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◆指値板における最適提示価格を求めよう ~高頻度取引における在庫モデル~◆

Last updated at Posted at 2020-10-01

モチベーション

今回はHigh-frequency trading in a limit order book, AVELLANEDA and STOIKOV, 2008に関する読書感想文を書きたいと思います。
こちらの論文は執行戦略と取引コストに関する研究の進展, 杉原慶彦高頻度取引の執行戦略を巡る研究の章で在庫モデルでも紹介されております。
杉原氏の執行戦略に関する論文は、界隈ではかなり知名度が高いと思いますので、こちらの読書感想文では在庫モデルをより掘り下げて感想や考察を書いていこうと思います。
本記事は、あくまでも本論文を読んだ私の読書感想文なので、いかなる結果(ネタバレ等)に対しても責任は負いません

イントロダクション

証券市場におけるディーラーの役割は、特定の量でビッドとアスクの価格を提示することによる取引所の流動性を供給することです。
伝統的に、この役割はマーケットメーカーまたは専門会社によって果たされてきました。
近年、電子取引所の成長とともにNasdaqのInetなどでは、システムで指値注文を送信する意思のある人なら誰でも、効果的にディーラーの役割を果たすことができます。
このような指値板におけるビット・アスクの最適提出戦略について研究することが本論文の目的です。
近年では、仮想通貨が普及しており、ほとんどの仮想通貨市場で電子取引が可能となっているため、本論文が益々注目を浴びております。

モデル

2.1 株の仲値

ここでは、単純化のために金利を無視します。
また、株価は以下のモデルに従うと仮定します。

dS_u = \sigma dW_u

ただし、初期値を$S_t = s$とします。また、$W_t$を一次元標準ブラウン運動、$\sigma$を一定とします。
このモデルの意図は、取引エージェント(取引BOTないしディーラー)はドリフトないし自己相関に関して一切の意見を持たないとしています。
この仲値の用途は、投資期間の最後における取引エージェントの資産価値を評価するために使います。

2.2 有限時間における最適化

目的関数は、エージェントの取引最終時刻における損益の期待指数的効用を最大化することです。
こういった凸状のリスク測度を選ぶことは、予約価格を定義する際にエージェントの資産価値と独立になるため、非常に便利です。

まずは、最終取引時刻$T$まで$q$株だけ保有して何もしないトレーダーがいると仮定します。この固定在庫は指値注文をしても良いと仮定したときに役に立ちます。(後々解説)

では、エージェントの資産価値関数について見ましょう。

v(x,s,q,t) = E_t[-\exp{(-\gamma(x+qS_T)}]

ただし,$x$は初期資産価値(通貨基準)です。

この価値関数は、以下のように計算出来ます。

v(x,s,q,t) = -\exp{(-\gamma x)}\exp{(-\gamma qs)}\exp{\Bigl(\frac{\gamma^2q^2\sigma^2(T-t)}{2} \Bigl)}

分かることは、市場のパラメーター($s, \sigma$)に依存しているということです。

さて、次にビッドとアスクの予約価格について定義していきましょう。この予約ビッド価格はエージェントの現在のポートフォリオと現在のポートフォリオ+一つのリスク資産を独立とします。

定義 1. $v$をエージェントの価値関数とします。ビッドの予約価格を$r^b$が与えられ、以下を満たすと仮定します。

v(x-r^b(s,q,t), s, q+1, t) = v(x,s,q,t)

アスクの予約価格$r^a$は

v(x+r^a(s,q,t), s, q-1, t) = v(x,s,q,t)

として与えられます。

価値関数$v$を代入してあげて解くと

r^a(s, q, t) = s+(1-2q)\frac{\gamma \sigma^2 (T-t)}{2}
r^b(s,q,t) = s+(-1-2q)\frac{\gamma \sigma^2 (T-t)}{2}

と解けます。(ただし、仮定として、まだ取引がされていない状況です。)

さて、次にこれら予約価格の平均値($r(s,q,t)$と定義)を見てみますと

r(s, q, t) = s-q\gamma\sigma^2(T-t)

と計算出来ます。この価格はエージェントが$q$株持っている場合の調整済み仲値です。ロングを持っている($q > 0$)場合は、調整済み仲値は仲値に対して下がりますし、ショート($q < 0$)を持っている場合は、調整済み仲値は仲値に対して上がります。
つまり、期待価格はエージェントの在庫量に応じて変化するということです。

2.3 無限時間における最適化

先ほどの有限時間では、価格が$T-t$に依存していました。直感的に、調整済み仲値の価格から解釈しますと、最終取引時刻に近付くにつれて、より在庫に対してリスク回避的になります。
ここでは、より定常的な予約価格を得るために、無限時間で考えます。

\overline{v}(x,s,q) = E \Bigl[\int_{0}^{\infty} -\exp{(-\omega t)} \exp{(-\gamma (x+qS_t))} dt \Bigl]

ここでこの式を解きますと

\overline{r}^a(s, q) = s+\frac{1}{\gamma}\ln{\Bigl(1+\frac{(1-2q)\gamma^2\sigma^2}{2\omega-\gamma^2q^2\sigma^2} \Bigl)}

\overline{r}^b(s, q) = s+\frac{1}{\gamma}\ln{\Bigl(1+\frac{(-1-2q)\gamma^2\sigma^2}{2\omega-\gamma^2q^2\sigma^2} \Bigl)}

が得られます。ただし、$\omega > \frac{\gamma^2\sigma^2q^2}{2}$です。

ここで、$\omega$はエージェントの取り得る最大在庫量と解釈することが出来ます。

ここで自然と$\omega = \frac{\gamma^2\sigma^2(q_{\max}+1)^2}{2}$とすると、上で計算した価格が有界になります。

2.4 指値注文

ここで仲値が$dS_u = \sigma dW_u$(ただし、$S_t = s$, $s$は時刻$t$における市場の仲値)に従っているとして、他の市場参加者が取引が出来るとします。
ここでエージェントはビッド価格$p^b$とアスク価格$p^a$をそれぞれ提示し、これらの価格に誰かが1株ずつ買い注文と売り注文の成行注文をぶつけるとします。成り行き注文によってヒット(hit)ないしリフト(lifted)とします。ヒットとは買い注文が成約した状態、リフトとは売り注文が成約した状態のことです。
これらの指値注文$p^b$と$p^a$はコストなしで更新出来るとします。
ここで指値注文と仲値の距離を

\delta^b = s-p^b

\delta^a = p^a-s

とします。

指値注文の現在の形状は、大量の成行注文が実行されるときの実行の優先順位を決定します。
例えば、大量の買い成り行き注文$Q$が流れてきたとします。アスク価格が低い順で数量が$Q$まで約定されます。
この注文は仲値より高い価格で取引されるため、一時的なマーケットインパクトを引き起こします。
$p^Q$を約定した価格の最高値だとしますと、一時的なマーケットインパクトを

\Delta{p} = p^Q -s

と定義します。
もし、エージェントの指値注文がこの成行注文の範囲ない(すなわち、$\delta^a < \Delta{p}$)であれば、約定します。

ここで、買いの成行注文がポアソン分布の強度関数$\lambda^a (\delta^a)$(ただし、$\lambda^a$は$\delta^a$に関する単調減少関数)でリフトしたとします。
次に、売りの成行注文がポアソン分布の強度関数$\lambda^b (\delta^b)$(ただし、$\lambda^b$は$\delta^b$に関する単調減少関数)でヒットしたとします。
直感的には、仲値から乖離すればするほど、指値注文が約定しにくいということです。

次に、富(キャッシュ)と在庫が確率的であり、成行注文の到達に依存するとします。
キャッシュは成行注文が来る度にジャンプします。キャッシュのモデルを以下のように定義します。

dX_t = p^a dN^a_t - p^bdN^b_t

ただし、$N^b_t$はエージェントが買った株の数量、$N^a_t$はエージェントが売った株の数量になります。$N^b_t$と$N^a_t$はどちらも$\lambda^b$と$\lambda^a$のポアソン過程に従うと仮定します。
時刻$t$における保有株は

q_t = N_t^b - N_t^a

と書けます。

ここでエージェントの目的関数は次のようになります。

u(s,x,q,t) = \max_{\delta^a, \delta^b} E_t \Bigl[-\exp{(-\gamma(X_T + q_T S_T))} \Bigl]

注意点は、前回の章の設定(誰も成行注文を出さない場合)と異なり、エージェントはビッド価格とアスク価格を制御しているため、間接的に受け取る注文フローに影響を与えている点です。
この式を解く前に、最近の経済物理学の結果から、いくつかの現実的な強度$\lambda^a (\delta^a)$と$\lambda^b (\delta^b)$の形を導入します。

2.5 トレーディングの強度

経済物理学のコミュニティにおける一つの主な目的は、金融市場のミクロ構造の法則をどのように統治するかです。
こちらでは、仲値に対する距離の関数によって指値注文が約定するようなポアソン分布の強度$\lambda$の研究結果に焦点を当てます。
これを定量化するために、

  • 成行注文の全体的な頻度 (i)
  • 注文数量の分布 (ii)
  • 大量注文による一時的インパクト (iii)

について仮定する必要があります。
これらの結果をまとめて考慮しますと、$\lambda$は指数的ないしべき乗的な関数であることが示唆されます。
単純化のために、成り行き注文の頻度を固定値$\Lambda$と仮定しますと、成行注文の数量の分布は以下に従うという研究が示されております。

f^Q(x) \propto x^{-1-\alpha} \tag{1}

ただし、$x$は十分大きいとし、Gopikrishnan et al. (2000)は$\alpha=1.53$, Maslow and Mills (2001)は米株式市場で$\alpha=1.4$, Gabaix et al.(2006)はNASDAQで$\alpha = 1.5$と推定しております。

経済物理学の本では、中々マーケットインパクトの統計学についてコンセンサスを得られなかったのですが、これは、どのように定義し、どのように測るかが曖昧であったからです。

いくつかの著者は、価格変化率$\Delta{p}$は成行注文数量$Q$に応じて,

\Delta{p} \propto Q^{\beta} \tag{2}

(ただし、Gabaix et al. (2006)は$\beta = 0.5$、Weber and Rosenow (2005)は$\beta = 0.76$としています。)
で与えられると主張しました。

Potters and Bouchaud(2003)は、

\Delta{p} \propto \ln{Q} \tag{3}

がより適合していることを発見しました。

これらの情報を集約しますと、私たちはエージェントの注文が約定する頻度はポアソン分布に従うのではないかと分かります。

これらの強度は、仲値からの距離だけに依存するため、(1)と(3)を用いて以下のように$\lambda$を考えることが出来ます。

\begin{eqnarray}
\lambda(\delta) &=& \Delta P(\Delta{p} > \delta) \\
&=& \Delta P(\ln{(Q)} > K\delta) \\
&=& \Delta P(Q > \exp{K\delta}) \\
&=& \Delta \int_{\exp{K\delta}}^{\infty}x^{-1-\alpha} dx \\
&=& A \exp{(-k\delta)} 

\end{eqnarray}

ただし、$A = \Delta / \alpha$、$k=\alpha K$です。
次に(2)から$\lambda$を求めると次のようになります。

\lambda (\delta) = B \delta^{-\frac{\alpha}{\beta}}

を得ることが出来ます。

この記事では短期における流動性について興味があるため、マーケットインパクトの関数は単純に指値板の数量の関数から計算出来ます。

3. 解法

とうとうモデリングが終わったので、上で定義したモデルを解きたいと思います。

3.1 最適ビッドとアスク価格

前の章について復習しますと、エージェントの目的関数は以下のように与えられました。

u(s,x,q,t) = \max_{\delta^a, \delta^b} E_t \Bigl[-\exp{(-\gamma(X_T + q_T S_T))} \Bigl]

ただし、最適な$\delta^a$と$\delta^b$は時間と状態(仲値)に対して依存するのでした。

このタイプの最適ディーラー問題はHo and Stoll (1981)によって初めて研究されました。

彼らのアプローチの一つに動的計画法を用いることで、$u$は以下のHamilton-Jacobi-Bellman方程式(以下HJB方程式)を解けばよいことを示しました。


\begin{cases}
\displaystyle
    u_t + \frac{1}{2}\sigma^2 u_{ss} + \max_{\delta^b} \lambda^b (\delta^b)[u(s, x-s+\delta^b, q+1, t) - u(s,x,q,t)] + \max_{\delta^a} \lambda^a(\delta^a)[u(s, x+s+\delta^a, q-1, t) - u(s,x,q,t)] = 0 \\
    u(s,x,q,T) = -\exp{(-\gamma (x+qs))}
\end{cases}

この非線形な偏微分方程式を解は$s, x, t$と離散値である在庫量$q$に対して連続です。
指数的な効用にしていたため、この問題を単純化出来ます。

u(s,x,q,t) = -\exp{(-\gamma x)}\exp{(-\gamma \theta(s,q,t))} \tag{4}

これを用いますと、

\begin{cases}
\displaystyle
    \theta_{t} + \frac{1}{2}\sigma^2 \theta_{ss} - \frac{1}{2}\sigma^2 \gamma \theta_{s}^2  + \max_{\delta^b} [\frac{\lambda^b(\delta^b)}{\gamma}[1-e^{\gamma(s-\delta^b-r^b)}]] + \max_{\delta^a} [\frac{\lambda^a(\delta^a)}{\gamma}[1-e^{-\gamma(s+\delta^a-r^a)}]] = 0 \\
    \theta(s, q, T) = qs
\end{cases}

\tag{5}

となります。

(4)式に対して、ビッドとアスクの予約価格の定義を代入しますと、この関数$\theta$は$r^b$と$r^a$に関係することが分かります。

実際、在庫量$q$のときのビッドの予約価格は以下のように計算出来ます。

r^b(s, q, t) = \theta(s, q+1, t) - \theta(s, q, t)

次に、在庫量$q$のときのアスクの予約価格は以下のように計算出来ます。

r^a(s, q, t) = \theta(s, q, t) - \theta(s, q-1, t)

ここで(5)式の最初の式の条件から$\delta^b$と$\delta^a$の最適な距離を計算出来ます。

計算結果は以下の通りです。

s - r^b(s, q, t) = \delta^b - \frac{1}{\gamma}\ln{\Bigl(1- \gamma\frac{\lambda^b(\delta^b)}{(\partial \lambda^b / \partial \delta)(\delta^b)} \Bigl)} \tag{6}
r^a(s, q, t) - s = \delta^a - \frac{1}{\gamma}\ln{\Bigl(1- \gamma\frac{\lambda^a(\delta^a)}{(\partial \lambda^a / \partial \delta)(\delta^a)} \Bigl)} \tag{7}

まとめますと、最適なビッドとアスクの提示価格は2つの直感的な手続きによって求めることが出来ます。

  • 一つ目は、(5)式の偏微分方程式から$r^b(s,q,t)$と$r^a(s,q,t)$の式を得ます。
  • 二つ目は、一つ目から得られた式から(6)と(7)から最適な距離$\delta^b(s,q,t)$と$\delta^a(s,q,t)$を計算します。

この2つ目のステップは、現在の市場における供給$\lambda^b$と需要$\lambda^a$に対して予約価格を推定することというような解釈をすることも出来ます。

3.2 qで漸近展開する

この記事における計算の困難さは(5)式を解くことです。成行注文の到達項はかなり非線形であり、しかも在庫にも依存します。
よって、ここでは、$\theta$を在庫量$q$と注文の到達項の線形的な推定に対して漸近展開して本問題を解決しようとします。

指数的な到達率、対照的だと仮定して

\lambda^a (\delta) = \lambda^b (\delta) = Ae^{-k\delta}

と置きます。

2.2章における予約価格$r^a(s,q,t)$と$r^b(s,q,t)$は固定在庫によって計算出来ます。
これらを仮定して(5)式に代入しますと、

\begin{cases}
\displaystyle
    \theta_{t} + \frac{1}{2}\sigma^2 \theta_{ss} - \frac{1}{2}\sigma^2 \gamma \theta_{s}^2  + \frac{A}{k+\gamma}(e^{-k\delta^a + e^{-k\delta^b}})\\
    \theta(s, q, T) = qs
\end{cases}
\tag{8}

が得られます。

ここで$\theta$を漸近展開しますと

\theta(q,s,t) = \theta^0(s,t)+q\theta^1(s,t)+\frac{1}{2}q^2\theta^2(s,t) + ... \tag{9}

次に$r^b(s,q,t), r^a(s,q,t)$は

r^b(s,q,t) = \theta^1(s,t)+(1+2q)\theta^2(s,t) + ...
r^b(s,q,t) = \theta^1(s,t)+(-1+2q)\theta^2(s,t) + ...

と展開できます。

まとめますとスプレッドは

\delta^a + \delta^b = -2\theta^2(s,t) + \frac{2}{\gamma}\ln(1+\frac{\gamma}{k})

と計算出来ます。ただし、$r(s,q,t) = \frac{r^a + r^b}{2} = \theta^1 (s,t) + 2q\theta^2(s,t)$で$\theta^1$は在庫が0にときにおける予約価格と解釈することが出来ます。
$\theta^2$は在庫が変化した時のマーケットメイカーの提示価格の感応度と解釈できます。
例えば、$\theta^2$が負の値になった場合、正の累積在庫量$q > 0$は積極的に安値でクオートします。

ここで、ビッドオファースプレッドは在庫量に対して独立であることが分かります。これは、到達関数が指数的であると仮定しているからです。
このスプレッドは2つの要因によって構成されております。一つは、在庫の変化における感応度$\theta^2$で、もう一つは、パラメーター$k$による注文の到達の強度に依存しております。

注文到達項の一次近似式は

\frac{A}{k+\gamma}(e^{-k\delta^a}+e^{-k\delta^b})= \frac{A}{k+\gamma}(2-k(\delta^2+\delta^b)+...) \tag{10}

となります。ここで、線形項は在庫量$q$に依存しないことが分かります。
よって、(8)式から(9)式と(10)式を引きますと、

\begin{cases}
\displaystyle
    \theta^{1}_{t} + \frac{1}{2}\sigma^2\theta^{1}_{ss} = 0\\
    \theta^1(s, T) = s
\end{cases}

を得ることが出来ます。
これを解きますと、解は$\theta^1(s, T) = s$になります。

次に$q^2$に対してまとめますと,

\begin{cases}
\displaystyle
    \theta^{2}_{t} + \frac{1}{2}\sigma^2\theta^{2}_{ss} - \frac{1}{2}\sigma^2\gamma(\theta^{1}_{s})^2 = 0\\
    \theta^2(s, T) = 0
\end{cases}

が得られます。
解きますと、解は$\theta^2(s, T) = -(1/2)\sigma^2\gamma(T-t)$となります。

よって、この注文の到達の線形近似から2.2の固定在庫と同じ予約価格を得ることが出来ます。

r(s,t) = s - q\gamma\sigma^2(T-t)

よって、ビッド/アスク・スプレッドは次に通りになります。

\delta^{a} + \delta^{b} = \gamma \sigma^2(T-t) + \frac{2}{\gamma}\ln{(1+\frac{\gamma}{k})}

ここで注意しなければいけないことは、一次近似ではこのように解けましたが、二次近似では$\theta^1 = s$とはなりますが、$\theta^2$に関しては非線形偏微分方程式を解く必要があります。

大分シンプルかされたので、後は数値計算のみになりますが、数値計算の結果に関しましては、論文をご参照くださいませ。

参考文献

  • Biais, B., Glosten, L. and Spatt, C., Market microstructure: a server of microfoundations, empirical results and policy implications. J. Financ. Markets, 2005, 8, 217–264.
  • Bouchaud, J.-P., Mezard, M. and Potters, M., Statistical properties of stock order books: empirical results and models. Quant. Finance, 2002, 2, 251–256.
  • Gabaix, X., Gopikrishnan, P., Plerou, V. and Stanley, H.E., Institutional investors and stock market volatility. Quart. J. Econ., 2006, 121, 461–504.
  • Gopikrishnan, P., Plerou, V., Gabaix, X. and Stanley, H., Statistical properties of share volume traded in financial markets. Phys. Rev. E, 2000, 62, R4493–R4496.
  • Ho, T. and Macris, R., Dealer bid–ask quotes and transaction prices: an empirical study of some AMEX options. J. Finance, 1984, 39, 23–45.
  • Ho, T. and Stoll, H., On dealer markets under competition. J. Finance, 1980, 35, 259–267.
  • Ho, T. and Stoll, H., Optimal dealer pricing under transactions and return uncertainty. J. Financ. Econ., 1981, 9, 47–73.
  • Luckock, H., A steady-state model of the continuous double auction. Quant. Finance, 2003, 3, 385–404.
  • Maslow, S. and Mills, M., Price fluctuations from the order book perspective: empirical facts and a simple model. Phys. A, 2001, 299, 234–246.
  • O’Hara, M., Market Microstructure Theory, 1997 (Blackwell: Cambridge).
  • Potters, M. and Bouchaud, J.-P., More statistical properties of order books and price impact. Physica A: Stat. Mech. Appl., 2003, 324, 133–140.
  • Smith, E., Farmer, J.D., Gillemot, L. and Krishnamurthy, S., Statistical theory of the continuous double auction. Quant. Finance, 2003, 3, 481–514.
  • Stoll, H.R., Market microstructure. In Handbook of the Economics of Finance, edited by G.M. Constantinides, et al., 2003 (North Holland: Amsterdam).
  • Weber, P. and Rosenow, B., Order book approach to price impact. Quant. Finance, 2005, 5, 357–364.

感想

本論文はモチベーションも明らかで、個人的には面白かったです。トレーダーの在庫量によって、そのトレーダーの期待仲値が変わるというのも面白いですよね。
実運用上では、本モデルはマーケットの注文フローを一次近似で解いている為、本モデルにおけるマーケットメイク戦略による実現損益の分散は大きくなるかもしれませんが、結果式は綺麗なので一人で感動してました(笑)
トレーダー達が価格を決める上での参考になれば幸いです。

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