はじめに
Apache Camel で Kafka などからバッチでメッセージを受け取り、split
を使って1件ずつ処理するケースはよくあります。
このとき、ある条件で処理を途中で終わらせたい場合、camel:stop
(正確には controlbus
コンポーネントでルート停止を指示)を使いたくなるかもしれません。
しかし、split中でcamel:stopを呼ぶとバッチ処理が途中で止まってしまうという落とし穴があります。
本記事では、camel:stop
の正確な動作を説明した上で、安全な代替方法をご紹介します。
camel:stopとは?ルートを即時停止する強力な手段
camel:stop
は Camel の処理を停止する手段ですが、実際には controlbus
コンポーネントを用いて 指定したルート(routeId)を停止します。
使用例:
<to uri="controlbus:route?routeId=myRoute&action=stop"/>
この記述は、routeId="myRoute"
を持つルートの すべての処理を即時に停止します。
主な効果:
-
split
、loop
、recipientList
などの途中であっても 強制終了 - エンドポイント(Kafka, Timer, FTPなど)も停止
- ルート単位で Camel コンテキスト内部から 明示的に処理を終わらせられる
使いどころ:
- ワンショット処理やバッチ系で、**明確に「ここで処理を止めたい」**ときに便利
- 定期実行の終了制御などにも有効
注意点:
- split中で使うと、それ以降のバッチ処理が行われない
- 他の並列ルートに影響することもある(エンドポイント共有時など)
- アプリケーション全体の終了を意図せず招く場合もある
問題点:split中でcamel:stopを呼ぶと残りのメッセージが処理されない
以下のようなルートで split
中に camel:stop
を呼ぶと:
<route id="dangerousSplitRoute">
<from uri="kafka:my-topic?batch=true"/>
<split streaming="true">
<simple>${body}</simple>
<choice>
<when>
<simple>${body} contains 'stop'</simple>
<to uri="controlbus:route?routeId=dangerousSplitRoute&action=stop"/>
</when>
<otherwise>
<to uri="bean:recordProcessor"/>
</otherwise>
</choice>
</split>
</route>
この処理では、対象のメッセージを受信した時点でルート全体が停止されるため、バッチで受け取った他のメッセージは処理されません。
解決策:camel:stopの代わりに「何もしない終了ルート」を作る
Camel では、安全に処理を「スキップ」または「終了」したいだけなら、**自作の「何もしないルート」**を用意してそこに分岐させるのが安全です。
<route id="safeSplitRoute">
<from uri="kafka:my-topic?batch=true"/>
<split streaming="true">
<simple>${body}</simple>
<choice>
<when>
<simple>${body} contains 'stop'</simple>
<to uri="direct:camelstop"/>
</when>
<otherwise>
<to uri="bean:recordProcessor"/>
</otherwise>
</choice>
</split>
</route>
<route id="camelstopRoute">
<from uri="direct:camelstop"/>
<log message="このメッセージは終了条件に一致しました。処理をスキップします。"/>
<!-- 実際には何も処理しない -->
</route>
この構成のメリット
- split中でも他のメッセージ処理に影響を与えない
- 「ここで終わる」ことがコード上で明示されていて分かりやすい
- 将来的に通知やログ追加も可能で拡張性がある
- テストしやすい:
mock:camelstop
に差し替えて検証可能
まとめ
-
camel:stop
は Camel のルートを即座に終了させる強力な機能だが、使いどころを誤るとバッチ処理が中途半端に終わるリスクがある - 特に
split
中で使うと、未処理のメッセージが出る可能性あり - 代替策として「何もしないルート」を明示的に呼び出す構成にすると、安全かつ意図が明確な設計になる