最近、Web3.0やDAO、メタバース、NFT、スマートコントラクトなどのキーワードをよく耳にします。ブロックチェーンはこれらを支える重要な技術のひとつです。多くの人がブロックチェーン技術の学習の必要性を感じていることでしょう。本記事では、実際に私が学習に活用した5つのコンテンツのメリット・デメリットを解説します。これからブロックチェーンを学習予定の方は、ぜひ参考にしてください。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは複数の取引情報のデータです。複数の取引情報をブロックという単位でまとめ、そのブロックを連結させたチェーンのようなデータ構造を持つため、ブロックチェーンと呼ばれます。ブロックチェーンはその構造上、データの改ざんに強いという特徴があります。
また、中央管理者不在で、複数の組織や個人それぞれが同一のブロックチェーンのデータを保持できます。この共有管理技術は、NFT、スマートコントラクト、仮想通貨などの取引記録に活用されています。これらの次世代技術が複合的に活用されるメタバース空間や、新時代の包括的なWeb概念であるWeb3.0という言葉も誕生し、ブロックチェーン技術の需要は高まっています。
ブロックチェーンを学ぶメリット
ブロックチェーンは次世代技術に重要な技術基盤であることを前述しました。ここでは、ブロックチェーンを学ぶメリットについて解説します。
次世代技術を深く理解できる
ブロックチェーンの仕組みを学習すれば、その仕組みの上に成り立つ次世代技術の理解が大幅に進むでしょう。昨今、Web3.0やメタバース関連の書籍やWebサイト上での解説が溢れかえっています。しかし、イメージやイラストが中心で詳細な説明は避けて解説したものも多く、玉石混合です。本記事で紹介するブロックチェーンの学習素材を通じ、技術背景を理解できれば、クリアに次世代技術を理解できるでしょう。
ITエンジニアとして市場価値が高まる
ブロックチェーンの知識や開発ノウハウの需要は年々高まっています。一方で、ブロックチェーンエンジニアは市場に多くはありません。したがって、ブロックチェーン関連のスキルを習得したエンジニアは、高い市場価値を持ちます。
汎用的なIT技術ノウハウも得られる
ブロックチェーンの技術には、一般的なITシステムでも活用される汎用的なノウハウがたくさん詰まっています。例えば、セキュリティーレベルを高める公開鍵と秘密鍵による署名検証プロセスやハッシュが一例として挙げられます。ブロックチェーンの学習によって、これらの付随的に得られる技術も魅力的なメリットです。
ブロックチェーン学習コンテンツ5選
ブロックチェーンを学ぶと様々なメリットが得られますが、具体的にどのような学習コンテンツを選択すればよいでしょうか。私が実際に活用した5つの学習コンテンツについて、初学者にとってのメリット・デメリットを紹介します。
ビットコインとブロックチェーン
個人的おススメ度:★★★★
本書は、ビットコインをテーマとして、ブロックチェーンの基本構造やセキュリティーの仕組みを解説しているコンテンツです。ブロックチェーンの詳細な理解には一般的にプログラミング知識が必要とされますが、本書のメリットは、このプログラミング知識がなくても理解しやすいよう工夫されている点です。実際にブロックチェーンデータが閲覧できるWebサービスを活用しながら、どのようなデータがどのように蓄積されていくのかを解説しています。
一方でデメリットは、ブロックチェーンの開発手順にあまりフォーカスしていないことです。プログラミングでビットコインのデータを検証する解説は含まれますが、本格的にブロックチェーンを開発していく構成ではありません。エンジニアではない一般の方が、読み物としてブロックチェーンを理解するために最適なコンテンツでしょう。
プログラミング・ビットコイン
個人的おススメ度:★★★
本書は、Pythonでビットコインをゼロから作成していくコンテンツです。メリットは、ブロックチェーンの基本構造にとどまらず、高難度な技術背景まで解説している点です。例えば、取引の署名プロセスで利用されるECDSAの数学的背景や、大規模なブロックチェーンデータを簡易的に制御するブルームフィルターなどの解説が挙げられます。他のコンテンツにはない高度なコンテンツが含まれています。
一方で、5つのコンテンツの中で最も難易度が高く、初学者にとっては理解できない方も多いでしょう。初めてブロックチェーンを学ぶ方は、他のコンテンツから学習を開始し、本書はより詳細に学びたい技術があれば購読するという使い分けをおすすめします。
Pythonで始めるスクラッチからのブロックチェーン開発入門
個人的おススメ度:★★★★
本コンテンツは、Pythonでビットコインをプログラミング開発する動画教材です。ブロックチェーンはデータ蓄積の流れが特徴的です。この流れを動画で分かりやすく学べることはメリットです。技術レベルも基礎的なものが多く、初学者でも習得できるでしょう。
一方で、完成形であるブロックチェーンのシステムが開発PC上で動くだけのものであり、実際にWeb公開して複数の人が使った場合にどのように動作するかまではコンテンツに含まれていません。しかしながら、ブロックチェーンの構造やセキュリティーを学ぶ範囲では、良質な教材なのでおすすめの教材です。
Pythonによるブロックチェーン開発教本(私が制作したもの)
個人的おススメ度:★★★★★
日本語版
英語版
自作品となりますが、Pythonでブロックチェーンをゼロからブログラミングしていくコンテンツです。本書のメリットは、初学者をターゲットに作成された教材であることです。多くのブロックチェーン関連コンテンツは、"Proof of Work"や"ECDSAによる署名検証"といったブロックチェーン独自技術を中心に解説する傾向があります。
しかし初心者にはそれ以前に、ブロックチェーンの基本構成や、ブロックチェーン同士がデータを同期しあう仕組みから学ぶ必要があります。初学者が理解しやすいように順を追って解説されています。Web公開方法も記載されている点も魅力的です。デメリットは、基礎的なブロックチェーン開発のみにとどまる点です。高難度技術は他のコンテンツから習得しましょう。初学者が最初に取り組むコンテンツとしておすすめです。
ゼロから創る暗号通貨
個人的おススメ度:★★★
他の教材と同様に、ビットコインを模した仮想通貨の開発方法を解説した書籍です。本書のメリットであり最大の特徴は、ブロックチェーン同士のPeer to Peerネットワークの構築方法を詳しく解説している点です。Peer to Peerはブロックチェーンを分散システムとして活用するのに必須の技術です。またブロックチェーン以外に多くの場面で活用されています。
一方、Peer to Peerの解説が詳しいゆえに、その他の仕組みの解説をメインで学びたい人にとっては、的を絞った学習が困難に感じるでしょう。ブロックチェーンの基本構造は学習済で、Peer to Peerについてさらに詳しく学びたい方に最適な教材です。
ブロックチェーンを学ぶ上での注意点
ブロックチェーンの解説コンテンツは複数ありますが、ここでは学習前に把握しておくべき注意点について解説します。
Pythonの知識が必要な場合が多い
紹介した5つのコンテンツのうち、4つはPythonでプログラミングを行いながら学習を進める形式となっています。これらの教材を活用する場合は、学習の前提としてPython知識が必要となります。またほかのブロックチェーン学習コンテンツでもPythonを使用するものは数多く存在します。前提知識の目安としては、書籍1冊やWeb教材1本を学習済、あるいはスクール卒業レベル程度です。
難易度が高い
初学者向けのコンテンツは紹介したコンテンツ以外でもいくつかあるでしょう。しかし、ブロックチェーンそのものは高度な技術知識です。各コンテンツのクリエイターは初学者でも理解できるよう、工夫してコンテンツを作成していますが、学習者本人にも粘り強く学ぶ姿勢が求められるでしょう。複数のコンテンツの併用し、少しずつ理解を積み上げていくことをおすすめします。
まとめ
ブロックチェーンは、DAOやスマートコントラクトなどの次世代技術を支える重要な技術要素です。しかしブロックチェーンの仕組みや開発ノウハウを、初学者向けに解説しているコンテンツは多くありません。本記事で解説した、私が実際に試したブロックチェーン学習コンテンツのメリット・デメリットを参考に、ブロックチェーンの理解、ITエンジニアの方は市場価値向上に役立ててください。