はじめに
ウェブアプリを作成する上で、色の使い方って重要ですよね。
特に心理学の観点から色がユーザにもたらす効果を理解することは重要だと思います。
そこで、今回は2015年に発表された論文「Red Color and Risk-Taking Behavior in Online Environments」に基づいて、色、特に赤色がユーザにどのような影響を与えるかを考察していきます!!
こちらの論文はオンライン環境における赤色がリスクテイキング行動に与える影響について調査したものです。
※リスクテイキング行動:成功する可能性と失敗する可能性がある状況で、リスク(危険)を伴う選択や行動を選ぶこと。
論文
- タイトル
Red Color and Risk-Taking Behavior in Online Environments - 著者
Timo Gnambs、Markus Appel、Aileen Oeberst - 投稿場所
PLOS ONE (2015)
赤色の特徴
色彩心理学の研究によると、色は単なる視覚的な情報だけでなく、ユーザーの心理的な反応を引き起こす力を持っているそうです。その中でも、赤色は危険や警告を連想させる色として認識されています。
普段の生活の中でも、信号機の「止まれ」や電車内での緊急停止ボタン、レッドカードなど「赤」が使われている場面は危険や警告を表していることがわかりますよね。
赤色がリスク回避行動を促す理由
この論文では、赤色がリスクテイキング行動にどのように影響を与えるかを、2つの実験を通じて明らかにしています。
実験1
実験1では、赤色が危険信号として作用し、参加者がリスクの少ない選択肢を選ぶようになるかどうかを検討しました。
- 方法
参加者に異なるリスクを持つ2つの選択肢を提示し、どちらかを選ぶタスクを与える。 - 結果
赤色が表示された場合に、よりリスクの少ない選択肢を選ぶ傾向が見られた。
実験2
実験2では、実際の行動を伴うリスクテイキング行動において、赤色がどのような影響を与えるかを検討しました。
- 方法
バルーンアナログリスクタスク(BART)と呼ばれる競争的なゲームを使用し、赤色が実際のリスクテイキング行動にどのように影響するかを調査。このゲームでは、参加者はバルーンを膨らませてポイントを獲得するが、バルーンが破裂するリスクも増加する。 - 結果
赤色のバルーンでは、参加者はバルーンを過度に膨らませることが少なく、バルーンが破裂する頻度が低くなる傾向が見られた。
まとめ
2つの実験の結果から、赤色がユーザーに対して潜在的なリスクを強調し、より慎重な行動を促す効果を持つことが示されました。
オンラインバンキングなどセキュリティ関連の決定が求められる場面などでは、赤色を効果的に使うことで、ユーザーが慎重に行動するよう誘導できるかもしれません。
論文を読んでみて
ウェブアプリ開発における色の選択の重要性
実際に見てみるとそれぞれの色から受ける印象が違うことがわかると思います。
ウェブアプリのデザインにおいて、色は単なる視覚的な要素以上の意味を持つことを改めて理解しました。ユーザーの注意を引く、誘導する、または感情的な反応を引き出すために、適切な色を配置させたデザインを心がけていきたいです。
終わりに
今回は、ウェブアプリを作成する際の、赤色の効果的な利用方法について学ぶことができました。
みなさんもデザインをする際は、色の持つ心理的な効果を意識してみてはいかがでしょうか。
私も今後、それぞれの色がユーザに与える心理的な影響について調査を続けて、シリーズ化していくつもりです。
それでは皆さん、次回の【この色どんな効果?】シリーズでお会いしましょう!!
参考文献
この記事は以下を参考にして執筆しました。
-
T. Gnambs et al.,Red color and risk-taking behavior in online environments,
PloS One (2015), https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0134033 -
スタディラボ.「なぜ人は危険な行動を選択するのか? 【リスクテイキング行動】の研究が目指す安全な社会」.2022-12-12, https://studyu.jp/feature/theme/risk-taking/ ,(参照 2024-8-26).