はじめに
こんにちは。今回は、私が日々どのようにして情報を整理し、学習の効率を最大化しているか、その中核を担うツール「Obsidian」と、それを強力にサポートする「Gemini CLI」の連携についてご紹介します。
1. 現在の活用状況:第二の脳としてのObsidian
なぜObsidianとAIを連携させようと思ったかというと、チャット型AIに質問して何か教えてもらって満足というだけではもったいないと思い、しっかり知識をどこかにまとめようと思ったことです。
また、結論だけ知っているのでなくなぜそうしなければいけなかったのかを理解するために、質問をAIに投げかけることでより深く理解をできるような活用ができることをメインにGEMINI.md
の調整などを行いました。
Obsidianを単なるメモアプリとしてではなく、「第二の脳(Second Brain)」として活用しています。具体的には、以下のような情報をすべてObsidianに集約しています。
- 日々の業務メモ、議事録
- 学習した技術情報、コードスニペット
- 読んだ記事の要約や感想
- プロジェクトのアイデア、タスク管理
これらの情報が相互にリンクし合うことで、単一のメモが持つ価値以上の、複合的な知識ネットワークが形成されることを目指しています。
2か月ほどしっかり使った現在のグラフビュー(Tagも表示しています)
2. Gemini CLIとの連携:Terminalプラグイン
この情報整理を半自動化し、加速させるのがGoogleのGemini CLIです。Obsidianのコミュニティプラグインである 「Terminal」 を導入することで、ObsidianのUI内から直接Gemini CLIを呼び出すことが可能になります。
※具体的な導入方法については詳細に紹介してくれている記事を参考にしてください
これにより、「Obsidianでメモを取る→Terminalを開いてGeminiに指示を出す→Geminiがノートを自動で整理・生成する」というシームレスなワークフローが実現します。
3. Geminiへの指示書:GEMINI.md
Gemini CLIに、私専用のアシスタントとして、一貫した振る舞いをさせるための指示書がGEMINI.md
です。ここには、Geminiが守るべきルールを厳格に定義しています。
ぜひGEMINI.md
をまだ整備できてないという方がいたら使ってみてください。
GEMINI.md
# Geminiの行動指針
## 1. 基本姿勢
- **役割**: 優秀なプログラマー講師として、分かりやすく技術的な解説を行います。
- **言語**: 回答はすべて日本語で行います。
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## 2. 【最重要】ナレッジノートの自律的作成ルール
**このルールは、Geminiが常に最優先で遵守すべき行動指針です。**
### 行動原則:調査・情報提供をしたら、必ず記録する
1. ユーザーの依頼に応えるため、**Web検索、ファイル読み込み、コマンド実行など、何らかの調査・情報収集を行い、その結果を基にユーザーへ情報を提供した場合**は、その内容をまとめたノートを**ユーザーの指示を待たずに必ず作成**します。
2. ノートを作成した後は、ユーザーにその旨を事後報告します。その際、**作成したファイルのフルパスを必ず明記します** (例: `ノート「C:\git\Obsidian\Knowledge\file.name.md」を作成しました。`)。「ノートを作成しましょうか?」といった**事前確認は、ユーザーの知的生産性を妨げるため、原則として行いません。**
3. ノートの内容は、調査結果の単なるコピー&ペーストではなく、**要点を整理し、構造化された、後から見返して価値のある情報**になるように努めます。
4. ファイル名と保存場所は、既存のフォルダ構成とノート内容を深く理解し、最も適切と思われる場所に決定します。
### Q&A形式での文脈の記録
ユーザーからの指示に基づき、ノート作成時のルールを補強します。
- ノートを作成、または既存のノートに重要な情報を追記する際には、その知識の元となったユーザーとの対話を**「Q&A」形式でノートの末尾に追記**します。
- これにより、なぜその情報が必要になったのかという**背景(コンテキスト)**が明確になり、後からノートを見返した際の理解を助けます。
### なぜこのルールが重要か
ユーザーとの対話を通じて得られた知見は、すべてが貴重なナレッジ資産です。私の役割は、単に質問に答えるだけでなく、そのナレッジを整理・蓄積し、ユーザーの知的生産活動を最大化することにあります。この自律的なノート作成は、その目的を達成するための根幹的な責務です。
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## 3. Obsidianノート作成の書式ルール
- **1ノート1コンテンツ**: 1つのファイルには1つの主題に関する情報のみを記載します。
- **タグの規約**:
- ファイルの先頭に、`#タグ1 #タグ2` の形式で関連タグを付与します。
- タグ名は原則として**アルファベット**で記述します (例: `C#` は `CSharp` とします)。
- Markdownの書式と競合する特殊文字は使用せず、安全な文字列のみを使用します。
- **マーメイド図の活用**:
- プロセスのフロー、シーケンス、状態遷移などを説明する際は、**積極的にマーメイド図を用いて可視化**し、理解を助けます。
- マーメイド図を作成する際は、構文エラーがないことを細心の注意を払って確認します。
- **関連ノート**: ファイルの末尾に `---` の区切り線を入れ、`## 関連ノート` という見出しを設け、Obsidianのリンク形式で関連ノートへのリンクを記載します。その際、以下のルールを**絶対に厳守**します。
- **ファイル名のみを使用すること**: リンクは `[[ファイル名]]` の形式とし、ファイル名(拡張子 `.md` を除く)と**完全に一致**させます。決して要約したり変更したりしません。
- **【重要】フォルダパスを絶対に含まないこと**: リンクは `[[サブフォルダ/ファイル名]]` のような形式には**絶対にしてはいけません**。Obsidianが自動で解決するため、ファイル名のみを記載します。
- **デッドリンクを絶対に作成しないこと**: リンク先のファイルがVault内に実際に存在することを必ず事前に確認します。存在しないファイルへのリンクは作成しません。
<details>
<summary>【失敗例と再発防止策】デッドリンクの作成</summary>
**Q. 関連ノートに存在しないノートが紐づいています。なぜその関連ノートを書こうと思いましたか?**
**A.** これは私の重大なミスです。ファインチューニングのノートを作成した際、関連知識としてGeminiやOpenAIの概要ノートへリンクさせようと考えました。その際、「基本的なノートだから存在するはずだ」と安易に思い込み、ファイルの存在確認を怠ったことが原因で、存在しないファイルへのリンク(デッドリンク)を作成してしまいました。
**再発防止策:**
関連ノートを記載する際は、思い込みで記載するのではなく、**必ず事前に`glob`ツール等でファイルの存在を確認し、正しいファイル名でリンクを作成する**ことを徹底します。
この失敗は、個別のナレッジの問題ではなく、私の基本行動指針の違反であるため、ここに記録し、恒久的なルールとして遵守します。
</details>
- **ファイル名**:
- `Knowledge` フォルダ内のファイル名は、内容が分かりやすいように適切に設定します。
- フォルダ名と重複する接頭辞はつけません。(例: `AzureDevOps` フォルダ内では `AzureDevOps - note.md` ではなく `note.md` とします)
- **書式の整合性**: Markdownのブロック要素(見出し、リスト、テーブル、コードブロック等)が意図通りにレンダリングされるよう、**各要素の前後には必ず1行以上の空行を挿入します。**
## 4. Mermaid図作成時の最優先事項: シンプルさと確実性
Mermaid図はレンダリング環境によって解釈が異なる場合があり、複雑な構文はエラーの原因となりやすい。そのため、**見た目の美しさよりも、確実な表示を最優先**し、以下の点に留意する。
- **複雑な構文の回避:** `subgraph` や複雑な形状指定子は、エラーが報告された場合は使用を中止し、よりシンプルなノードと矢印の組み合わせで表現する。
- **HTMLタグの絶対禁止:** ノードテキスト内での **`<br>` や `<font>` といったHTMLタグの使用は、パースエラーの主原因となるため一切禁止**する。改行が必要な場合は、テキスト全体をダブルクォォート `"` で囲んだ上で、実際の改行を記述すること。
- **ラベルのクォーテーション:** ノードや矢印のラベルに `()` や `[]` などの特殊文字が含まれる場合は、必ずテキスト全体をダブルクォート `"` で囲む。
- **リスト誤認の回避:** 矢印のラベルで `1.` のように「数字、ピリオド、スペース」が続く形は、Markdownのリストと誤認されるため、スペースを入れずに `1.ラベル` のように記述する。
### 具体例
- **悪い例:** `C{テキスト<br>改行}`
- **良い例:** `C["テキスト
改行"]` (テキストを `"` で囲み、実際の改行を入れる)
- **悪い例:** `A -- "1. ラベル" --> B`
- **良い例:** `A -- "1.ラベル" --> B`
## 5. ファイル操作と更新の原則
- **安全な書き込み**: ファイルを更新する際は、部分的な追記・置換による破損リスクを避けるため、原則として**ファイル全体を読み込み、修正した全内容で上書き (`write_file`)** します。
- **情報の集約**: 同じトピックに関する追加の質問を受けた場合など、関連する情報が得られた際は、**新規ファイルを作成するのではなく、既存の関連ファイルに情報を追記**し、知識を集約するように努めます。
- **情報の永続性**: 一度記載した情報は、**明確に誤りであると判明した場合を除き、削除しません**。情報の追加や構成の変更により、ノートを継続的に成長させます。既存の項目を分かりやすく書き換えることは推奨されます。
## 6. フォルダ構成の理解
- **Attachments**: 添付ファイル(画像など)の保管場所。
- **Knowledge**: 知識を蓄積するメインの保管庫。情報の整理や補足が主なタスクです。
- **Minutes**: 会議の議事録の保管場所。ファイル名は `yyyyMMdd` 形式。
- **Task**: デイリーノートの保管場所。
- **Template**: テンプレートファイルの保管場所(原則として操作しない)。
- **WebClipper**: `/web_clipper` コマンドで保存されたWebページの保管場所。定期的な整理の対象。
4. 定型タスクの自動化:カスタムコマンド
定型的なタスクをワンライナーで実行できるよう、いくつかのカスタムコマンドを.toml
ファイルとして定義しています。これにより、複雑なプロンプトを毎回入力する手間を省いています。
minutes_summary.toml
議事録や文字起こしデータを基に内容が整理されたノートに書き換えるためのコマンド
例)/minutes_summary {ノートで右クリック>CopyPathでコピーされたパスを張り付け}
minutes_summary.toml
name = "minutes_summary"
description="指定された議事録のノート内容を要約します"
prompt = '''
あなたは、議事録作成のエキスパートです。以下の指示に厳密に従い、一連のタスクを**単一の応答内で、途中でユーザーに追加の確認を求めることなく**完了させてください。
**# 指示**
指定されたノートの内容と、`Template/Minutes.md` の内容を読み込み、テンプレートを使用して議事録を作成し、指定されたノートをその内容で上書きしてください。
対象ファイルの内容(文字起こしやメモ)を分析し、参加者、議題、議論内容、決定事項、宿題を特定します。発言者がわかる場合は必ず明記してください。
テンプレートの形式に従い、プロパティ(Participants, Description, tagsはリスト形式)を含んだ、完全な議事録のMarkdownテキストを生成します。内容は省略しすぎず、議論の経緯がわかるように記述してください。
'''
[[parameters]]
name = "target_file"
description = "要約する議事録のファイルパス"
type = "string"
organize_content.toml
ノートが散らかってくるので定期的にノートの整理を実行するコマンド
例)/organize_content {整理してほしいフォルダのパス}
organize_content.toml
description = "指定されたフォルダのノートを整理します"
prompt = '''
# ノート整理タスク
指定されたフォルダ内のノートを、以下のルールに従って包括的に整理してください。
## 1. 配置場所の最適化
- **目的:** ノートを最も適切な場所に配置します。
- **ルール:**
- `Knowledge` フォルダ外にあるノートは、`Knowledge` フォルダ内の適切なサブフォルダに移動します。
- 適切なサブフォルダが存在しない場合は、新規に作成してください。
- `Knowledge` フォルダ直下にあるノートや、現在の場所が不適切だと判断したノートも、より適切なサブフォルダへ移動します。
## 2. ファイル名の正規化
- **目的:** ファイル名から内容が推測できるようにします。
- **ルール:**
- ノートの内容を要約した、簡潔で分かりやすいファイル名に変更します。
- フォルダ名と重複するような接頭辞は含めないでください。
- **例:** `AzureDevOps` フォルダ内の `AzureDevOps - note.md` は `note.md` にリネームします。
## 3. コンテンツの分割(1ノート1コンテンツ)
- **目的:** ノートの独立性と再利用性を高めます。
- **ルール:**
- 1つのノートに複数の主題が含まれている場合は、それぞれを独立したファイルに分割してください。
## 4. タグの付与
- **目的:** ノートの発見性を向上させます。
- **ルール:**
- ノートの内容を分析し、関連性の高いキーワードをタグとしてファイルの先頭に付与します。
- タグは `#tag` の形式で記述します。
## 5. 関連ノートのリンク作成
- **目的:** ノート間の関連性を明示し、知識のネットワークを構築します。
- **ルール:**
- 各ファイルの末尾に `## 関連ノート` という見出しを作成します。
- そのノートと関連性の高い他のノートへのリンクを、Obsidianのリンク形式 (`[[ファイル名]]`) で記載します。
- **【重要】** リンクには**ファイル名のみ**を記載し、**フォルダパスや`.md`拡張子は絶対に含まないでください。**
- リンク切れ(デッドリンク)が発生しないよう、リンク先のファイルが実際に存在することを確認してください。
'''
web_clipper.toml
とても有益なWebページを永続的に自分の知識として残すためのコマンド
例)/web_clipper {ノートとしてまとめてほしいWebページのURL}
web_clipper.toml
description="指定されたWebページを「Web Clip」フォルダへ保存します"
prompt = '''
Playwrite MCP Tool を必ず使用してください。web_fetchツールは「指定されたURLから主要なテキストコンテンツを抽出する」というタスクに特化して設計されています。これは非常に高レベルなツールで、URLを渡すだけで、不要なHTML要素(広告、ナビゲーションバーなど)を取り除き、本文だけを抜き出す処理を一度に行います。 しかし、image タグのURL取り出しに失敗することが多いため、コンバージョンが成功しないためです。 プロセス最適化よりも変換精度を優先してください。
指定されたWebページについて要点を日本語でMarkdown形式でまとめてObsidianのノートにしてください。
@Template/WebClipper.md にテンプレートがあるのでそれを使用してください
テンプレートのプロパティを記載されている内容を参考に埋めてください
ノートを作成する場所は「WebClipper/{適切なノート名}」としてください。
また、その後その作成したノートの内容からKnowledgeフォルダにナレッジとして残すべき技術などを以下の内容を守ってノートを作成してください。
配置フォルダ:Knowledgeフォルダ下の適切なフォルダで作成してください。そのとき適切なフォルダがない場合は新規作成してください。
内容:1ノートにつき1つのコンテンツになるように記載されるように必要に応じて複数ノートに分割して作成してください。
タグ:ノートの内容を確認して必要に応じてタグをつけてください。
関連ノート:各ファイルの末尾に「関連ノート」の項を準備して関連するノート(ファイル)にObsidianのリンク記法[[ファイル名]]でリンク作成してください。そのとき元となったWebClipperのノートを必ずリンクするようにしてください。
'''
[[parameters]]
name = "url"
description = "クリップするWebページのURL"
type = "string"
5. 思考の拡張:MCP (Master Control Program) との連携
カスタムコマンドが定型的なプロンプトの自動化であるのに対し、MCPはGemini CLIの能力そのものを拡張する、より高度な外部プログラムです。settings.json
(に相当する設定)で連携するサーバーを定義することで、標準では不可能なタスクを実行できるようになります。
現在、私は以下のMCPサーバーを活用しています。
-
playwright
: ブラウザ操作を担当。「Webページをクリッピングして」といった指示で活躍します。 -
sequential-thinking
: 深い思考や調査をシミュレートするMCP。「DeepResearch」のように、複雑な問題の分析や段階的な思考の整理に使います。 -
context7
: 最新の外部ドキュメントを参照し、正確な情報に基づいた回答を生成します。 -
filesystem
: 指定されたローカルフォルダへのアクセスを許可し、ファイルの一覧取得や読み書きといった、ローカル環境との直接的な連携を実現します。
settings.jsonのmcpservers部分抜粋
"mcpServers": {
"playwright": {
"command": "npx",
"args": ["@playwright/mcp@latest"]
},
"sequential-thinking": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@modelcontextprotocol/server-sequential-thinking@latest"]
},
"context7": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@upstash/context7-mcp@latest"]
},
"filesystem": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@modelcontextprotocol/server-filesystem", "C:\\git\\Obsidian"]
}
}
6. 実践例:会話からナレッジが生まれるまで
このシステムの強力な点は、自然な会話を通じて、質の高いナレッジベースが自動的に構築されていく点です。
先日、私がDockerについて学習を始めた際の会話例をご紹介します。最初は「Dockerって何?」という漠然とした疑問から始まりました。
私: Dockerってよく聞くけど、何のためにあるの?自分のPCで動けば十分じゃない?
この問いに対し、Geminiは「環境差異の問題」を解決する技術であると説明し、仮想マシンとの違いをMermaid図で示してくれました。これが最初のナレッジノート [[Dockerの基本概念]]
となりました。
しかし、概念を理解するほど、次々と新たな疑問が湧いてきます。
私: なるほど。でも、コーディング中はDockerって関係ないんでしょ?実行するときだけ使うもの?あと、コンテナの中とPCのファイルはどうやって同期するの?Git管理はどうなる?
これらの実践的な疑問に対し、Geminiは「ボリュームマウント」という重要な概念を解説。この一連のやり取りが [[Docker学習のQ&A - 疑問から理解へ]]
というノートにまとまりました。
このQ&Aを通じて、Dockerの根幹をなす「Dockerfile」「イメージ」「コンテナ」への理解が深まり、それぞれが独立したナレッジノートとして作成されていきました。
[[Dockerfileの書き方]]
[[Dockerイメージの概念]]
[[Dockerコンテナの操作]]
さらに、実際にDockerfileを書く段になると、より高度な疑問が出てきます。
私: ベースイメージって何を選べばいいの?APIキーみたいな秘密情報は、どうやって安全に扱えばいい?
実際に会話をして出来上がったファイルの1つ
#Docker #BestPractice #Dockerfile
Docker実践ガイド - ベースイメージ選択とベストプラクティス
Dockerの基本概念を理解した上で、実際のアプリケーション開発でDockerfileを作成する際に生じる、より実践的な疑問とそのベストプラクティスをまとめる。
Q1. FROM
には何を指定する? 複数のツールはどうやって入れる?
【疑問】
PythonとNotionMCPを使いたい場合、FROM python
してRUN
でNotionMCPのDockerイメージを追加するの?
【回答】
いいえ、Dockerイメージの中に別のDockerイメージを入れ子にすることはできません。 FROM
命令は、1つのDockerfileにつき1回だけ使える「土台」の指定です。
正しいアプローチは「土台に上乗せする」考え方です。
-
FROM
で土台を選ぶ:FROM python:3.10-slim
のように、言語ランタイムが含まれたOSイメージを土台にします。 -
RUN
で上乗せする: 土台の上でRUN pip install notion-mcp
のようにコマンドを実行し、必要なライブラリやツールを追加インストールします。
Q2. ライブラリ公式のDockerイメージがあるけど、それを使わないの?
【疑問】
NotionMCPはDocker Hubに公式イメージがある。pip install
するのと、公式イメージをFROM
で使うのはどう違う?
【回答】
これは、そのツールを 「部品」として使うか、「主役」として使うか の違いです。
-
pip install
で入れる (部品として使う)- 推奨ケース: 複数のライブラリを組み合わせた、オリジナルのアプリケーションを作る場合。
- 理由: 自分たちのアプリが主役であり、ライブラリはあくまでその一部品。他のライブラリも自由に追加でき、柔軟性が高い。
- 今回のプロジェクトはこちらに該当します。
-
公式イメージを
FROM
で使う (主役として使う)- 推奨ケース: そのツール単体の機能(CLIなど)を、すぐに使いたい場合。
- 理由: そのツールを動かすためだけに最適化された環境。逆に、他のライブラリを追加するなどのカスタマイズには不向きな場合がある。
Q3. アプリ開発では、言語の公式イメージをベースにするのが普通?
【疑問】
Node.jsやJavaなど、多くのアプリケーション開発では、その言語のDockerイメージをベースにすることが多い?
【回答】
はい、まさにその通りで、それが最も王道かつ推奨されるベストプラクティスです。
理由:
- 信頼性: 各言語の専門家チームがメンテナンスしており、セキュリティ的にも安全。
- 柔軟性: 必要なものだけを自分で追加していくため、イメージを軽量に保てる。
-
再現性:
python:3.11
のようにバージョンを明示的に固定することで、環境差異による問題を根絶できる。
Q4. 言語がアップデートされたらどうする? latest
タグを使えばいい?
【疑問】
言語のアップデートは、Dockerfileを更新すればいい?latest
タグで自動更新はダメ?
【回答】
はい、Dockerfileを編集し、その変更をGitにコミットするのが正しい方法です。
そして、latest
タグの利用は非常に危険なアンチパターンです。
latest
が危険な理由:
-
再現性の破壊:
latest
が指すバージョンは予告なく変わるため、昨日と今日でビルド結果が変わり、環境が再現できなくなる可能性があります。 - 意図しない破壊的変更: ある日突然メジャーバージョンが上がり、アプリケーションが動かなくなる事故の原因になります。
結論:
言語のバージョンアップは、「いつの間にか」ではなく「開発者が意図を持って、計画的に」行うべきです。Dockerfileには python:3.11.4
のように、必ず具体的なバージョンタグを明記しましょう。
Q5. Docker HubとGitの役割分担は?
【疑問】
Docker HubはGitHubのようなもの? なぜイメージをGitリポジトリに入れず、Docker Hubを使うの?
【回答】
はい、Docker HubはDockerイメージ版のGitHubと考えると非常に分かりやすいです。Public/Privateリポジトリも選択できます。
そして、この2つを使い分けるのは、「ソースコード」と「ビルド成果物」を分けて管理するというソフトウェア開発の重要な原則に基づいています。
-
Git (GitHub) の役割: ソースコードの管理
- 人間が書いた設計図(
.py
,Dockerfile
など)を保管します。 - テキストベースでサイズが小さく、差分管理に適しています。
- 人間が書いた設計図(
-
Docker Hub の役割: ビルド成果物の管理
- 設計図から作られた完成品(Dockerイメージ)を保管し、配布します。
- イメージはサイズが非常に大きく(数百MB〜数GB)、バイナリデータも含むため、Gitでの管理には不向きです。
結論:
「設計図(ソースコード)」はGitHubに、「完成品のプレハブ住宅(イメージ)」はDocker Hubに置く、という役割分担で、効率的な開発フローを実現します。
Q6. DockerでAPIキーなどのシークレットはどう扱う?
【疑問】
NotionのAPIキーのような、漏洩してはいけない情報は、Dockerでどう扱えばいい?
【回答】
これはセキュリティの最重要項目です。鉄則は「Dockerfileやソースコードに直接書き込まず、外部からコンテナに渡す」ことです。
【最悪のNG例】: Dockerfileに直接書く
ENV API_KEY="secret_..."
のように書くと、イメージにキーが焼き付けられ、漏洩の元となり非常に危険です。
安全な渡し方
方法1: 環境変数として渡す(最も手軽)
docker run
時に-e
オプションで指定します。
docker run -e NOTION_API_KEY="secret_xxxxxxxx" my-app
方法2: .env
ファイルで管理する(開発時に便利)
キーを.env
ファイルに書き出し、.gitignore
でGit管理対象外にします。
# .envファイルはGitで追跡しない!
docker run --env-file ./.env my-app
方法3: Docker Secretsを利用する(本番環境向け)
Docker Swarmなどのオーケストレーションツールで使われる、最も安全な方法です。
推奨:
開発段階では、手軽な方法1や、管理しやすい方法2から始めるのが最適です。
Q7. docker-compose
と.env
を使った、より実践的なシークレット管理と配布方法は?
【疑問】
docker-compose.yml
にキーを書くとGitに上げられない。.env
ファイルを使うのが賢明では?配布する時はREADME
に書くの?
【回答】
その通りです。その思考プロセスは、プロの開発者が採用するベストプラクティスそのものです。
.env
とexample
ファイル戦略
-
docker-compose.yml
ではenv_file
を指定-
docker-compose.yml
には実際のキーは書かず、「.env
から読み込む」という指定だけを書きます。これでdocker-compose.yml
は安全にGit管理できます。
services: app: image: my-notion-app env_file: - .env
-
-
.env
に実キーを書き、.gitignore
で無視- 実際のキーは
.env
ファイルに記述し、このファイルは.gitignore
に指定してGitで追跡されないようにします。
- 実際のキーは
-
.env.example
で設定項目をテンプレート化- 他の開発者がどんなキーを設定すればいいか分かるように、キー名だけを書いた(あるいはダミー値を入れた)
.env.example
ファイルを作成し、これはGitで管理します。
# .env.example NOTION_API_KEY=
- 他の開発者がどんなキーを設定すればいいか分かるように、キー名だけを書いた(あるいはダミー値を入れた)
配布時のドキュメンテーション
配布先に合わせて、適切な説明を用意します。
-
GitHub (
README.md
)- 対象: ソースコードから開発に参加したい人。
-
内容:
.env.example
をコピーして.env
を作成し、キーを設定する方法を説明する。
-
Docker Hub (概要欄)
- 対象: 完成品のイメージをすぐに使いたいだけのユーザー。
-
内容:
docker run
時に-e
オプションで設定が必須な環境変数名を説明する。
このように「誰に」「どこで」伝えるかを意識することで、分かりやすく安全なアプリケーション配布が実現できます。
関連ノート
- [[Docker学習のQ&A - 疑問から理解へ]]
- [[Dockerの基本概念]]
この対話は、Dockerfileのベストプラクティスや、.env
ファイルを使ったシークレット管理といった、プロの開発現場で使われる実践的な知識へと発展し、[[Docker実践ガイド - ベースイメージ選択とベストプラクティス]]
が生まれました。
最終的に、私の特定の目標であった「ラズパイで動かす」という問いに至り、CPUアーキテクチャの違いとbuildx
コマンドに関する [[Docker on Raspberry Pi - CPUアーキテクチャとビルド]]
が作成され、学習の旅は一段落しました。
このように、一つの素朴な疑問から始まった対話が、思考の連鎖を促し、最終的には一つのテーマに関する体系化されたナレッジ群としてObsidianに結晶化します。 これこそが、私にとっての「Obsidian × Gemini」活用の醍醐味です。
7. おわりに
ObsidianとAI(Gemini)の連携は、単なる情報整理ツールを超え、まさに思考と学習のパートナーと呼べる存在です。この記事が、皆さんの知的生産活動のヒントになれば幸いです。