💡 はじめに

「投資を始めたいけど、何に投資すればいいのか、いつ売買すればいいのか、さっぱり分からない…」
「株価が上がると嬉しくなって、下がると不安で夜も眠れない…」
「専門家の言う通りに投資したのに、結局損をしてしまった…」

将来に向けた資産形成の重要性は理解していても、いざ「投資」となると、何から手をつければ良いのか、何を信じれば良いのか、迷いや不安を感じてしまう方は多いのではないでしょうか？特に、日々の市場のニュースや専門家の様々な意見に触れていると、感情的に揺さぶられ、冷静な判断が難しくなることもありますよね。

今回ご紹介する柴山和久さんの著書『元財務官僚が５つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』は、まさにそんな投資における迷いや不安に対して、金融工学に基づいた極めて合理的で、かつ実践的な「思考法」 を示してくれる一冊です。

本書の大きな特徴は、ウェルスナビ株式会社の創業者CEOでもある著者が、自身の壮絶な投資の「失敗談」を赤裸々に告白している点です。そのリアルな経験を通じて、なぜ多くの個人投資家が失敗してしまうのか、そして感情に左右されずに長期的な資産形成を成功させるためには、どのような考え方が必要なのかを、説得力をもって学ぶことができます。

「投資で失敗したくない」「感情的な判断から脱却したい」「合理的で、手間のかからない資産形成法を知りたい」――そう願うすべてのビジネスパーソンにとって、非常に価値のある学びが得られるはずです。

📚 書籍の概要

本書の中心的なメッセージは、個人の勘や経験、短期的な市場予測に頼った投資（アクティブ運用やタイミング投資）は、プロであっても成功し続けるのが難しく、精神的な負担も大きい。むしろ、働く世代が長期的な資産形成を行う上では、金融工学に基づいたアプローチこそが最も合理的である、ということです。

著者は、自身の財務官僚時代や海外留学、そして起業に至るまでの過程で経験した「5つの大きな投資の失敗」を振り返りながら、最終的にたどり着いた「これからの投資の思考法」として、以下の原則を提唱しています。

「長期・積立・分散」の徹底: 世界経済の長期的な成長を信じ、時間を味方につけて複利効果を活かし、リスクを抑えながらリターンを狙う。
国際分散投資: 特定の国や資産に偏らず、世界中の様々な資産（株式、債券、不動産、金など）に幅広く投資する。
感情の排除とルールの遵守: 市場の変動に一喜一憂せず、あらかじめ決めた投資方針に従って、淡々と積立とリバランス（資産配分の調整）を続ける。

そして、現代においては、ロボアドバイザー（例：ウェルスナビ）のようなテクノロジーを活用することで、こうした金融工学に基づいた合理的な国際分散投資を、専門知識や多くの時間がない個人でも、低コストかつ手軽に実践できるようになった、という点も示唆しています。

本書は、単なる投資理論の解説書ではなく、著者のリアルな経験と、金融のプロとしての知見が融合した、実践的で説得力のある「投資哲学」の本と言えるでしょう。

✨ 重要なポイント/学び

本書で語られる「これからの投資の思考法」の核心となる考え方や、その背景にある教訓について、特に重要だと感じたポイントを3つご紹介します。

1. 投資最大の敵は「自分の中」にいる：感情との向き合い方

著者が自身の数々の失敗経験から導き出した、最も重要な教訓の一つが、投資判断における「感情」の恐ろしさです。

恐怖: 市場が暴落すると、損失への恐怖から耐えきれずに売ってしまう（狼狽売り）。
欲望（焦り）: 周囲が儲けていると聞くと、乗り遅れまいと焦って高値で買ってしまう（高値掴み）。
慢心: 一度成功すると、「自分は市場を読める」と過信し、リスクを取りすぎてしまう。

このように、私たちの本能的な感情は、しばしば非合理的な投資行動を引き起こし、長期的な資産形成の妨げとなります。

なぜこれが重要か？
まず、「人間は感情に流されやすく、合理的な投資判断が本質的に苦手である」という事実を認識することが、失敗を防ぐための第一歩です。その上で、感情に左右されずに投資を続けるための「仕組み」や「ルール」 を持つことの重要性が浮かび上がってきます。例えば、投資方針を明確に定め、それを機械的に守る。あるいは、ロボアドバイザーのように感情を排したアルゴリズムに運用を任せる、といった選択肢も考えられます。『ジェイソン流お金の増やし方』の「ほったらかし」戦略も、この感情コントロールの観点から非常に有効と言えますね。

あなたならどう考えますか？：もし、あなたが保有している株や投資信託の価値が、1日で20%下落したら、あなたはどのような感情になり、どのような行動をとると思いますか？冷静さを保ち、長期的な視点を維持できますか？

2. 「タイミング」は読めない！「時間」を味方につける戦略へ

多くの人が「安く買って高く売る」という売買タイミングを捉えようとしますが、本書では、市場の短期的な動きを正確に予測することは、たとえ専門家であっても不可能に近い、と断言されています。タイミングを計ろうとする試みは、多くの場合、徒労に終わり、むしろ感情的な失敗を誘発する原因となります。

では、どうすれば良いのか？著者が推奨するのは、タイミングを読むのではなく、「時間」を味方につける戦略、すなわち 「長期・積立・分散」 です。

長期: 10年、20年、30年といった長期的な視点で、世界経済の成長に投資する。短期的な価格変動はノイズと捉える。
積立: 毎月など、定期的に一定額を投資し続ける（ドルコスト平均法）。これにより、購入価格が平準化され、高値掴みのリスクを低減できる。
分散: 投資先を特定の国や資産に集中させず、世界中の株式、債券、不動産などに幅広く分散させる。これにより、特定市場のリスクを抑え、安定的なリターンを目指す。

なぜこれが重要か？
このアプローチは、個人の予測能力や相場観に依存せず、誰にでも実践可能で、かつ長期的に見て成功する確率が高い、再現性のある方法です。「いつ投資を始めるか」よりも「どれだけ長く続けられるか」 が重要になります。市場の短期的な上下に一喜一憂することなく、どっしりと構えて世界経済の成長と共に資産を育てていく、という考え方です。

あなたならどう考えますか？：あなたは、投資において「短期的な値上がり益（キャピタルゲイン）」を狙いたいですか？それとも、「長期的な資産価値の成長（インカムゲイン含む）」を目指したいですか？目指すゴールによって、適切な投資戦略は大きく異なります。

3. グローバルな視点を持つ：「国際分散投資」の重要性

「投資」というと、日本の株式や不動産を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、本書では 「国際分散投資」 の重要性が強調されています。これは、世界中の様々な国の、様々な種類の資産（株式、債券、不動産、金など）に、適切なバランスで幅広く投資することです。

なぜこれが重要か？
特定の国（例えば日本だけ）や、特定の資産（例えば株式だけ）に投資を集中させることは、その国や資産クラス特有のリスク（カントリーリスク、市場リスクなど） を直接的に受けることになります。国際的に分散投資を行うことで、

特定地域の経済不振の影響を緩和できる。
異なる値動きをする資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを低減できる（リスク・リターンの最適化）。
世界経済全体の成長の恩恵を、より安定的に享受することが期待できる。

グローバルな視点を持って、適切な資産配分（アセットアロケーション）を行うことが、長期的な資産形成を成功させるための鍵となります。

あなたならどう考えますか？：あなたの現在の金融資産（預貯金、株式、投資信託など）のポートフォリオは、どのような国や資産に投資されていますか？日本円や日本株に偏りすぎていませんか？

🚀 具体的アクションプラン

本書で学んだ「これからの投資の思考法」を、あなたの資産形成に活かすための具体的なアクションプランを3つ提案します。合理的な一歩を踏み出してみましょう。

【自分の「感情バイアス」を認識する】
過去の投資経験（あるいは、もし投資経験がなければ、お金に関する他の意思決定場面）を振り返り、「恐怖」や「欲望」といった感情が、自分の判断にどのような影響を与えたかを客観的に分析してみましょう。自分の感情的な癖（バイアス） を認識することが、将来の失敗を防ぐ第一歩です。
【自分のリスク許容度を知る】
自分がどれくらいのリスクを受け入れられるのか（リスク許容度）を考えてみましょう。年齢、収入、資産状況、家族構成、投資経験、そして性格などを考慮して、「どの程度の価格変動までなら精神的に耐えられるか」 を把握することが重要です。多くの証券会社やロボアドバイザーのサイトで、簡単な診断ツールが提供されています。
【「長期・積立・分散」投資を検討・実践する】
もしあなたが長期的な資産形成を目指すのであれば、「長期・積立・分散」の原則に基づいた国際分散投資を具体的な選択肢として検討してみましょう。
- つみたてNISAやiDeCoを活用して、全世界株式や全米株式のインデックスファンドに毎月一定額を積み立てる。
- あるいは、ロボアドバイザー（ウェルスナビ、THEOなど） を利用して、リスク許容度に合わせた国際分散ポートフォリオの運用を任せる。
  まずは少額からでも、自分に合った方法で「始めてみること」 が大切です。

✅ まとめ

柴山和久さんの『元財務官僚が５つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』は、著者自身のリアルな失敗談から得られた教訓と、金融工学に基づいた合理的な投資哲学が融合した、非常に説得力のある一冊でした。

投資における最大の敵は自分自身の感情であること。市場のタイミングを読むのではなく、時間を味方につけること。そして、長期・積立・分散の原則に基づいた国際分散投資こそが、働く世代にとって最も賢明な道であること。これらのメッセージは、情報やノイズに惑わされがちな私たちにとって、冷静かつ着実に資産を築いていくための、確かな羅針盤となるでしょう。

特に、感情的な判断から解放され、手間なく合理的な投資を続けたいと考える人にとって、ロボアドバイザーという選択肢も含め、本書が示す道筋は非常に魅力的です。

投資で失敗したくない方、何から始めれば良いか分からない方、そして長期的な視点で資産形成に取り組みたいと願うすべての人に、ぜひ手に取っていただきたい、実践的な知恵が詰まった良書です。

この記事が、皆さんがより賢明な投資判断を下し、豊かな未来を築くための一助となれば幸いです。

あなたは、投資を行う上で、どのような「思考法」を大切にしたいと思いますか？また、本書で紹介されている「長期・積立・分散」の国際分散投資について、どのように感じましたか？ぜひ、皆さんのご意見や感想などをコメントで共有していただけると嬉しいです。

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