ネットワーク測定の実験装置の作成と評価
吉川直邦! 伊藤正樹! 斉藤直希!! 小川清!!
!大同工業大学 !!名古屋市工業研究所
情報処理学会第65回全国大会
Design, Implementation and Review on Network Measurement System for end user
Yoshikawa Naokuni, Ito Masaki! Saito Naoki, Ogawa Kiyoshi!!
! Daido Institute of Technology !! Nagoya Municipal Industrial Research Institute
はじめに
インタネットの普及と料金が安価になり、ブロードバンドネットワークによるインタネットの常時接続が家庭でも容易に出来るようになっている。企業ではインタネットの特性を生かし、複数の常時接続を生かすことが必要になっている。企業より家庭の方が速いという逆転現象も生じている。
移動先においては、携帯電話、無線LAN スポット、公衆電話、ネットカフェをはじめ、さまざまな選択肢が増えてきている。これらのどのネットワークを利用し、あるいは、どのネットワークを経由することにより、コストパフォーマンスのよいネットワークが構築できるかを考えることができる。
1 研究の目的
ネットワークを選択のするための測定、測定システムの要件とネットワーク利用時における速度に影響を与える項目の確認をする。端末間(End-to-End)の最適化、網の最適化とそれぞれの最適化のための測定の混在時における課題を検討する。
2 検討事項
測定すべき検討事項に何があるかを検討した。
2.1 通信場所
自宅、下宿先、大学、研究所、友人の家、旅先のように、通信したい場所の種類によって、利用したいサービスが異なる場合がある。海外の場合には、通信事情、サービスの事情、法律、言語、文化上の課題がある。
2.2 利用するサービス
利用するサービスとして、電子メール(SMTP)、WEB(HTTP)、ファイル転送(FTP),遠隔操作(SSH, Telnet) 、ping ,tracerout(ICPM)を利用する測定。
2.3 通信媒体(速度)
使用目的によっては速度を必要とすることもあり、様々な種類のネットワークの媒体、対応機器を検討対象とした。
- アナログ公衆電話網(300bps-56kbps)
- PHS(32kbps-128kbps)
- 携帯電話(32kbps-384kbps)
- ISDN(64kbps-128kbps)
- Bluetooth(433.9kbps-723.2kbps)
- CATV(128kbps-12Mbps)
- IEEE802.11b(2Mbps-11Mbps)
- ADSL(1.5Mbps-12Mbps)
- 光(10Mbps-1Gbps)
2.4 受信側の通信機器の種別によって、実効速
度が変化することが。
- CPU
CPU の処理速度により、利用可能なサービス、速度に制約ができる。8bitCPU, 16bit CPU,32bit CPU とクロック。 - HDD
HDD の処理速度により、サービスの速度が変わるかどうか。 - Memory(MB)
機器の主記憶装置の大きさにより、利用できるサービスに制約ができることがある。 - OS
OS のインタネット対応の程度により、速度、利用できるサービスが異なる。携帯電話のOS、PDAのOS、PC のOS、ゲーム機・家庭電化製品のOSの違いによるサービス、速度の違いを網羅する。
2.5 測定目的
- 何時空いているかが分かると、その時間帯を利用して大量のデータ送受信を行うと効率的な送受信が実現する。
- メールがすぐに来たり、なかなか来なかったりすることがないよう、どのサービス、どの経路で、どういうメールを出すと速いか測っておく。
- 2つのネットワークサービスが利用可能な状況で、どちらのサービスを利用するとよいかを選択する。経路上に、サービス制限、帯域制限をしているサービスの有無を確認し、選択する。
- 特定のサービスが中断しないようにするにはどうしたらよいかを調べる。下層のサービスが中断しても、上層のサービスが継続できるようなプロトコルを開発するための要件を明確にする。
- 端末間を測定した場合は、速い経路が選択でき、測定していない人は選択できない方法が、網側でも最適化をしている場合に実用化できるかどうかを検討するために、Mobile IP の経路選択方式を利用して検討する。
3 実験装置
場所、サービス、装置の組み合わせにより、CPU、HDD、メモリ、OS の状況を変えて、測定しながら、測定方法を検討している。
3.1 通信媒体、サービス、場所
各通信媒体の先に、サーバを立てて、主なサービスを提供可能にする。物理的な距離は近くても、ネットワーク上の論理的な距離が遠い場所を設定する。無線については、通信機器との距離を変化させながら測定する。
3.2 CPU,メモリ、HDD、OS
通信端末のCPU,メモリ、HDD、OS を変更した場合の利用可能なサービスを調べ、通信速度の変化を測定した。
HDD では、残り空き容量、空き容量の連続性により、FTP で倍違うことが確認できたため、どのようにこの状況を再現するかを検討した。OS、ディスクの形式によっては、再現が困難な場合がある。
OS では、携帯電話、PHS、Palm OS, Microsoft Windows 各種、Linux, BSD, Mac OS の機器を配置したが、対応できる通信媒体に制約があるものがある。
測定用の道具としてすでに開発されている機器、ソフトウェアには、OS、通信媒体、通信規約を特定しているものがある。また、一方向のみ測定できる場合には、測定可能な方法から推測することが必要になる場合がある。
3.3 機器、ソフトウェアの配置
実際に測定してみると、予想していない状態が確認できるため、新たな測定方法を検討する必要があることが分かる。
網側が設定を変更したり、自動的に最適化を測る方法を取っている場合で、情報提供をしていない場合は予測がつかない場合もある。
4 測定方法
4.1 時間帯
1日のうちの時間帯、1週間における曜日、1月における変動、1年における変動を確認するため、常時測定する。
4.2 同一測定繰り返し回数
同一時間帯に3度測定し、最大、最小、平均を計算する。
4.3 測定データの大きさ
サービスの種類により、大、中、小の3種類を測定する。
4.4 上りと下り
上り、下りの片側方向のサービスの場合でも、逆方向を測定することを検討した。
4.5 測定専用のパケットの利用と、通常通信用
データの利用測定用のパケットを送らないと測定できない場合と、通常の通信で測定できる事項とを分類した。
4.6 測定自体による影響
頻繁な測定は、全体の通信量に影響を与えるため、測定用のパケットを送る場合には、直近のネットワークにおける負荷の割合を測定し、測定自体の影響を推測した。
4.7 特定のシナリオに基づく測定
下宿先から大学に寄り、その後研究所へ行く過程において大学、研究所のどちらにいても電子メールを読み、自宅からFTP で宿題をUP してそのどちらでも内容が利用できるようにする場合と、遠方に旅行に出かける際に、宿題を持っていく場合とで、測定方法を検討した。
5 まとめ
日々、新しい通信機器、新しいサービスが提供されているため、一度測定したものの有効期間は長くは無い。網側が提供する負荷分散機能、経路最適化への調整が必要となる。サービスによっては公開されていない情報があり、すべてを測定できない場合もある。
参考文献
[1] 移動体通信規約のための通信シミュレーションの設計, 阪智貴,西村泰行,小川清,渡辺尚,情報処理学会全国大会2001-3
[2] プライベートアドレスを3階層利用することによる大規模アドレス空間と移動、小川 清,澤井新,飯田登,渡辺尚,情報処理学会Mobile 研究会, 2002-5
[3] 場合分けによるMobile IP 経路最適化における一方式, 小川清,澤井新,飯田登,渡辺尚, 情報処理学会Mobile 研究会, 2001-8