態になると、「あの分野といえばあの人」というような共通認識が生まれ、その領域に関する仕事を任せてもらえるようになります。
もちろんニッチすぎる領域の資格を取得した場合は、このような状況になることはありませんが、ある程度需要があり、社内にあまり知見者がいない領域であれば、自身のプレゼンスが向上し頼られる存在になるでしょう。
この意義を踏まえると、資格取得は自分にとって新しい技術領域に挑戦したいときや、仕事の幅を増やしたいときに最初に取るべき行動と言えるかもしれません。
資格試験の所感と対策
ここからが本題です。私自身が取得した資格について、その資格や試験の所感や対策のために費やした時間とその内容をお伝えします。
また、個人的な基準で取得難易度も記載したいと思います。取得難易度は以下の5段階で評価します。かなり主観的な基準で記載するのであくまで参考程度にしてください。
- ★☆☆☆☆:専門用語の意味さえ理解していれば合格できるレベル
- ★★☆☆☆:複数要素の組み合わせを理解する必要があるレベル
- ★★★☆☆:独学でも合格できなくはないが、実務経験があることが望ましいレベル
- ★★★★☆:1年以上の実務経験とその領域に対する深い理解が必要なレベル
- ★★★★★:実務経験があっても合格困難なレベル
基本情報技術者
-
取得難易度
★☆☆☆☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
基本的には対策本を一読して、午前問題の過去問をひたすら解くだけで良い。あとは試験形式に慣れておく目的で1週間暗い前に午後問題の過去問を1年分解いておけば問題ない。ただ午後試験のアルゴリズム問題とソフトウェア開発は選択必須であるにもかかわらず、プログラミング未経験者には厳しめなので、プログラミングを学んだことがない人は重点的に対策した方が良い。 -
所感
IT関係の企業に勤める社会人が最初に受けがちな資格試験。専門用語の意味さえ分かっていれば問題なく合格できるので、通勤中に対策本を斜め読みしていれば十分で合格できる。正直この資格を持っているからといって何の証明にもならないが、企業によってはこの資格を所持していることが昇格要件になっていることも多いのでとっておいた方が良い。基本情報技術者をはじめとしたIPAの資格は一度取得してしまえば一生ものなので、資格の更新などの手間もない。
合格する上での一番の関門は時間通りに会場に着くこと。
応用情報技術者
-
取得難易度
★★☆☆☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
対策内容
対策本を一通り学習した上で、午前問題の過去問をひたすら解き、午後問題の過去問を4〜5年分解いた。 -
所感
基本情報技術者の上位試験。基本情報技術者試験と違い、ネットワークやSQLなど比較的幅広い知識が求められるので、その辺りの知識がゼロの人はかなり気合を入れて勉強したほうが良い。この試験に合格できれば、IT全般に関する基礎力が身に付いていると言える。
ネットワークスペシャリスト
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を3ヶ月 -
所感
ネットワークに関する知識を求められる高度試験。試験範囲がかなり広く、覚えなければならないことが多い。また午後問題は単純に専門用語が理解できるレベルでは難しく、それなりに深く理解している必要がある。IPアドレス周りや通信プロトコルの知識は、特にインフラ系エンジニアにとっては必須知識であると言える。この試験に合格できれば、実務で役立つネットワークの基礎知識が習得できる。この資格は高度資格にあたり、難易度もそれなりに難しいが、この試験で問われるような知識があって初めてネットワーク系エンジニアとして戦力になれるのではないかと思う。
Oracle Master 12c Bronze
-
取得難易度
★★☆☆☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
参考本を一通り一読。また、会社の研修でOracle DBに関する基礎を学習。 -
所感
SQL基礎試験とDBA試験の2つに合格する必要がある。SQL基礎試験は基本的なSQLが理解できていれば余裕だが、DBA試験はOracle DBに特化した学習が必要。できればハンズオン形式の研修など実際に製品を触って学習できた方が良い。当時の上司に勧められて取得したが、昨今はそもそもOracleを使用しているシステムが少ないと思うので、Oracle製品を使用する予定がある人以外は特に取らなくて良いと思う。
Azure Administrator Associate
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講し、会社の自己学習用Azureアカウントで実際に動かして学習した。 -
所感
Azure関連の資格で最初に取得する人が多いであろう資格。ITに関する基礎知識がある、かつ、Azureを業務で使用している人ならそんなに難しくはない。Azureを触ったことがない人が取得するのは難しいので、ある程度業務等で触ってから受験するのをお勧めする。クラウドリソースの管理者向けの内容なのでSierに勤めていてAzureを触る可能性のある人はとっておいて損はない。また、Azure資格の対策本やオンライン講座は英語のものが多く学習のハードルが高い(最近は日本語の書籍も発売され始めている)。
AWS Solution Architect Associate
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
所感
AWS関連の資格で最初に取得する人が多いであろう資格。ITに関する基礎知識がある、かつ、AWSを業務で使用している人ならそんなに難しくはない。AWSを触ったことがない人が取得するのは難しいので、ある程度業務等で触ってから受験するのをお勧めする。クラウドインフラ設計者向けの内容なのでSierに勤めていてAWSを触る可能性のある人はとっておいて損はない。Azureとは違い日本語の教材が豊富なので学習しやすい。
Certified Kubernetes Administrator
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取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講した。しかし、業務で培った知識やノウハウの影響が大きかった。 -
所感
Kubernetesの管理者向けの資格試験、各Kubernetesコンポーネントの役割を深く理解し、トラブルシュートなども行う必要があるため難易度が高い。正直独学では厳しく、実務である程度Kubernetesに触れておく必要がある。この試験に合格できればKubernetesに詳しいと自称しても問題ないと思う。近年Kubernetesを利用する際は、クラウドベンダーなどが提供しているマネージドサービスを利用することがほとんどで、自前でKuebr netesを運用することはほとんどないと思うので、重要度は下がってきているかもしれない。
Certified Kubernetes Application Developer
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講した。 -
所感
Kubernetes上で稼働するアプリケーション開発者向けの資格試験。基本的にマニフェストファイルが書けて、Podなどの基本的なリソースを操作できれば問題ない。独学でも十分取得することができるし、実務で触っている人なら簡単に取得できる。私は逆の順番で取得してしまったが、この資格を取得した後に前述のCertified Kubernetes Administratorを取得すると、難易度的にも知識量的にもスムーズに取得できると思う。
Azure Developer Associate
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取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講した。 -
所感
Azure Administrator Associateとは反対にAzure上で稼働するアプリケーション開発者向けの資格試験。アプリケーションの稼働環境になるようなPaaSサービスやアプリケーションと連携させるようなサービスに関する知識が問われる。また、C#のソースコードからAzureのリソースと連携している部分の穴あき問題が出るので、C#を触ったことがない人は何となくで答えていくことになる。この試験のためにC#を1から勉強する必要はないと個人的には思っているし、ソースコードの問題は割合としては少ないので問題ない。普段インフラ系エンジニアとして働いている人にとっては少しキツイ内容かもしれない。
Azure Solution Architect Expert
-
取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
所感
Azureの最上位資格の一つでアーキテクチャの設計や非機能要件に関する問題が出題される。個人でAzureを触る程度では合格は厳しく、ある程度の規模のプロジェクトでAzureを採用したアーキテクチャの設計に関わった経験があった方が良い。この資格が取得できれば、Azureを利用したシステムのインフラ設計に十分携われるようになるのではないだろうか。
Azure DevOps Engineer Expert
-
取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講した。 -
所感
Azureの最上位資格の一つでAzure DevOpsやAzure上のアプリケーションの監視に関する問題などが出題される。CI/CDに関する知識を多く求められるので、普段からその辺りの領域の業務を行なっている人であればそれほど難しくはない。通常のアプリケーション開発やインフラ周りの知識はあまり活かせない出題範囲になっているので、DevOps周りの知識がない人にとっては、全く新しい内容を学習しなければならないのでハードルが高いかもしれない。
Certificate of Cloud Security Knowledge
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
試験対策の研修(2日間)の受講 -
対策内容
会社で募集していた試験対策の研修に応募し受講した。 -
所感
特定のクラウドベンダーにとらわれず、クラウド全般のセキュリティーに関する知識が問われる資格試験。幅広い知識が求められるが2日間の研修を受けただけで合格できるレベルなのでそこまで難しくはない。しかし、応用情報技術者レベルの知識が前提となっている研修であったため、ITの基礎力がない状態では合格は難しい。
データベーススペシャリスト
-
取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週4時間程度を2ヶ月 -
対策内容
試験対策本を一読し、過去問をひたすら解いた。 -
所感
データベースに関する知識を求められる高度試験。求められる知識自体はSQLとER図が書けて、物理設計が多少できれば良いレベルなので多くはないが、この試験の難しさは問題文の長さにある。午後問題ではいずれも超長文を読んだ上でER図や物理設計に関する設問を解いていく形になるが、問題文は長い上に少しややこしい内容で書かれているため、高い国語力が求められる。大学受験などで国語が苦手だった人は苦戦必須。この試験に合格できれば、文章による正常なコミュニケーションが取れるエンジニアと言って良いかもしれない。データベースのスペシャリストになれるのかはよくわからない。
Azure Security Engineer Associate
-
取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を1ヶ月 -
対策内容
Udemyの対策講座を一通り受講した。 -
所感
Azureのセキュリティに関する領域の知識が問われる資格試験。多くの人はこの資格より前に幾つかのAssociateレベル資格を取得していると思われるので、そこで学んだセキュリティ関連の知識があればそれほど追加で学習する必要はない。しかし、Azure Sentinelなどの個人では使用することがないであろうエンタープライズ向けのサービスに関する知識が問われるのでイメージがしづらいかもしれない。
AWS Solution Architect Professionals
-
取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週6時間程度を1ヶ月 -
所感
AWS上にシステムを構築する際に、そのアーキテクトを設計する役割の人が知るべき知識が問われる資格試験。AWSの試験対策教材は日本語対応のものが多く学習しやすいが、この試験の問題は1問1問が長文である。AWS各サービスの機能だけでなく、システムの要件を踏まえた上で最良の選択肢を選ぶ必要がある。(どの選択肢でもやりたいことは実現できるが、要件的にどれがベストなのかを考える)
上記の様なタフな問題が75問も出題されるため、かなりしんどい上に合格ラインも正答率75%と高めに設定されているので難易度は高い。
AWS SysOps Administrator Associate
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取得難易度
★★★☆☆ -
対策期間
週4時間程度を2週間 -
対策内容
Udemyの模擬試験を受講した。 -
所感
AWS環境の運用者向けの知識が問われる資格試験。難易度は他のAssociate資格を同等だと思われるが、数年の実務経験があれば特に学習する必要はないと感じた。模擬試験を1~2週解いてそれで十分。認証認可、ロギング、モニタリング、セキュリティ、デプロイ、コスト管理などの知識が学べるので、これからAWSを運用していく必要がある方は受けると良いかも。
Google Cloud Certified Associate Cloud Engineer
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取得難易度
★★☆☆☆ -
対策期間
週4時間程度を2週間 -
対策内容
Udemyの模擬試験を受講した。 -
所感
GCPで提供されている一般的なサービスについての基本知識が問われる資格試験。GCPらしくコンテナ、Kubernetes周りの知識も問われるのが特徴。そこまで深い内容は聞かれないので難易度は高くない。これからGCPを触る方が最初に受けてみるのに良い試験だと感じた。
システムアーキテクト
-
取得難易度
★★★★☆ -
対策期間
週3時間程度を1ヶ月 -
対策内容
試験対策本を一読し、数年分の午後1過去問と、論文の書き方について予習した。
加えて自分自身の経験から論文に書けそうなプロジェクトについて整理した。 -
所感
高度情報処理技術者試験の中でも難易度が高いと思われる論文形式の資格試験。
午前1,2と午後1試験は他の高度試験と同様の形式、難易度で特に問題ないが、論文については限られた時間で2000文字を超える論文を記述しなければならないためかなり難しい。
具体的には以下2点の難しさがある。
[試験時間]
120分で2200〜2600文字程度の論文を記載しなければならないが、私の所感としてはあまり記述内容をゆっくり考える時間はなく、常に手を動かし続けてギリギリ規定の文字数を超えるくらいの時間しかない。
よって事前に過去のお題を確認して、自身の経験から書けそうなことを整理しておく必要がある。
お題についてはダイレクトに自身の経験と紐づくものが出されることはあまりないが、広い意味で捉えて関連していれば問題ないと思われる。
3つの中から書きたい内容と最も近いものを選んで、こじつけてしまえば良いと思う。
[握力]
手書きで字を書く機会が極度に減ったこのインターネット時代に短時間で膨大な量の文字を書かなければならず、普段手書きで字を書いていない人は試験途中で手が痛くなってくる。
その上、あまり字が綺麗に書けない人は自分の字が気になって何度も書き直してしまう病気が発祥するため、なおさら書かなければならない字数が多くなる。
試験対策よりも握力アップに取り組んだ方が良いかもしれない。
最後に
今後も気が向いたら更新したいと思います。