Geoテックの隆盛は感じつつも
GeoテックというとポケモンGOなどの位置情報ゲームの隆盛を思い浮かべる人も多いと思う。ただでも、GeoLocationAPIはブラウザで自由に使えるのに今ひとつパットしない、QIITAのタグでもほぼ見ないのか、ポケGOの勢いからすると、筆者には不思議だった。
さて今回、筆者はあえて音声ARを調べてみた。これは単に私がふだんポッドキャストで音声配信をしているから、というだけなので、そこはそっとスルーしてほしい。
ソニーのLocatoneが頭一つ飛び抜けている感じなので、いろいろとリサーチしてみて、さらにいろいろと調べつつ、思うところも出てきたので、つらつらとまとめてみた。GeoLocationに興味のある人は読んでみてほしい。
ソニーのLocatoneの概要
ソニーのLocatoneはアプリにツアー検索がないため、チャンネル>ツアー、という親子関係やおすすめを辿ってツアーを探す仕様。
ツアーは審査制で制作ツールも問い合わせレベルのクローズなため、東京国際工科専門職大学、名古屋国際工科専門職大学、大正大学など、教育機関と連携し、定期的なツアーのリリースを実現している。
ただ、完成したツアーも審査制なので、他の一般的なプラットフォームのように、新作がボンボンでてくるわけではない。
エックス(旧Twitter)で探すときは、Locatone で探すと、いくつか見つかる。現状では、ラブライブのAR撮影画像が多く見つかる。Google検索で探すときは、https://www.locatone.sony.net/ch/〇〇 のURLを探す。
とりあえず試してみたい、という人は2022年に渋谷を舞台にしたコンテストをやっていて、ノミネート作品というクォリティの高いツアーが無料で遊べるため、おすすめ。ただ、概要欄に「スタート地点が明示されていない」ため、どれから始めるかは都度詳細ページで確認する。
Locatoneの人気ツアーを探す
2024年1月14日時点での数値。公開日が書いていないため、先に出てたほうが数字的には有利。ただ、2022年のコンテストが行われていた当初の熱のある頃と今はまた違うと思うのであくまで参考程度。また、公開終了も多いのであくまで参考値。印象としては、学生が作ったものでも、テーマと企画が刺さるとまわっているな、と感じた。※順不同
- Locatone Tours 1.3万回
- 鬼滅の刃 湯めぐりの旅「湯河原」 3347回 40分 神奈川県湯河原温泉 2500コイン
- 東京国際工科専門職大学「Groovy Strolls」 17回 30分 北新宿四丁目 無料
- 愛媛ナイトウォーク「迂回ラジオ」 1322回 40分 愛媛県大洲市肱南地区周辺
- ムーミンバレーパーク「サウンドウォーク~ストーリーの扉~」 45分 7490回 埼玉県 飯能市 1000コイン
- 豊田市「WRC豊田市山間部編」 60分 16回 無料
- 人吉球磨xレヱル・ロマネスク観光ガイドツアー 8時間 765回 無料
- 大正大学「くノ一戦隊~巣鴨の街を取り戻せ」 3時間 153回 無料
- 水木しげるロード30周年企画「目玉おやじと行く夜の妖怪ぶらり旅」 40分 3848回 500コイン
- 東京国際工科専門職大学「恋愛さーきゅれーしょん」 30分 61回 無料
- 東京国際工科専門職大学「トワイライトパーク」 10分 73回 無料
- 東京国際工科専門職大学「えこみんを探せ!ゴミ拾いアクション」 60分 4634回 無料
- 東京国際工科専門職大学「ねこさんぽ」 30分 106回 無料
- 名古屋国際工科専門職大学「コスプレイヤーとデートしたい!」 30分 35回 無料
- 名古屋国際工科専門職大学「テレパシー版と」 60分 58回 無料
- 沖縄県うるま市周遊「うるまわる」 120分 104回 無料
- クマレコ「くまもと街歩き 小春日和」 20分 40回 無料
- SOJA-SOUNDベンチャー「はにお&古墳王子とめぐる古代吉備王国古墳ミステリーツアー」 6時間 208回 無料
- しろのおと姫路城下町歩き「しろのおと姫路城下町歩き」 50分 279回 無料
- WALK AROUND MIRAI「日本語WALK AROUND MIRAI」 60分 1667回 無料
- Locatone Creator Contest 2022「水を感じる。皮の息吹を聴く街歩き」 60分 562回 無料
- Locatone Creator Contest 2022「異世界のヘリオン」 60分 673回 無料
- 009 inc「迷いの森のグレーテル@東京日比谷公園」 40分 192回 無料
- 方南町お化け屋敷オバケン「せんじゅさま@名古屋ホラーサウンドツアー」 60分 180回 無料
- XTALES SHIBUYA「渋谷もののけスクランブル」 3時間 3571回 無料
- 東京カメラ部「梶裕貴・カメラと旅する岐阜市」 977回 無料
- CHICHIBU-SOUNDベンチャー「茅野愛衣・旅するかやのみちちぶ乾杯共和国なび」 4時間 879回 無料
- JR東海xラブライブ!サンシャイン!!「Aqoursのふるさと沼津めぐり」 2時間 6983回 無料
音声ARを広めるには
思った以上に盛り上がってるとはいえない音声AR。どれくらい広まっていないのか、というと以下のような感じだ。
ポッドキャスト検索で、音声ARだけを取り上げたエピソードがゼロ。
Google検索でヒットするのはプレスリリースや企業サイトのみ。
個人ブログなどは皆無。
エックス(旧Twitter)では、ソニーのLocatoneや、エーベックスのSARFなどのイベント関連の投稿がちらほら。
Googleトレンドでも調べてみる。比較のための「AR」を入れると、もうほぼゼロなGoogleトレンド。海外であまり聴かないのもちょっと頷けてしまう。
ちなみに、現状調べうる範囲でわかっているプラットフォームはこれだけある。観光省も観光DXとは言っているものの、音声ARだけではないので、事例としてはわずか。
- ロケトーン(ソニー)
- サーフ(エイベックス)
- ロードボイス(ホンダ)
- スバロード(スバル)
- イヤウィゴー(博報堂)
- ラジホ(TBSラジオ)
- エモリップ(J&J※JTBとJCB共同出資)
- ボトリー(中京テレビ)
- ウォークダブリューミュージック(バスキュール)
- バスキュールと協業でスクラッチ(電通)
- おもてなしガイド for BIZ(ヤマハ)
- Aero(アドビ)※ARアプリっぽいがGPSもいけるみたい
- ルービック(ルービック)
- オーリス(ガタリ)
- ヒントナビAR(広島工業大学)
- マップエンジン(ジオマーク)
- 観光音声メタバースコンソーシアム(ソニー・ロケトーン/観光庁)
- DX推進による観光・地域経済活性化実証事業(国土交通省・観光庁)
- アレクサ ※音声ARではないが(アマゾン)
2023年末の新たな動き
そういう点では、エーベックスのSARFが2023年末に、いち早く有料対応を決めたことを、私は評価したい。
音声に限らず、ユーザーがあまり集まらない市場の場合、まずデベロッパーから課金するというのがセオリーだ。そういう点で、完全にオープンではないものの、SARFはマーケティングしようという意志を感じる。市場そのものが無いまったく新しいジャンルでは、クローズにして成功した事例はまず聴いたことがない。他のプラットフォームはどのように広げていくのか、気になるところだ。
そういう意味で、わたしは音声ARは、なくならないまでも細々続いていくと見ている。何と言っても楽しいし、位置情報というのは無くならないから。なので、私がオープンで進めているOpenSpotAR、少しでも興味ある人は、どんどん使ってほしい。
位置情報は、ブラウザからJavaScriptという、スクリプトレベルの実装で簡単に取得でき扱える。精度は、スマホに依存し屋根があるかどうかに左右される。おそらくそれはGPSを使う限りは、どのプラットフォームでも宿命的に避けられないはずだ。なので、じっくりと取り組みたいという人は、好きにいじってほしい。
JavaScriptでGeoLocationAPIを使っているだけの、まだ稚拙なツールだ。ただ、精度を調べたり、Plus Codesを変換したりと、いろいろといじれると思う。
Geoテックの不安定さ
さて、ここまで来ると、メタバースのセカンドライフや、ARで一斉を風靡した世界カメラを思い出す人もいると思う。前者は、メタバース空間での土地投機という世界的なバブルを引き起こし、一定数の利用者もいたが盛り上がりは収束していった(今もあるはあるぞ)。いっぽうセカイカメラはというと・・・。
世界ではなんと当時300万ダウンロードまでいったのか。すごいな。たしかに当時、時代の寵児のように各所でとりあげられていたな。
記事に書かれていることに概ね同意。現在の音声ARもそのまま当てはまるような気がする。
・繁華街でスマホをかざすことの不自然さ
・現実空間とエアタグの「情報の整理」ができず、AR空間が混沌とした
・毎日使う必要がない
とくに、2番目はリスクとしても世間的にはネガティブな印象を拭えないようにも思う。
地域というリアルの空間に、ネットというリソースを使い、あーだこーだ落書き出来てしまうのが、Geoテックだ。そういう点で地域の口コミ情報が集まるGoogleマップはそのリスクの洗礼を受けている。
Googleマップ上の店舗情報に批判や非難のメッセージが口コミの形で投稿されることも珍しくなくなってきました。中には嫌がらせや、営業妨害ともとれるようなメッセージが書き込まれるケースもあります。
こうした口コミは社会正義になるときもあれば、ときとして荒らしのかっこうのターゲットになりがちだ。そういう点で、前述の音声ARのデベロッパーが制作プラットフォームをオープンにしない、ツアーを期間限定にする、ことは賢明だと思う。リソースにコストもかかるし、リスク管理もしなければならないからだ。
あとは、企業レベルでいえば、今はAIについていかないとヤバい、という業界の雰囲気もあるから、目新しくもない、どうせ位置ゲーでしょ、といったGeoテックには体重をかけられない、というのは理解する。
というわけで、企業も、海外も、世間的にも、ブレイクしそうにはない音声AR。それでも位置情報の価値は変わることはないだろうから、むしろそっとしておいてくれたほうが、じっくり取り組めるというところで、今後もOpenSpotARをほそぼそとアップデートしていこうと思う。アマゾンとかで調べると、ほんと歴史ある技術が積み上がっていることがわかると思う。
そして、今後も自分だけのツアーをひっそりと作っていこうと思う。
完成したら、不定期にSNSで告知するかもしれないので、お近くのツアーが公開されたら、ぜひ試してみてほしい。