はじめに
ここではIPAが主催する国家資格の中で「応用情報技術者試験」の「午後」の文章系の問題についての勉強方法に関する記事を書いていきたいと思います。
※資格の存在価値や取得意義、資格の受験方法や出題範囲は対象外としております
※文章系の問題はプロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査を対象としています
例えばアルゴリズム、DB、ネットワークなど業務で手掛けている範囲を選択し更に、所謂「国語の問題」のように分類されがちな文章系問題を何となくお手軽なので選択する方が多いのではないでしょうか。
知人を見ていると、これらの問題は無勉強に近い形で合格している人もいればこの文章系の問題に苦戦し、毎回壊滅している人もいます。無勉強の方は「体感?」で理解出来たようなことを言っていました。何故、人によっては「国語の問題」となり、ある別の人には「難解な論文と質問」に変化するのか過去問題を参考に考察してみたいと思います。
※なお、例題含めプロジェクトマネージャを例えとして話を進めます
例題
出典:平成30年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問9
問9 ERPソフトウェアパッケージ導入プロジェクトに関する次の技術を読んで、設問1~4に答えよ。
〔本プロジェクトの概要〕
(1) ERPソフトウェアパッケージの導入
・小売業界で広く採用されているP社のERPソフトウェアパッケージ(以下,パッケージという)を 導入する。その理由は,スクラッチ開発よりも低コストでの導入が可能であり,かつ,パッケージに合わせて全店舗の業務を標準化することによって,業務効率を上げることができるとO社の経営層が判断したからである。
・パッケージの導入対象業務は,店舗に関わる販売管理(需要予測を含む),在庫管理,購買管理,会計管理及び要員管理である。特に,販売管理業務は,各店舗での独自の販売管理手法によって,売上拡大に大きく寄与している重要な業務である。
(2) 本プロジェクトの立上げ
・本プロジェクト全体の予算は8,000万円で,期間は6か月間である。経営層から,6か月後の稼働が必須との指示が出ており,予算もスケジュールも余裕がないプロジェクトとなっている。
・プロジェクトマネージャ(PM)には,O社IT部門のW氏が任命された。
・特に,リスクマネジメントを重視し,計画・管理・対応策について検討する。
〔リスクマネジメント計画〕
(1) リスクマネジメントの現状
O社にとっては,今回のような全社にわたるパッケージ導入プロジェクトは初めての経験であるが,従来どおりIT部門が主導的な立場で推進することになった。以前のプロジェクトでは,リスクマネジメントが十分に機能しておらず,様々なリスクが顕在化していた。
例えば,業務部門から重要案件として提示された案件の中に,実際には重要度がそれほど高くない案件が含まれている場合もあった。そのような場合でも,案件の採否決定のベースとなる重要度を評価するための社内基準がないので,IT部門での重要度の判断も属人的となり,多くは見直されなかった。
また,業務部門と重要度を調整する場を設けなかったので,結果として重要度にかかわらず全ての案件を受け入れざるを得なくなるというリスクが顕在化し,プロジェクトの全体予算を超過したことがあった。
(2) リスクの特定方法
W氏は,本プロジェクトにおいてリスクマネジメントをしっかり行うために,まずプロジェクト予算超過のリスクを次の方法で特定し,リスクマネジメント計画書に記載した。本プロジェクトのプロジェクト企画書,現行システムの仕様書から,予測されるリスクを抽出する。IT部門でリスクに関するブレーンストーミングを行い,リスクを洗い出す。
IT部門のPM経験者に対して,過去に担当したプロジェクトの経験から,今後発生が予測されるリスクに関してアンケートを行い,その結果を回答者にフィードバックする。これを数回繰り返してリスクを集約し,リスク源を特定する。次に,W氏は,この方法では特定できない未知のリスクが発生した場合の対策として,本プロジェクト全体の予算の5%を,aとして上乗せすることを,経営層に報告し,承認を得た。
〔リスクの管理〕
W氏は,特定したリスク源を,リスク管理表にまとめた。表1は,その抜粋である。表1中の"カスタマイズ"とは,O社の要求で機能を変更・追加したモジュールをパッケージに組み込むことをいう。
〔リスク対応策〕
W氏は,特定したリスク源への対応策を検討して一覧にまとめ,経営店の承認を得た。表2は,その抜粋である。ここで,"No."は表1の"No."に対応する。
設問2 ※本設問のみ抜粋しています
〔リスク対応策〕について,(1)~(3)に答えよ。
(1):表2中のbに入れる適切な字句を,20字以内で答えよ。
★★★解答例と一般的な解説例★★★
[解答例] 重要度を評価するための社内基準 (15文字)[一般的な解説] ※こんなのが多いと思います
表1のリスク管理表のNo1では要約すると以下の2つが記載されている。
1.案件の取りまとめが不十分
2.重要度がそれほど高くない案件も受け入れている
そして表2のNo1のリスク対応策の構成は以下のとおりである。
①「案件の取りまとめ」についてはP社に支援してもらう →上記1への対策
②案件採否のベースとして[b]を定める →上記2への対策&設問
③提示された案件の採否決定及び最終決定権 →上記2への対策
「案件のbを定める。」という文脈から、規定や基準類を定めると推察でき、かつ表1での「案件の取りまとめが不十分」についての問題点及び本来あるべき姿が本文中の「(1) リスクマネジメントの現状」部分にヒントとして記載されていることから、その部分を「抜粋」して解答例のように字数内に収まるように表現する
>例えば,業務部門から重要案件として提示された案件の中に,
>実際には重要度がそれほど高くない案件が含まれている場合もあった。
>そのような場合でも,案件の採否決定のベースとなる 重要度を評価するための社内基準がない ので,
>IT部門での重要度の判断も属人的となり,多くは見直されなかった。
これらの解説の問題点
良く見る薄い書籍にはこうした解説が多いのではないでしょうか。私は新人の頃にソフトウェア開発技術者試験(応用情報技術者試験の前身)を受験し、このような解説がまったく理解出来ませんでした。※当然、私の理解力の問題でもありますが節々で以下のような疑問を抱えていた記憶があります。
「解説は理解した。文章にもヒントが記載されている。
ただ何を基準に本文中に記載されているヒントを探してこられたのか?」
「例えば私はリスク対応が好きだからリスク対応ばかりが印象に残った。
こうした見当違いな方向へ発想が飛んだ時点で、既に他のキーワードは印象に残らないではないか?」
「その見当違いとそうでない基準とは何か?何をすれば判断出来るのだろうか?」
つまりどのような基準とプロセスを経て問題からヒントを抜粋できるようになり、どのような解答を導けるか、について記載している書籍が少ないように感じます。
文章から探せるために
確かに文章にヒントが記載されていますが、ヒントらしいが関係無いものについても
多数記載されています。これらをヒントとするか不要な情報とするか選別するには
プロジェクトマネージャのお作法、所謂PMBOKに沿った行動や知識を理解している必要があります。
恐らくこの問題では以下のような前提知識を理解しているのか問われているのでしょう。
①パッケージ開発の要件定義の問題
②要求が過度に膨らむと案件が拡大し開発範囲(スコープ)が確定出来なくなるリスクが発生
→今回はコレ。Webでも「顧客」「要求」「炎上」などで調べると
関連記事が多数引っかかると思います。IPAは「やってはいけない問題」を平然と文章に記載し
そこに違和感を感じ、後の設問でその問題と改善策を明確に指摘出来るか?を問いたいのでしょう。
この違和感を感じるレベルまで学習が必要となる部分が応用情報技術者試験の難しいところです。
③プロジェクト立ち上げの期日が厳命されている際のマネジメント制約の理解
こうした知識をどこまで解釈し自分の文章にまとめられるか?で解答の精度すなわち合格率に影響して来るのでは?と思っています。②の話はそれこそ一般的によくある事ですが、薄い書籍の解説ではあまり踏み込まれません。
冒頭で述べた体感で理解できてる人、出来ない人の差はこの辺にあるのではないでしょうか。
例えば下で理解度レベルを適当につけて整理してみました。
A.正確に理解した上で解答している
B.PMBOKの知識は無いが、何となく普段の職場のルールがそうなっているので経験している。
例えばタスク管理者である上長がこのような方針で口うるさい。
C.PMBOKの知識も職場での経験も無い
※何となく理解している人はBのケースが多い気がします。
これらの人は問題点を肌で感じつつも、文章にまとめ上げるところで苦戦するので
やはり安全に合格するのであればAの範囲まで引き上げた方が良いのでしょうね。
Aの人はある程度の外れ問題を引いても問題ないでしょう。
Bの人は体感的にこの文章問題の言わんとすることは理解しやすいと思います。
ただし外れ問題を引いた際や記述文章の組みてのケアレスミスなど不安定な要素は残りそうです。
Cの人は午前問題で問われる系統の問題以外は壊滅でしょう。
結論
応用情報技術者試験の勉強方法を特に難しくしている要因は
根本的な解説まで踏み込んだ良書が少ないことではないでしょうか。
一般的な解答説明では文章からヒントを探し出すことに比重が置かれていますが、
その前段となる「何故そうなるのか?」という前提知識の理解を学習することが重要だと感じています。
次回は私の具体的な勉強方法を記載したいと思います。