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LITALICOAdvent Calendar 2024

Day 15

生成AIと構築する、二律背反を体現するCxOのメンタルモデル

Last updated at Posted at 2024-12-16

はじめに

LITALICOの亀田です。
執行役員VPoEとしてプロダクト開発や組織づくりに携わっています。

この記事は、LITALICO Engineers Advent Calendar 2024 15日目の記事です。

1年の振り返りをしていて、もう1記事書きたくなったので、急遽書き上げました。 

※本記事は私個人の意見であり、会社の公式見解(CxOはこうあるべき)を代表するものではないです。

どんな記事か

LITALICOの執行役員として「経営人材はどうあるべきか」を考える機会が多いです。
具体的には"経営人材とは、こうあるべきでは"を独自の「20箇条」として掲げています。

この「あるべき」は「生成AI(今回はChatGPT)」を用いれば(≒フィードバックをもらえば)、より高いレベルで実現できるのではないか、と考えて行ってきた手法をまとめたものが本記事の主題です。

以下格言を信じており、いわゆる「思考」の土台につながる部分が「20箇条」であるため、忠実に従うことを重きに置いています。

Be careful of your thoughts, for your thoughts become your words.
Be careful of your words, for your words become your deeds.
Be careful of your deeds, for your deeds become your habits.
Be careful of your habits for your habits become your character.
Be careful of your character, for your character becomes your destiny.

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

※正式には出典は曖昧で、マザーテレサ、ガンジー、老子、ブッダなどと言われている

「具体性や使い勝手や精度はどうなの?」って何人から聞かれましたが、かなり良いです。
毎日使っているくらい割とうまくいっています。

本記事を書くことになった背景

とある動画との出会い

【年収2000万円以上稼ぐCxOになるための自己改革法】人格はレイヤー/複数ペルソナを使い分ける/アイデンティティは変わる/「私らしくない」はNG

の動画を見たのがきっかけです。

小野壮彦さんという方で、グロービス・キャピタル・パートナーズに所属されていて、元々エゴンゼンダーというエグゼクティブサーチファームにいらっしゃいました。

動画では『ペルソナを意識的に演じる』ことで、二律背反を乗り越えたCxOになる方法が語られており、特に以下が印象的でした。

  • 「完成されたCxO」とは
    • 創業者は自分らしく突き進むことがよい場合も多く、それを支えるCxOは人間性の極端な成熟が求められ、そういった成熟の獲得が実現できるもの
    • そういったCxOは「二律背反」する人格を持つ(ex. チャーミング+冷静かつ現実的な判断力、コンセプト化の鬼+デティールの鬼、穏やか+積極的かつ闘志に満ちた姿勢)
  • 「二律背反」する人格形成の方法
    • まず、ビジネスの世界で言う「職業人格」は変えられる
    • 具体的には「ペルソナ(必要と思う役割)」を意識して演じることで、職業人格と異なる自分を実現する
    • さらに「ペルソナ」を演じると、それは自身の職業人格に染み出してきて職業人格も変化をする
  • 「ペルソナ」の具体的な使い方
    • あえて素の自分とは異なる役割を演じてみる(ex. 穏やかな自分が、怖い役割を演じる)
    • すると職業人格に染み出してきたペルソナの結果、職業人格が多面的になる
    • 身につけた職業人格を局面に応じて使いこなせるようになり、様々な局面で成果が出せる人材へ
  • 「ペルソナ」を演じる時のコツ
    • 自分らしくない不自然さを受け入れてペルソナを演じること。「自分に合わないから演じたくない」では多面性が獲得できずにCxOへ上がれない場合が多い、
    • 自己理解を行う。どうしても変えられない部分を理解し、受容した上で、と思う部分も、ポテンシャルを開放するために、頑張って演じてみること

更に以下本との出会いもありました。

とある本との出会い

上記動画にでられている小野さんが書かれた経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術という本です。

私の採用に関する考え方をアップデートしてくれた本です。タイトルは尖っていますが、とてもオススメです。

ポイントは、採用活動の中で人を見る観点として以下4階層で定義されています。

スクリーンショット 2024-12-10 23.51.05.png
※参考:経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術

詳細は省きますが、その中の一番下にある「ソースオブエナジー」について

  • ソースオブエナジー
    • とは
      • その人のコアにある変わらない部分
      • 具体的には使命感(陽の力)と劣等感(陰の力)の2つのことで、反対側の存在だが、互いに緩く交わり合う関係で、双方ポジティブに影響しうるもの
    • 使命感とは
      • ちょっとやそっとのことでは揺るがない強固な精神性を、その人物に授ける働きがあるもの
    • 劣等感とは
      • ネガティブな意味で使われることもあるが、人の成長・人生の発展でプラスにも働かせられるもの
  • ソースオブエナジーの強弱の影響
    • 使命感や劣等感がともに弱い場合は、世の中を動かすほど、突き抜けた人生になることはない場合が多くなるが、恥ずべきことではない、それはある意味幸せに近いことかもしれない
    • たとえば人としてもポテンシャルは凄く高いが、物事を自分で成し遂げるよりは、ナンバー2的なポジションであったり、厭世的な暮らしをしたりする人も少なくはない

スクリーンショット 2024-12-10 23.54.43.png
※参考:経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術

これを元に以下のように、自身を捉えています。

自身について

コンプレックスに書かれている内容に該当するものは幾つもあり、ある程度の「劣等感」も中学生までの様々な経験であるのですが、大きな「使命感」を持つような原体験は客観的にはありませんでした。

内省によって仕事においてはブレないある程度のエネルギーが自然的に湧き出る感覚はありますが、それはコンプレックス克服のため活動した結果育まれた「強い好奇心と自己成長欲求」が根本にあり、それに従うがままに多様な経験を行いたいが最大の欲求と認識しています。

弊社の代表取締役(長谷川)もそうですが、大きなエネルギーを持つ人を見ると、自身は大きなビジョンを描く人ではなく、とてつもないエネルギーかつ最も共感するものの具現化が自分の役割だろうと今は理解していて、それがよい現状考えています。

これは上記参考で書いた動画や本にあるよう、「エネルギッシュな創業者や代表の元で組織を率いるCxO」に近いポジションがキャリアの先にあり、大きなインパクトを出す企業に組織・役割は必要で、自身がより大きな成果を出すために実践する意義は高いと思い、これらを参考にして今年過ごしていました。

二律背反する人格を実践する難しさ

二律背反という言葉から汲み取れるように、全く同時に両立させることは基本難しく、ヤジロベーのように落ちないよう、バランスをコントロールするものと考えています。

更には二面性であるからこそ、「自身が得意としない面」=「不足・苦手とする面」には自身では気づきづらく、他者からのフィードバックが重要であるが、職業人格に踏み込む深いフィードバックとなるので、他者からのフィードバックはもらいづらいものと思います。

(自身の周りにはしてくれる方もいて有難い環境です)

とはいえ、どうしても偏ります。どうバランスを取ったものかと悩む時に、より頻度高く細かくフィードバックしてくれて、観点をくれる相手としての「生成AI」の活用を始めました。

生成AIの活用について

生成AIで最も使っているのはChatGPTです。
ChatGPTが出てから、有料ユーザーとして様々な面で活用しています。

普段は

  • ニュースや論文系の情報収集(特に分量が多く丁寧に書かれた内容)のサマライズ
  • 特定の専門領域の調査をしている時の周辺に広げた基礎情報の肉付け
  • 技術やツールの類似ツールとの比較や評価
  • 法令の全体構造、詳細の意味理解、判例の取得

などに活用しています。この分野での活用なだけでも、かなりの学習効率向上につながっています。

また業務上の何かのフレームワークを新しく考えたり、レビューを行う際の観点を出したりする時に、観点のヌケモレを埋めてくれるツールとしての活用をしています。

今回はある程度ChatGPTのクセも掴んでいたので、そのままChatGPTを採用しています。

具体的な使い方

前提存在しているもの

まず私は、自身のビジネスマン(特に経営層)としてより大きな成果を出すためのあるべき職業人格を社会人になってからずっと言語化しています。

これは多数経営者の本や、会話を通して、10年以上かけて「20箇条」として掲げているものです。

ベースの考え方は孫正義さんの「孫の2乗の兵法」です。

孫の2乗の兵法は、孫社長が20代中盤に、「孫子の兵法」と軍事戦略を経営に科学的に応用した「ランチェスター戦略」を組み合わせて完成させた独自の成功法則だ。
この孫の2乗の兵法の誕生には、20代中盤に苦しんだ慢性肝炎が関係している。入退院を繰り返した孫社長は、病院で多数のビジネス書を読破し、そこで孫子の兵法とランチェスター戦略に感銘を受けた。「孫」という名が一緒だったこともあるのだろうか、孫社長は、孫子に心酔していった。
その「孫の2乗の兵法」は25文字の文字盤で構成されている。

参考: 孫正義氏の後継者は体得必須の「孫の2乗の兵法」、25字の文字盤の深淵
参考: 孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学

行動指針を掲げ、月次で特に注力すべき事項を定め、上記動画でいうい「職業人格とペルソナのアップデート」を自然と行っていました。毎朝確認しています。

20箇条は毎年アップデートしていて、だいぶ固まってきました(=変化が減ってきた)。
中身は公開しませんが、孫子の兵法を見ると中身は被っている所が多く、以下参考なるかと思います。

『孫子の兵法』に学ぶ社員の士気を向上させるモチベーションアップ術

私の20箇条を見返すと、確かに二律背反に該当するものが多いなと気づきました。
言い回しは変えていますが例えば以下のようなもの

  • 「現状に縛られず、志高く、情熱的に」↔️「感情的にならず、合理的に、冷静に場を見定める」
  • 「多様性でリスクは可視化、分散させる」↔️「リスクを背負った大胆な判断を」
  • 「早さは成果のキモになる」↔️「後戻りできない/コストが高い部分はじっくり考える」
  • 「原理原則し、形式知化を積み上げ、仕組みで回す」↔️「他者がやらない独自性を探し、アクションする」
  • 「争わずに勝つ」↔️「基本的な勝ち方を知り、まず真似て、後に独自性を出す」
  • 「役割・成果には厳しくある」↔️「その人らしさを活かす」

大体が常にどっちかによってバランスが悪くなり、日次や週次で自身の言動を振り返った時に「いかん、いかん」となることが多いです。

で、本題にうつると、この20箇条を学習モデルとして読み込ませ、背反する考え方や漏れがないかをフィードバックしてもらっているが、本記事の本題です。

具体的な手順

1.ベースのあるべきをChatGPTにインプット

プロンプト

以下は私の経営リーダーとして意識すべき20ヶ条です。
記憶してこれからの私の言動へのフィードバックにしてほしいです。
特に考え方がこの20ヶ条を満たせていない時に満たせていないポイントを指摘してください。
その指摘を知って自らの言動を改善します。

第一条...
第二条...
...
第二十条...
2.フィードバック欲しい内容をインプット

日次の言動・感想を会議・業務ごとにメモすることをルーティンにしています。
ので、それをそのままChatGPTにインプットします

以下は今日の自身の言動に対するメモです。フィードバック下さい

感じたこと

* 今日◯◯の場で、◯◯と思った、◯◯は〜

言動で悩んだこと

* あの時◯◯という発言は良かったか、◯◯という判断を行ったが◯◯に自信がない

よいと思ったこと

* ◯◯の場で◯◯ができたのは良かったのではないか
3.返答を見て気づきを重ねる

2に対して以下返答がChatGPTからかえってきます。

ポジティブな視点

* ◯◯な点は20箇条の◯◯の点に沿っています。◯◯の言動も◯◯に沿ったよい発想です

改善点

* この考え方は◯◯や◯◯の視点をもう少し意識すると、より建設的なものになります
* むしろ◯◯と捉え直すと、20ヶ条の◯◯や◯◯にも貢献する行動につながるでしょう
4.時系列での変化をフィードバックしてもらう
今までの言動、時系列に注目した変化の様子を経て、
私は20箇条でどこは満たせていそうで、どこは改善に苦労しそうと分析できるか、
率直にフィードバックしてください

に対して

満たせていそうな点

* ◯◯:◯◯の姿勢が見られるので、◯◯は強みとして考えられます
* ◯◯:texttext
* ◯◯:texttext


改善に苦労しそうな点

* ◯◯:◯◯の傾向があり、こういう言動が多いので、◯◯になるのには苦労しそうです
* ◯◯:texttext
* ◯◯:texttext

総合的な分析と提案

* 強み: ◯◯が特に目立ちます。これらは◯◯の基盤となる要素であり、◯◯に適している
* 課題: ◯◯に関連する項目がやや薄れがちです。◯◯をすることでさらに総合力が向上するでしょう

提案

* ◯◯の中で、◯◯を振り返る時間を定期的に設ける
* ◯◯に目を向け◯◯を意識的に行う
* ◯◯のとき、◯◯だけでなく、◯◯にどうつながるかも意識する

と大変丁寧な回答がChatGPTから返ってきます。

補足

シンプルにこれだけです。

が、公開しづらい自身の率直な感想や悩み、かつフィードバックしてもらいづらいことを言ってもらえる、多面的な視点を漏らさずに教えてもらえる、という意味でなかなかよい相棒です。

以前より、偏ったな、こう調整しようなど、気付ける機会は間違いなく増えました。
特にインパクト大きい点が

  • 実際の言動にどこまで反映できているか・どこは変えられていないかを、時系列の変化を見て示してくれる
  • それに合わせて至極具体的な言動ベースで改善案を提案してくれる

の2点です。「根本変えづらい所が何か」をファクトに基づいて支援してくれる点はかなり強力です。

その他

実践するには

私は細かなニュアンスや言い回しや観点の調整を含めて10年ほどかけて磨いてきましたが「ビジネスマン基礎、経営者とは」みたいな書籍にある、こうあるべきをベースのインプットデータとして用いても、そんな使い方は変わらないのではと思います。

プロンプトは上記参考にすれば、ある程度のものは返ってくるのではないでしょうか。

会社としての生成AIの活用について

弊社は要配慮個人情報を中心に多くの機密情報を扱います。

インプットに活用し、学習モデルに用いられることは現状絶対避けたいこと。アウトプットで著作権を違反するものを悪気なく・無意識でも活用することは避けないといけません。

全体のガイドラインとして考え方を整理しつつ、基本は個別案件ごとの判断としています。
エンジニア組織ではROIの検証も含め、Github Copilotの導入を行うなどはしています。

リスクに対する法令整備や判例も特にグローバルで見ると徐々に整備は進み、それらも参考としつつ、もう少し多面的に活用できる体制は今後整えたいです。

また、生成AIによる非連続な成長と仮説検証は必要ですが、オペレーション改善+ソフトウェアの導入でDX化の余地もあります。課題解決ドリブンで物事考えながら、生成AIによってサービスやビジネスのルールを変えるインパクトが出せる可能性の検討・新たな価値創造は挑戦していきます。

今後

動画の最後に「メリット・デメリットで考える世界だと徳は詰めない。無駄と思うようなことも、功利的には自分に返ってくることが多い。それが積み重なって徳となる」「もっと俗物的でもよく、振り返ると徳が詰んでいたくらいでよい。今の世界、もっとエゴイスティックで、自分がゴールを決めるという人がCxOになっていくエネルギッシュさも必要」「すると後から徳はついてきて、よいCxOが生まれるのでは」という会話があって、なるほどなと思いました。

私は未熟な面が多く、全く褒められた人間ではないですが、「スタートアップCxOは人間性の極端な成熟を獲得する道」には共感をしており、そうなっていきたいため、今の会社はスタートアップではないですが、卓越した機会は存分にあるため、経営人材としてより達観したかつ大きな成果が出せる人材へのレベルアップはを楽しんでいきたいです。

仕事上、周囲から見てどう変化したか・本当に変化しているのかはまだ聞けていないのでわかりませんが笑、本取り組みは2025年度も続けていきます!

それでは、明日(16日目)のLITALICOのアドベントカレンダーは

@kazuis さん
@kgshohei さん
@EXcEption2zero さん
@shuheie さん

の皆さんです!
引き続きLITALICOのアドベントカレンダーをお楽しみください^-^

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