📕読書100：『財務3表一体理解法』から学ぶ財務3表の繋がり理解と具体的アクションプラン

💡 はじめに

「会社の決算発表があったけど、数字を見ても正直よく分からない…」
「ニュースで『営業利益が過去最高』と聞いても、それが具体的にどういう意味なのかピンとこない…」
「財務諸表（決算書）って、経理や財務の専門家じゃないと理解できない、難しくてとっつきにくいものだと思っていませんか？」

ビジネスに関わっていると、売上、利益、資産、キャッシュフローといった言葉を耳にする機会は多いものです。しかし、これらの数字がそれぞれ何を意味し、互いにどう関係し合って、会社全体の「健康状態」を示しているのか、自信を持って説明できる方は意外と少ないかもしれません。

今回ご紹介する國貞克則さんのベストセラー『財務3表一体理解法』は、まさにそんな 「決算書アレルギー」を克服し、ビジネスパーソン必須の教養である「数字を読む力」を、驚くほど分かりやすく身につける ことができる画期的な一冊です。

難しい会計用語の暗記や複雑な仕訳ルールではなく、会社の活動とお金の流れを通じて、3つの主要な財務諸表がどのように「繋がっている」のか、その本質的な関係性（一体理解）に焦点を当てることで、会計初心者でも直感的に理解できるアプローチを採用しています。「数字に苦手意識がある」「会社の経営状況をもっと理解したい」「ビジネスの基礎体力を高めたい」と願うすべてのビジネスパーソンにとって、強力な武器となる知識が得られるはずです。

📚 書籍の概要

本書の中心的なメッセージは、企業の経済活動を映し出す鏡である主要な財務諸表――損益計算書（P/L）、貸借対照表（B/S）、キャッシュフロー計算書（C/S）――は、それぞれ独立した書類としてバラバラに理解するのではなく、お金の流れを通じて互いに密接に連動している「一体」のものとして捉えることが極めて重要である、ということです。

この 「財務3表の繋がり」 というシンプルな原理を理解すれば、

• 損益計算書（P/L）: 会社の儲け（利益） がどう生まれたか
• 貸借対照表（B/S）: 会社の財産（資産・負債・純資産） がどうなっているか
• キャッシュフロー計算書（C/S）: 会社の現金（キャッシュ） がどう動いたか
  という、経営の3つの側面を、相互に関連付けながら、立体的かつ深く読み解くことができるようになります。

著者の國貞克則氏は、コンサルティングの現場経験も豊富で、難しい会計の知識を、専門家でない人にも分かりやすく解説することに定評があります。本書では、架空のシンプルな会社の設立から事業活動、決算までを追いながら、一つ一つの取引が財務3表にどのように反映され、それらがどう連動していくかを、具体的な数字と図解を用いて丁寧にステップ・バイ・ステップで示してくれます。そのため、会計の知識がゼロの方でも、ストーリーを追うように無理なく「一体理解」の考え方を体得できる構成になっています。

✨ 重要なポイント/学び

本書の核心である「財務3表の一体理解」について、その構成要素となる各表の役割と、それらを繋ぐ重要な考え方を3つのポイントに絞ってご紹介します。

1. 会社の健康診断！財務3表それぞれの役割を知る

まず基本として、3つの財務諸表がそれぞれ、会社のどのような側面を表しているのかを理解しましょう。これらは、いわば会社の「健康診断書」のようなものです。

• 📊 損益計算書 (P/L: Profit and Loss statement)
  • 役割: 一定期間（通常1年間）の経営成績、つまり 「どれだけ儲かったか？」 を示す表。
  • 内容: 会社の「売上高」から、様々な「費用」（売上原価、販売管理費など）を差し引いていき、最終的な「利益」（営業利益、経常利益、当期純利益など）を計算します。
• 🏠 貸借対照表 (B/S: Balance Sheet)
  • 役割: 特定の時点（決算日）での財政状態、つまり 「どんな財産を持っていて、それはどうやって調達したか？」 を示す表。いわば会社の財産のスナップショット。
  • 内容: 左側に会社が保有する「資産」（現金、商品、建物など）、右側にその資産を調達した源泉である「負債」（借入金など）と「純資産」（株主資本など）が記載され、左右の合計額は必ず一致します（バランスする）。
• 💧 キャッシュフロー計算書 (C/S: Cash Flow statement)
  • 役割: 一定期間の現金の流れ、つまり 「現金がどのように増減したか？」 を示す表。
  • 内容: 現金の増減を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つのカテゴリーに分けて表示します。会社の資金繰りの状況が分かります。

なぜこれが重要か？
それぞれの表が持つ意味を理解することが、会社の全体像を把握するための第一歩です。例えば、P/Lを見て利益が出ていても、B/Sを見ると借金（負債）だらけかもしれません。また、利益が出ていても、C/Sを見ると現金（キャッシュ）が不足している（黒字倒産のリスク） ということもあり得ます。3つの側面から多角的に分析することで、表面的な数字に惑わされず、会社の真の「健康状態」や「実力」 を評価できるようになります。

• あなたならどう考えますか？：あなたが所属する会社や、興味のある企業のニュースに触れたとき、報道されている「利益」の数字だけでなく、「資産や負債の状況（B/S）はどうなんだろう？」「現金の動き（C/S）は大丈夫かな？」といった視点を持ってみると、違った側面が見えてくるかもしれませんね。

2. すべては繋がっている！「B/S」を中心とした一体理解

本書が特に強調するのが、貸借対照表（B/S）が財務3表の中心的な役割を果たしているという点です。B/Sは期末時点での財産状況（ストック）を表しますが、それは期中の経済活動（フロー）の結果が積み重なったものでもあります。

具体的には、以下の繋がりが重要です。

• P/LとB/Sの繋がり: P/Lで計算された当期純利益（儲け） は、最終的にB/Sの純資産（自己資本） の一部である「利益剰余金」を増加させます。つまり、儲けが出ると会社の純資産が増える、という関係です。
• C/SとB/Sの繋がり: C/Sで計算された現金の増減額は、B/Sの期首と期末の現金残高の差額と必ず一致します。つまり、キャッシュフローはB/Sの現金の変動を説明している、という関係です。

このように、B/SはP/LとC/Sの活動結果を受け止め、繋ぐ「連結点」 としての役割を担っています。

なぜこれが重要か？
このB/Sを中心とした繋がりを理解することで、単に個別の表を見るだけでは得られない、企業の経済活動全体のダイナミズムが見えてきます。「儲け（P/L）がどのように財産（B/S）に反映され、それが現金の動き（C/S）とどう関係しているのか」という一連の流れを把握できるため、より本質的で深い企業理解が可能になります。企業の「体力」や「成長性」「安全性」といった長期的な視点での評価にも繋がります。

• あなたならどう考えますか？：例えば、会社が大きな設備投資（投資活動キャッシュフローがマイナス）を行った場合、それはB/Sの資産（設備）を増やし、同時に現金（資産）を減らすことに繋がります。そして、その設備が将来の売上や利益（P/L）にどう貢献するのか…？ このように、一つの活動が3表にどう影響するかを想像してみるのも面白いかもしれません。

3. 会社の血液「現金」の流れを追う：キャッシュフローの重要性

会計上の「利益」と、会社が実際に自由に使える「現金（キャッシュ）」は、必ずしも一致しません。例えば、商品を掛け（ツケ）で販売した場合、P/L上では売上と利益が計上されますが、実際に代金が回収されるまでは現金は入ってきません。

キャッシュフロー計算書（C/S） は、この 「現金の実際の動き」 を明らかにするための財務諸表です。会社が、

• 本業（営業活動）でどれだけ現金を稼いでいるか？
• 将来のための投資（投資活動）にどれだけ現金を使っているか？
• 資金調達や返済（財務活動）で現金がどう動いているか？
  を把握することができます。そして重要なのは、C/Sの期末現金残高とB/Sの期末現金残高は必ず一致するという繋がりです。

なぜこれが重要か？
現金は会社の「血液」 とも言われ、これが不足すると、たとえP/L上で黒字であっても会社は存続できません（黒字倒産）。C/Sを見ることで、利益の質（ちゃんと現金収入に繋がっているか） や、会社の資金繰りの状況（安全性） を判断することができます。また、将来の成長に向けた投資を積極的に行っているか、あるいは借入金の返済が進んでいるかなど、会社の戦略や方向性を読み解く上でも重要な情報を提供してくれます。

• あなたならどう考えますか？：あなたが投資する企業を選ぶとしたら、P/Lの利益額だけを見て判断しますか？ それとも、C/Sを見て「本業でしっかり現金を稼げているか」「将来への投資を行っているか」といった点も確認しますか？

🚀 具体的アクションプラン

本書で学んだ「財務3表一体理解法」の考え方を、日々の仕事や学習に活かすための具体的なアクションプランを3つ提案します。数字アレルギーを克服する第一歩を踏み出しましょう。

1. 【身近な企業の「決算書」を見てみる】
   まずは、自分が勤めている会社（もし上場していれば）や、よく知っている有名企業のIR情報サイトなどから、最新の決算短信や有価証券報告書を探し、P/L、B/S、C/Sを実際に眺めてみましょう。全ての項目を理解する必要はありません。「売上はどれくらい？」「利益は出ている？」「現金は増えている？」といった簡単なポイントだけでも良いので、実際の数字に触れてみることが大切です。

2. 【ニュースと「3表」を結びつける】
   企業の業績に関するニュース（例：「〇〇社、過去最高益を更新」「△△社、大規模な設備投資を発表」など）に触れた際に、「これはP/L、B/S、C/Sのそれぞれにどう影響するだろうか？」 と考えてみる癖をつけましょう。例えば、「最高益」ならP/LとB/S（純資産）に、「設備投資」ならB/SとC/Sに影響があるはずです。ニュースの裏側にある数字の動きを想像するトレーニングです。

3. 【簡単な取引で「繋がり」をシミュレーション】
   本書で紹介されているように、ごく簡単なビジネスの取引（例：①元手100万円で会社設立 → ②商品を50万円で現金仕入 → ③商品を80万円で掛け販売 → ④売掛金60万円を現金回収）について、その都度P/L、B/S、C/Sがどのように変化し、連動するかを、実際に紙に書き出してシミュレーションしてみましょう。手を動かすことで、「一体理解」の感覚がより深く身につきます。

✅ まとめ

國貞克則さんの『財務3表一体理解法』は、会計や財務の知識が全くない初心者でも、企業の経営状態を読み解くための本質的な力を身につけることができる、画期的な入門書でした。

損益計算書（P/L）、貸借対照表（B/S）、キャッシュフロー計算書（C/S）――これら3つの表が、お金の流れを通じてどのように密接に繋がっているのか。この 「一体理解」 という核心的なコンセプトを掴むことで、複雑に見える決算書の数字が、まるでストーリーのように生き生きと動き出し、企業の活動全体像を映し出してくれるようになります。

本書で得られる知識は、経理や財務担当者だけでなく、営業、マーケティング、開発、企画など、あらゆる職種のビジネスパーソンにとって、自社の状況を理解し、市場を読み解き、より的確な意思決定を行うための強力な武器となるはずです。

「数字は苦手…」「決算書なんて読めない…」と感じていた方も、ぜひ本書を手に取り、「財務3表の繋がり」というシンプルで美しい世界に触れてみてください。きっと、ビジネスを見る目が変わり、仕事の質が向上するきっかけとなるでしょう。

この記事が、皆さんが会計アレルギーを克服し、ビジネスにおける数字力を高めるための一助となれば幸いです。

あなたは、これまで財務3表（P/L, B/S, C/S）の関係性について、どのように理解していましたか？ また、本書の「一体理解」の考え方を、ご自身の仕事や学習にどのように活かしていきたいと考えましたか？ ぜひ、皆さんのご意見や感想などをコメントで共有していただけると嬉しいです。

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