📕読書100：『世界一やさしい問題解決の授業』から学ぶ問題解決の基本ステップと具体的アクションプラン

💡 はじめに

「仕事で予期せぬトラブルが発生！ 何から手をつければいいか分からない…」
「目標達成のために何をすべきか、考えがまとまらない…」
「場当たり的な対応ばかりで、同じような問題が繰り返し起きてしまう…」

私たちは日々、大小さまざまな「問題」に直面します。そのたびに、「どうすればいいんだろう？」と頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。「問題解決」というと、なんだか難しくて特別なスキルが必要なように感じてしまうかもしれません。

しかし、今回ご紹介する渡辺健介さんの著書『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』を読むと、問題解決には普遍的な「基本の型」があり、それを知っていれば誰でも取り組める、ということに気づかされます。

本書はもともと中高生向けに書かれたものですが、その圧倒的な分かりやすさと本質を突いた内容は、私たちビジネスパーソンにとっても学びの宝庫です。「問題解決って難しそう…」と感じている方や、「改めて基本から学び直したい」と考えている方にとって、自分で考え、行動するための最初の一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるはずです。

📚 書籍の概要

本書のメッセージは非常にシンプルです。それは、どんな複雑に見える問題も、基本的なステップに沿って考えていけば、必ず解決に近づける、ということです。著者は、元マッキンゼーのコンサルタントとしての経験を活かし、問題解決のプロセスを以下の4つの基本ステップに分解し、解説しています。

1. 現状を正確に理解する (Understand the Situation): 何が問題なのか？ ゴールは何か？
2. 問題の原因を見極める (Identify the Root Cause): なぜその問題が起きているのか？
3. 効果的な打ち手（解決策）を考える (Develop Effective Solutions): どうすれば問題を解決できるか？
4. 実行する (Execute): 決めた打ち手を行動に移す。

本書の最大の魅力は、これらのステップを、中高生にも理解できるよう、身近なたとえ話（「成績を上げたい」「バンドの観客を増やしたい」など）や豊富な図解を用いて、徹底的に分かりやすく解説している点です。難しい専門用語は一切使われていませんが、その根底にはコンサルティングの現場で培われた、論理的で本質的な思考法が流れています。ビジネスの現場で忘れがちな、問題解決の「基本のき」を再確認させてくれる一冊と言えるでしょう。

✨ 重要なポイント/学び

本書で解説されている問題解決の基本ステップや、その中で特に重要だと感じた考え方を3点ご紹介します。これらは、あらゆる問題に取り組む際の foundational なスキルとなるはずです。

1. 問題解決は「現状把握 → 原因分析 → 打ち手決定 → 実行」のステップで

本書が示す問題解決のプロセスは、一見当たり前のようにも思えますが、実際に問題に直面すると、私たちはこのステップを飛ばしてしまいがちです。

• 現状を理解せずに、いきなり原因を決めつけてしまう。
• 原因を特定せずに、思いつきで解決策を実行してしまう。
• 打ち手を考えただけで、実行に移さない。

本書は、この4つのステップを順番に、かつ丁寧に進めることの重要性を繰り返し強調します。特に、問題の原因を特定するフェーズでは、問題を漠然と捉えるのではなく、要素に分解し、「これが原因ではないか？」という仮説を立て、それを検証していく思考プロセスが不可欠であると説かれています。

なぜこれが重要か？
この基本的なステップを踏むことで、場当たり的で非効率なアプローチから脱却し、筋道を立てて、論理的に問題解決に取り組むことができるようになります。勘や経験だけに頼らず、着実に成果を出すための「型」 を身につけることは、ビジネスパーソンとしての基礎体力を高める上で非常に重要です。

• あなたならどう考えますか？：仕事やプライベートで問題に直面したとき、すぐに「どうしよう？（解決策）」と考える前に、「そもそも何が起きているんだっけ？（現状）」「なんでこうなったんだっけ？（原因）」と立ち止まって考える時間を設けていますか？

2. すべては「現状把握」から始まる - 正しい問いを立てる力

問題解決の成功は、最初の「現状把握」の質で大きく左右されると言っても過言ではありません。本書では、「問題」とは 「あるべき姿（目標）」と「現状」との間にあるギャップであると定義し、このギャップを正確に認識することの重要性を説いています。

そのためには、

• 目標（あるべき姿）を具体的に設定する。
• 現状を客観的なデータや事実に基づいて把握する。（思い込みや感覚ではなく）
• 目標と現状のギャップ（＝問題）を明確に定義する。

というステップが不可欠です。現状を正しく理解できて初めて、「なぜギャップが生じているのか？」という的確な原因分析に進むことができます。

なぜこれが重要か？
問題設定そのものが間違っていれば、その後の努力はすべて無駄になってしまう可能性があります。「何が本当の問題なのか？」を見極める 「問いを立てる力」 は、問題解決における最も重要なスキルの一つと言えるでしょう。客観的な事実に基づき、本質的な問題は何かを見抜くことが、効果的な解決への第一歩となります。

• あなたならどう考えますか？：何か課題に取り組む際、まず「具体的な目標（KGI/KPIなど）」と「現在の状況（データなど）」を明確にすることを意識していますか？

3. 原因分析の武器：「MECE」と「ロジックツリー」

「なぜ問題が起きているのか？」という原因を探る際、思いつきで原因を挙げていくだけでは、表面的な対処に終わってしまったり、重要な原因を見逃してしまったりする可能性があります。

本書では、原因を網羅的かつ構造的に洗い出すためのツールとして、

• MECE（ミーシー: Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive）: 「漏れなく、ダブりなく」物事を整理する考え方。
• ロジックツリー: 問題や原因を、木の枝のように段階的に要素分解していく図。

の活用を推奨しています。これらを用いることで、考えられる原因候補を体系的に整理し、「これが根本原因ではないか？」という仮説を立て、検証していくプロセスをスムーズに進めることができます。

なぜこれが重要か？
複雑な問題であっても、MECEやロジックツリーを使って要素に分解し、構造化することで、思考が整理され、どこに真の原因があるのかを見つけ出しやすくなります。感覚や経験だけに頼るのではなく、論理的に原因を特定するための強力な武器となります。これにより、より本質的で効果的な解決策にたどり着く可能性が高まります。

• あなたならどう考えますか？：問題の原因を探るとき、「考えられる原因は、これで全部だろうか？」「それぞれの原因は、互いに重複していないだろうか？」といった視点（MECE）でチェックすることはありますか？

🚀 具体的アクションプラン

本書で学んだ「世界一やさしい問題解決」のステップを、日々の仕事や生活で実践するための具体的なアクションプランを3つ提案します。難しく考えず、まずは試してみませんか？

1. 【問題を「定義」してみる】
   仕事やプライベートで「困ったな」「改善したいな」と感じることがあれば、 ①「理想の状態（どうなっていたいか？）」、②「現在の状態（どうなっているか？）」、③「そのギャップ（＝問題）は何か？」 を、簡単な言葉で良いので紙に書き出してみましょう。問題を明確に言語化するだけでも、思考が整理される効果があります。

2. 【「なぜ？」を繰り返す（なぜなぜ分析）】
   問題の原因を考えるときに、「なぜそうなったんだろう？」という問いを、最低3回、できれば5回ほど繰り返して深掘りしてみましょう。 表面的な事象だけでなく、その背景にある根本的な原因を探る訓練になります。（例：「ミスが多い」→なぜ？→「確認不足」→なぜ？→「時間に追われている」→なぜ？→…）

3. 【打ち手を「評価」してみる】
   問題解決のためのアイデア（打ち手）がいくつか出てきたら、それぞれのアイデアについて、 「もしこれを実行したら、どれくらいの効果がありそうか？（効果）」 と 「実行する上で、難しさはどれくらいか？（実現可能性）」 という2つの視点から、簡単に評価してみましょう。最も効果が高く、かつ実現可能な打ち手はどれか、優先順位をつける練習になります。

✅ まとめ

渡辺健介さんの『世界一やさしい問題解決の授業』は、そのタイトルの通り、問題解決という、ビジネスパーソンにとって必須のスキルを、驚くほど分かりやすく、そして楽しく学べる一冊でした。

「現状把握 → 原因分析 → 打ち手決定 → 実行」 という普遍的なプロセスは、複雑に見える問題も、着実に解決へと導いてくれる「魔法の杖」ではなく、誰でも実践できる「基本の型」なのだと教えてくれます。

難しい理論やフレームワークをたくさん知っていることよりも、まずはこのシンプルな基本ステップを忠実に実行することこそが、 「自分で考え、行動する力」 を身につけるための最も確実な道なのかもしれません。

問題解決に苦手意識を持っている方、新社会人の方、そして経験豊富なビジネスパーソンの方にも、基本に立ち返るという意味で、ぜひ一度手に取っていただきたい良書です。

この記事が、皆さんの問題解決能力向上のための一助となれば幸いです。

皆さんの現場では、どのような「問題」があり、本書で紹介されているようなステップはどのように活用できそうでしょうか？ ぜひ、皆さんのご意見や実践アイデアなどをコメントで共有していただけると嬉しいです。

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