開催日:2023/11/16~17 開催地:東京
上記のイベントに参加してきたので感想をつらつらと書いていこうかと思います!
なお発表内容をサマリして、ポイントを分かりやすくレポートするという高尚な技術は持ち合わせていないので、個人的な所感を垂れ流すだけのポエムです。その点、何卒ご容赦下さい。(^^;)
会場
2021~2022とコロナ下でオンライン開催(Zoom+Discord)だったのですが、2023はオフラインが復活! 新宿セントラルパークシティが会場となっております。イェイ!
といっても僕は諸事情によりオンライン参加だったんですけどね。。。今年のオンライン会場はZoom+miro。miroの共有ボード上に様々な情報が掲載されており、そこに質問や回答などの付箋がペタペタ貼られていく感じです。
現地会場にはWiFi環境が無いとのことで、現地組はあまり書き込めないかもしれないから、ひょっとしたら過疎るかも・・・なんて心配していましたが、まったくの杞憂でした。めっちゃmiroも盛り上がってました!
書き出された付箋の量がすごかったです。またその付箋一つ一つに対して登壇者の方が丁寧な回答を返してくれるのが本当にありがたかったです。これ、回答するだけで一仕事ですよね。
Discordだと書き込みのタイミングを逃すと何となく発言しずらくなってしまったりもするのですが、miroだとそれを気にせず貼れるのがいいですね。似たような付箋をまとめたり、といった整理ができるのも強みです。後に一枚絵で形が残るのも嬉しい。まぁ、これだけの付箋量になってくると、一枚絵に縮小すると読めないんですけどね(笑)
miroボードのスクショは進行役を務められたJ.Kさんのブログに載っています。後日ボード自体も公開もされるそうです。
1日目
【KEYNOTE】 Woven by Toyotaにおける高度運転支援ソフトウェアのアジャイル開発
自動運転技術の難しさがよく分かるセッションでした。画像認識から「あらゆるオブジェクトを認識する」ことのシビアさ。未検知もNGだけど、誤検知もNG。とりあえず検出しとけばいっか、じゃダメな世界。たとえ道路の真ん中にモアイ像が立っていても(イメージ画像がシュールでしたw)それをそれとして認識できないといけない。道路上で起こりうるあらゆる事象に対処する。これは確かにアジャイルで試行錯誤しないと無理ですね。また自動運転テストのために街を作ってしまう(woven city)とか、スケールが違うなと感じました。
幸運を科学する:アジャイルチームの成功を解析・再現する方法
AgileStudioさんが内製化支援に入ったお客様と一緒にご登壇。半年間で新規のお客様とそこまでの信頼関係を築けるところがまずスゴイ。とくに印象に残ったのはチームビルディングのために冒頭で2泊3日の合宿を行ったというくだり。終始関係づくりに一点集中する徹底ぶり。一見、回り道のように見えるけど、結局はそれが最短経路なのかな、と感じました。アジャイルはどこまでも「人」。
なおブースでアジャイルプラクティスマップの小冊子を配布していたようで、現地参加しなかったのが悔やまれます。プラクティスコレクターの名にかけて、次回こそは・・・。
The LACE Miracle:エネルギーサービス変革を目指す電力企業グループでのアジャイルスケールアップの鍵
LACE(Lean-Agile Center of Excellence)の話。東京電力グループの「変わらなきゃ!」という本気さが感じられるセッションでした。全セッションの中で最も経営層のコミットが感じられる内容で、やっぱアジャイルの社内浸透にはトップダウンの後押しも欲しいよなぁ、とつくづく感じました。
なおこの発表自体、スポンサー枠でも登壇できるのに、わざわざ一般公募で申し込み、勝ち取った枠という裏話もあったりして、そのあたりにも「本気」感が漂っています。
アジャイルで実際に困ったからこそアジャイルをRebuildできた話 ~15年50案件以上のアジャイル現場で見つけた4つのヒント~
AgileJapanでお馴染みの渡会さんのセッション。なんか渡会さんのセッションがあると安心します。
最近、上梓されたこちらの本から、カンファレンステーマに沿ったものをいくつかピックアップして紹介していただきました。渡会さんのお話はいつも初心者に優しく、輪郭が明確で好きです。「分かりやすい」のに「浅い」わけではなく、またその発言の全てが膨大な経験に裏打ちされたものである、ところが信頼できます。
Agile Center of Excellenceの必要性を考える中で自身のアジャイルを再構築する
PdMとアジャイルコーチの二刀流、島崎さんのセッション。
初登壇とは思えない堂々とした発表で、内容も濃く、個人的にもとても共感しました。僕もそうですが、だいたいアジャイルって組織の中で「1人」から始まるんですよね。そこから地道にコミュニティを立ち上げて、工夫を重ねて、少しずつ輪を広げて・・・。ここにも同じ戦いをしている方がいる、と勇気を貰いました。最近は徐々に発表テーマが「一人でアジャイル」から「皆でアジャイル(≒ACoE)」に話題が移ってきた気がして嬉しいです。事例の中に出てきた「POだれかわかりません」はパワーワードですね。
アジャイルは開発だけじゃない!イベント運営に業務スクラムを適用してスクラム経験者を激増させちゃいました!
IPA発行資料『ソシアジャ五良核』を自らの師と仰ぐ、アジャイルコーチ谷川さんの社内コミュニティ運営の話。コミュニティ運営と聞くと好きな人が集まって細々と始まるみたいなイメージがありますが、SHIFTさんの場合、規模感がまず違ってて、アジャイル系だけでもすでに4つコミュニティ(入門~ハイクラスまで)がある、とかそういう世界でした。今、思うとこのセッションですでに2日目の「組織アジャイル」につながる話が色々と出ていたんですね。
Lightning Talks
突然、恐竜が出現し、会場の視線をさらっていました。ちなみにこの恐竜さん、解説しながら自分でスライド送りもします。(絵面が超シュールw) 僕もDX隕石の余波で絶滅しないように、きちんと生き残る術(アジャイル)を身につけておかないとな、と思いました。
「アジャイルな開発ができるようになったら次に何をする?」開発だけアジャイルな状況を越えて、顧客のアウトカムに繋げる一歩
ただただ、すごいセッションでした。
プロダクトマネジメントコーチ森さんの発表ですが、なんと箱根のリトリートイベント参加中のご登壇とのこと。話の内容としては、いくらDevのサイクルが高速化してもBizのサイクルがアジャイルでなければやっぱりズレてきちゃうよね、というもので、ハッとされられました。確かに。とくにDev出身だとモノづくりのサイクルに目がいきがちで、自分のアジャイル開発の捉え方が狭かったことに気づかせてもらいました。
その内容を語る架空のストーリーがまた秀逸で、フィクションとしながらも、リアルに作り込まれたディティールは実際にあった話としか思えなくて、あるある感が凄まじかったです。淀みない語りと、めくるめく(ある意味ホラーな)展開と、膨大な情報量に発表が終わった時に、会場もmiroも一瞬静まり返ったような気がしました。まさに「圧倒された」という感じです。
miroにも遅れて、ブワッと付箋が書き出され、反響の大きさを感じました。
このセッションが僕の中ではベストでした。
※後日、リトリートイベントの体験レポで、実は当日に発表資料をガリガリ直していた、ということを知って、二度ビックリ。
アジャイル五年生 〜急成長の裏側〜
東京海上日動システムズさんの事例発表。スクラムマスターのお三方が黒い三連星のように(古いネタでスイマセン(^^;))、抜群の連携で次々に入れ替わりながら、この5年でたどった軌跡を語ってくれました。その中で7つの課題が挙がり、それらをどう解決していったがテンポよく紹介されるのですが、おそらくその1つ1つに紆余曲折、様々な苦労の末、そこにたどり着いたのであろうことが想像に難くない内容でした。例を挙げると、年次予算だとアジャイル開発のサイクルについてこれないので、経営層にかけあって、三か月単位に特別予算枠を設置してもらった、とか。普通そこは変えられないものとしてあきらめちゃうところですよね、という課題にも正面から取り組み、解決策に到達しているところに強さと熱意を感じました。全社的に見ればまだまだレガシーな領域も広いとはおっしゃっていましたが、5年でここまで組織として推進できている点に希望を感じます。miroの質問への対応もすごく丁寧で好印象でした。こんなに真摯にスクラムに取り組まれている会社があるということを初めて知りました!
東京都庁でアジャイルを実践するための「都庁アジャイルプレイブック」のご紹介
1日目の最後は行政アジャイル。登壇者お二方のマイナちゃん、マイキーくんどっち派?のやりとりが微笑ましくて和みました。(ちなみにマイナちゃんはデジタル庁、マイキーくんは総務省のマスコットキャラクターとのことで、こんなところにも行政縦割りの壁がw)
都庁がアジャイルプレイブックを出していることを初めて知りました。紙面もRPG風で読みやすく書かれていて、お堅い行政イメージとは一線を画すものでした。とくに都庁の中ではじめてアジャイル開発に触れた方々のコメントに「楽しかった」という意見が多く、なんだか嬉しくなりました。何かと制約の多い行政だからこそ、もっとアジャイルが浸透するといいな、と思います。ここにもファーストペンギンがいました。
2日目
【KEYNOTE】生成AIの衝撃 ~ アジャイルガバナンスの必要性と3ディメンジョン・モデルによる進化へ
正直なところ、AIとアジャイルとの関係はピンと来なかったのですが、生成AIの話は面白かったです。生成AIを業務の隅々にまで使い倒そう、という風潮は日本にしかないとか。日本は欧米に比べて、AIに対する規制も緩いそうです。何かの記事で見かけましたが、日本はアトムやドラえもんの影響でAIに対する警戒心が薄いという話も。ChatGPTの誤った回答が問題にもなっていますが、教師データが人間のアウトプットである限り誤謬は避けられないハズで、むしろこれは使い手側の問題ではないかと思います。ドラえもんはちょいちょい抜けてるところがあるので、のび太くんも「それって本当かなぁ?」という気持ちをもって接することができます。ChatGPTのように理路整然とした日本語で断言されてしまうと、ついその前提を忘れてしまいがちです。案外、口調を変えたり、語尾を変えたりするだけでも誤回答問題は緩和されるんじゃないかと。
このセッションは発表内容もさることながら、miroに書き出された付箋もかなり面白かったです。僕も仕事に疲れたらChatGPTに慰めてもらいたい。人間の愚痴を聞かされ続けたAIがどう成長するかはちょっと怖いけど。
アジャイルとは誰のためのものか
楽しみにしていた市谷さんのセッション。
内容は組織アジャイルの話。参考書は『組織を芯からアジャイルにする』あたり。最初に出てきたアジャイルハウス(スライド6の3F建ての家の絵)がすごく分かりやすくて、会場の反応から皆さんが抱えている問題領域が1Fから2~3Fにシフトしてきている、ということが明確になりました。(まぁ、ウチの会社はまだ1F、下手したら基礎の部分で悩んでいるんですけどね(^^;))
「みんなでアジャイル」な時代だからこそ、「みんな」の中に「自分」を入れ忘れないようにしよう、というメッセージは刺さりまくりでした。
また仮に上手くいかなくても1つ前に戻れるステージを作っておくことの大事さも。
(このあたりは市谷さんの「TEDxKobe」の登壇内容を聞くとより深く分かるかと)
僕の本棚には市谷さんの本がズラリとならんでいるので、現地参加だったら間違いなくサインをもらいに走っていたと思います。次こそは・・・。
ウォーターフォール開発の中でアジャイル組織運営を広げていく
前のセッション内容と小泉さんのお話がきれいに繋がっていて、僕の中ではむしろ1つのセッションの第一部と第二部という印象でした。教科書と実用例みたいなイメージといったら伝わるでしょうか。このセッション順を決めたAgileJapanの中の人に感謝。
ウォーターフォール組織をアジャイル組織に変えていく戦い。「砂漠に水を撒くような」という感覚、ほんと共感しかないです。miroでも共感の声が多く挙がっていました。こういった事例をたくさん目にしているうちに、最近、自分の中で「失敗」の定義が変わってきたような気がします。例え今はまだ思ったような成果が出ていないとしても、活動を継続できている時点で失敗ではないのではないかと。
miroにゴールデンサークルの書式を貼っていただけたのも嬉しかったです。
形だけのアジャイルから中身のあるアジャイルへ変わるために~アジャイルの原点に立ち戻る~
Agileエバンジェリスト伊山さんのセッション。温故知新。基本に立ち戻るため、アジャイルの源流を辿られているのですが、その掘り下げ方がマニアックに深い! 僕も以前スクラムの源流は辿ったことがあるので、伊山さんの深堀りぶりがよく分かります。どこか上手く回っていない部分に遭遇した時、つい何か新しいものに解決を求めがちですが、そうではなく、原点に立ち戻る。自分の知識・理解への向き合い方は是非見習いたいと思います。miroの質問への回答もすごかったです。
Agile導入による製薬マーケティング組織のRebuild
昨年も製薬業界からの登壇がありましたが金融に行政と、もはやアジャイルに垣根はありませんね。ただ製薬業界ならではの制約(シャレじゃないです)が色々あるようで、型通りのスクラムではできない。そこで現場の理解が得られる形にアレンジして取り組んでいるというお話でした。例えば日次のデイリースクラム開催が受け入れてもらえなくて、頻度を落としたとか。
僕もスクラムマスターしてて、スクラムのルールをあえて踏み抜くケースも多々あるのですが、結構勇気がいるんですよね。毎回、この原則踏み抜いちゃって本当に大丈夫か?と迷いながらやってます。多分、このジレンマは他のメンバーには分からないんだろうなぁ。(泣)
野生コーチと育ち盛りコーチで語るアジャイルコーチの伸び伸び育成術
老舗、オージス総研さんの、原田さん(アジャイルコーチコーチ)と佐藤さん(アジャイルコーチ)の師弟セッション。キラーワード満載で非常に面白かったので、あえて単語だけで紹介させていただきます。オージス総研さんのセッションはいつもワイガヤ感があって楽しそう♪
野生コーチ/野良コーチ/育ち盛りコーチ/ペアコーチ/モブコーチ/三本柱/スクラムチーム成長ノート/ファン心理/推し心理/情熱
スクラムマスターやマネージャーのための傾聴の技術
フリーのアジャイルコーチkawagoiさんの傾聴セッション。ちょっと変わったアプローチで、会場では隣の人とペアを組んで実際に傾聴体験するというもの。僕自身はオンライン参加だったので、トークはしませんでしたが、miroの付箋でオンラインだけど同時参加の同僚とやってみた、という猛者も。2日目午後のちょっと疲れてくる時間帯に、こういうアクティビティ系のセッションを挿んでくるイベント構成も上手いなと感じました。
生産性指標を可視化し、開発チームのボトルネック発見・改善を加速させる
開発生産性を可視化できるツールの話。デプロイ頻度とか、コミット数など、アジャイル開発のメトリクスの話。Google社オススメのFour Keys Metricsとか。後日5つ目の指標が追加されたそうですが、じゃあもうFour Keysじゃないじゃん、と心の中で勝手にツッコミを入れておりました。
保険xアジャイルコミュニティで実現する企業の枠を超えた業界ハンガーフライト
保険業界のアジャイルコミュニティの話。昨年の金融業界アジャイルコミュニティに触発されて活動再開とのことで、おおー、ちゃんと繋がっていると密かに感動していました。最近はこういったコミュニティ活動も手弁当で参加する自助努力から戦略的に行う企業活動そのものになってきた感があります。企業間のコミュニティ活動自体は昔からあったと思いますが、その位置づけが変わってきたといいますか。。。
まぁ、僕自身、AgileJapanに参加しているのは仕事か?趣味か?と問われると、けっこう回答に困ってしまいます。(今、この記事を書いているのは趣味ですが)
【CLOSING】日本文化におけるアジャイルへの道
Scrum Inc.からAviさん、クロエさん(同時通訳)、JJ.サザーランドさん(CEO)がご登壇。締めくくりに相応しい豪華な顔ぶれ。
内容は「日本は決してアジャイルが苦手な国じゃないハズだ」という激励メッセージで、思わず胸が熱くなりました。冒頭、欧米の個人主義と日本の全体主義という文化的背景に触れ、3.11の混乱を地域の絆で乗り越えたことを例に、何故企業内ではそれができないのか、と問題提起されていました。またスクラムの源流が日本にあることにも触れ、他人をおもいやる文化に対する強いリスペクトも感じました。日本人として誇らしくもあり、歯痒くもあり、最後に「君たちならもっとできる!」とバーンと背中を叩いてもらった感じがしました。しばらくはこの勢いで自走できそうです。
結び
というわけで、今年もいっぱい元気と勇気を貰えたAgileJapan。本当に大好きなイベントです。関係者の皆様や一緒にイベントを盛り上げていただいた参加者の皆様に改めて感謝いたします。
参加した方の多くがそうだと思いますが、僕もAgileの力を信じる一人です。この熱量が、自社を、日本を、ひいては世界を良くすることを信じて止みません。
最後にこれだけは言わせて下さい。
お昼に流れるお弁当アナウンス。あれ、オンラインでは完全に飯テロです!(笑)
自宅でインスタント麺をすすりながら「和牛弁当食いてー!」と悶絶しておりました。
よし、来年は絶対、現地参加するぞ!!