博士論文に限らず、学術論文は、再現実験は基本的な作業である。
実施主体(第一者)が行う場合もあれば、第二者(契約相手)が行う場合もあれば、第三者(公的機関)が行う場合もある。
公的な研究費の場合には、公的機関が行う再現実験は、第二者によるものと分類することができる。
博士論文 端末間経路選択のための片方向遅延差測定方式
端末間とは、End to End。今流行りのE2Eというやつです。
経路選択とは、複数の経路がある場合のどちらを選ぶかを決めることができる場合を指します。
測定するためには、通信を行わないと結果がすぐには得られません。能動測定になります。
片方向遅延差とは、上りと下りの通信路の混雑状況や、帯域幅が違う場合に、それぞれの片方向の遅延に差があるかもしえrないことを前提としています。
実際には、各端末等は時刻同期していない場合を想定します。
遅延に差がある場合の時刻同期は、NTP(network time protocol)などの測定方法では必ずしも有効に同定できるとは限らず、かつ、時刻同期に必要な時間を消費する場合には、遅延よりも通信の利益を損なう可能性があります。
品質
次の指標は、必ずしもそれぞれが独立しているわけではありません。
それぞれを数値化して、横顔(profile)として眺めることにより、最終的な経路を選択しようという考え方です。
そのため、どこかに、なにか不正なデータがあろうがなかろうがかまわないかもしれません。
不正なデータ自体が、誤りなのかもしれないし、故障なのかもしれません。
測定の誤差評価が大切かもしれません。
Availability(可用性)
時刻同期に時間がかかるのであれば、可用性を損なうかもしれません。
Bandwidth(帯域幅)
PHS、GPSなどの無線通信では、登りと下りで、帯域幅が違うことがあります。無線通信では放送(broad cast)が機能的で、同時に大量の情報をあちこちにばらまくことが可能かもしれません。
Cost(費用)
どんなに便利に大量の情報を転送できたとしても、お金が莫大にかかるのでは実用的には嬉しくありません。
Delay(遅延)
なるべくすぐ欲しい。今欲しいというのが伝言です。遅いことは誰でもできるってことになるかもしれません。
Error(誤り)
お知らせに間違いがあるかもしれない場合には、誤り訂正符号をつけて、再計算してから利用するかもしれません。時間(遅延)と電力(費用)がかかります。
Fault/Failure(故障)
ハードウェアなどが故障したら、送受信ができないことがあるかもしれません。
Geometric Distance(地理的距離)
地理的距離が遠ければ、選択可能な経路数は減るかもしれませんし、物理的な遅延は大きくなるかもしれません。
Hop Count(経路数)
たどりつくまでに、いくつの機器を経由するかで、遅延も費用も、誤りも故障も増えるかもしれません。
測定方法
実験ではphsで測定しました。
博士論文を提出する頃には、phsは低下傾向が見えてきていて、
それ以外の方法で実験したかを聞かれると思い、
論文審査会の前日に大学に泊まり込み、gpsで遅延測定をしました。
gpsの機器は買ったばっかりで、その日初めてプログラムするものでした。
1時間か、2時間か、経ったころ、測定ができはじめ、
phsで測定し現象と同じ傾向のデータが取得できました。
過去の実際の遅延測定では、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジア、アフリカ大陸、オーストラリアの合計25カ国くらいと、日本との間の複数の経路での遅延測定をしていました。
時代時代で、有線の方が速かったり、無線の方が速かったりいろいろあったために論文として整理しようとしてきたものです。
今回は、第一者による再現実験の概要報告でした。
35年間、公的試験研究機関での測定としては、ほとんど追試(再現試験のこと)ばかりでした。
自分の実験の追試(再現試験)も、自分でできたことはよかったと思います。
実験によっては、高価な機材が必要であったり、長い年月が必要な場合もあります。
研究の第一歩は、追試(再現試験)からというのをお薦めしてみます。