DXに乗り遅れまいと焦ってはいるものの、何から手を付けたら良いかわからない、そんな組織向けのDX推進ポエムです。
DXとは
経産省レポートによれば、DXにも段階があって、以下のようになるらしい。
- Degitiation: アナログ・物理データのデジタルデータ化
- Digitalization: 個別業務・製造プロセスのデジタル化
- Digital Transformation: 組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、"顧客起点の価値創出"のための事業やビジネスモデルの変革
まずはデータ、次に業務をデジタル化すればよさそう。でも、業務をデジタル化するって何だ?
アナログ vs デジタル
そもそもデジタルって何だということから考えてみる。対義語のアナログと比較してみよう。
- アナログ
- 非効率、遅い
- データではなく勘でビジネス判断(経営レベルも)
- デジタル
- 効率的、速い
- データドリブンなビジネス判断
これらを顧客目線、従業員目線から眺めると、
- 顧客目線
- アナログ:店舗に行かないといけない。書類が多く、待たされる。興味のないサービスを勧められる。
- デジタル:オンライン。紙が少なく、入力は最小限、すぐ終わる。欲しいサービスを進めてくれる。
- 従業員目線(従業員同士の業務を含む)
- アナログ:対面(ミーティング含む) 、紙でのやりとり(エスカレーション含む)、作業に時間がかかる。闇雲な施策。過去のデータが散逸(紙または散在するスプレッドシート)。
- デジタル:対面・オンラインのハイブリッド 、デジタル化された業務プロセス、知的生産活動の増加。データを活用した施策。再利用が用意なデータ。
注意点としては、ここで言うアナログは単に紙を使うかどうかではなく、データ自体はデジタルであっても、それらを人の手で管理・運用運用している業務プロセスを含むこと。例えば、Excelのワークシートでメンバーの予定表を管理したり、Excelで報告資料を作って、それらをPDFにまとめて、メールで報告したり等々。単に紙がデジタル化されているだけで、業務自体はほとんど人の手で運用されているような状態。これが業務プロセスがアナログってこと。
業務プロセスのデジタル化って何だ?
「え、うちはデータとかExcelで管理して、資料はPDFだからデジタル化してるよ(ドヤぁ」← 違うよ!!ただ紙でやっていたものがファイルになっただけでは不十分。Word、Excel、Outlookで業務を行うだけでは、業務プロセスのデジタル化とは言えないということ。その理由の一つはデータが活かされないから。PDFやWord、パワポだけでなく、多くのExcelファイルも再利用性は低い。
業務プロセスのデジタル化の簡単な例は電子稟議。単にデータがデジタル化されているだけではなく稟議承認、情報共有などのプロセスがデジタル化されている。そして専用のプロダクトとして、提供されている。似たようなものだと、人事評価システムも。
他には、ビジネスチャットも。メールがあるから要らないとかそんなことはない。チャットはコミュニケーション活性化(気軽にやりとり)、アプリ連携(機能を追加できる)の点でメールよりも断然優れている。
業務プロセスのデジタル化で何が嬉しいか?以下が考えられる:
- 効率化: 浮いた時間で知的生産を。またはもっと働くか。
- データの再利用性向上: データがデジタル化された業務プロセスに組み込まれているということは、他の業務からも利用されやすくなる。このことはDigital Transformationにつながる。
何からやる?(社内DX)
Word、Excel、Outlook、PowerPointくらいしか使っていない会社を想定。
データはギリギリデジタル化されているけど、次に何をやるか??業務プロセスのデジタル化で、上記利点につながるのは理解したけど、すごく難しそう??
実は簡単。そういう製品を使えば良いだけ。Microsoft製品では:
- Teams: コミュニケーションツール。ビデオ会議の他、チャットやサイト上での情報共有。
- Power BI: 各種計数報告・分析のためのBIツール。
- Power Automate: RPAツール。
- Yammer: ナレッジ共有のための社内SNSツール。
- Power Apps: アプリ開発ツール。
- Project: プロジェクト管理ツール。
等々、他にもいっぱい。Outlookメールの「いつもお世話になっております」とかをTeamsのチャットに変えるだけ。簡単でしょ。
これら製品が存在する意味を考えること。WordやExelが無いと仕事はできなくなるが、これらの製品が無いと仕事ができないかというと、そういう訳ではない。これらが存在する前から業務は回っていたのだから。
ではなぜ存在するか?答えは、あればもっと効率的に仕事ができるようになるから。そして、製品を買うだけの費用対効果があるから。
効果は?(社内DX)
- 生産性向上:一人ひとりの生産性向上。ただし、個々人への浸透・リスキリングには時間がかかる。組織的な取り組みが必要。
- データドリブンな組織へ:BIツールの活用は、定例報告モノで特に大きなメリット
- 作業する側:データ作成(Excelとかのデータ貼り付け)の省力化、メール報告等がなくなり、効率化
- 受ける側:より多くの情報を得られる。また、自分で分析することも可能(受ける側も少しは努力してね)。
ただし、短期的にはある程度追加的なマンパワーは必要。浸透するまでが辛いか。。浸透さえすれば、上記の効果のとおり、個々人に余力が生まれるはず。
ノーコード、ローコード開発
この節は備忘録的に書いているので、読み飛ばしてもらっても。
一昔前と比べてユーザーサイドから見た開発の敷居が大きく下がった。かつて業務の自動化と言えはVBA(と極一部ではC++)くらいしかなく、貧弱な開発環境とライブラリーで非効率な作業を強いられた。でも、今ではいろんな方法がある:
- セルフサービスBI: GUIでダッシュボードが作成できる
- RPA: GUIで業務自動化ができる
- Python: ここはプログラミングだが、パッケージが豊富でコードが短くて済む
- アプリ開発: GUIでアプリ開発ができる
共通しているのはノーコードまたはローコード(Pythonはやや強引か?)で欲しい物を作れるということ。これはこれまでできなかった人たちでも開発者になれるということと、早く開発できるということを意味する。
これらがもたらすのは、これまで予算的に不可能だった業務のデジタル化が、業務所管部署の手で可能になるということ。しかも、ウォーター・フォール的な開発と比べ圧倒的に早く、柔軟に。
セルフサービスBIを例に取れば、欲しいダッシュボードそのものが手に入る(=間に人が入らないので伝言ゲームで何かが歪むことがない)し、ちょっとした変更ならすぐにできるということ。ダッシュボードがビジネスの変化にすぐに対応できないとか考えられないでしょ。
まあ、ノーコード、ローコードとは言っても多少スキルは必要になるので、人材育成は当然必要だし、管理体制も必要になりそう。特に、無計画なRPAは野良RPAとか言う業務継続性に致命的なものを生み出しかねないので注意。
あと、最近ではDXをDivelopper Experience=開発体験と読んで、開発者を大事にしようみたいな流れもある。ノーコード、ローコード開発の広がりに伴ってこのDXが意味するところも広がりそう。その文脈ではスペシャリストを大事にしてねという意味になりそうだから、何らかの待遇改善が必要になるかと。
何からやる?(顧客向けDX)
難しい。極めようとすれば相当な陣容と試行錯誤が必要。ただ、遅れている企業であれば先行他社のマネをすればいいんじゃね、と思う。例えば、ネットバンキングがしょぼいと自覚している銀行なら先行するネット銀行のマネをすればいい。
役割
これまでの内容を組織としてどう進めるか?それぞれの役割は:
- 経営レベル
- ビジョンの提示: とりあえず小さなことからでもいいから
- 戦略策定、推進体制整備
- RPAは司令塔を設定し組織的に
- 人材育成
- セルフBI使って自分で分析してみる
- システム
- システム導入
- 導入当初は推進部署と協力し、一般社員へのサポート
- 一般社員
- 業務プロセスのデジタル化を受け入れる
- 特に、メールからチャットツールへの移行
- 推進部署
- 一般社員への丁寧な説明
- 技術的なサポート
- スペシャリスト的な社員
- データハンドリング技術向上:Mordern Excel的なやつ
- BIツール技術取得
- データ分析、AIモデル作成能力取得
と、こんな感じかなと。大事なのはちょっとずつでも進めること、そして継続すること。DXって要は効率化・高度化なので終わりなんて無いでしょ。
あと、経営レベルが人材育成だけ指示して、ボトムアップで何かが出でくるのを期待するのはNG。時間と金ばかりかかって非効率。新しい施策でそれやって成功したことって無いでしょ。コンサルの良い鴨になるってことも、過去の経験からわかるのでは?
Digital Transformationへ
と、ここまで書いてきたのはDigitalizationまで。Digitalizationまで進むと、業務データや業務プロセスなど、企業内のあらゆるものがデジタルデータ化され、再利用可能になる。
この先のDigital Transformationは、Digitalizationまでで蓄積した様々なデータを分析し、UX向上に向けた施策やさらなる事務効率化につなげることで達成する、たぶん。Digitalizationまでと違って(個々の組織によって求められるものが違い過ぎて)、Digital Transformationのためのプロダクトは存在しないから、自分たちで頑張るしかない。Pythonなどを使った詳細なデータ分析やAIモデル作成など。
ただ、Digitalizationまでの過程で体制を整え、力を入れる付けてきた組織なら何とかなるんじゃね?とは思う。まあ、Digital Transformationまででもそれなりに大変だし、それができてないのにDigital TransformationでUX向上なんて絶対無理って意味だけど。
ゆっくりでもいいから、一歩ずつ前に進めましょうということで。
蛇足
MSのサイトに書かれていたこと
DX (デジタル トランスフォーメーション) とは? すすめることの意味や重要性に良いことが書かれていたのでいくつか引用。
もっとも重要なのは、経営戦略・ビジョンの提示です。これは経営層に化せられたミッションですし、戦略なき DX は必ずと言っていいほど頓挫します。経営層が、“IT のことはわからない”からと、担当者に丸投げしているようでは、必ず現場は混乱します。
これは一般論ですが、日本の企業において、どのような DX の課題があるのか述べておきます。まずは、諸外国に比べて「IT リテラシー」が低いという問題があります。いまだに FAX やメールがコミュニケーションの中心な企業も珍しくありません。ここは教育でカバーしたい部分です。
4-1. 多様なツール群
DX に必要なのは、業務の効率化や新たな価値創出を助けるツールです。具体的には「情報の一元管理」「業務効率化」「データ活用」が可能なデジタル ツールを指します。主に、業務を自動化する「RPA」、インターネット上のサーバーにデータを保管し、そこで情報共有をしたり共同作業したりする「オンライン ストレージ」、メールよりも手軽にメッセージを送信したり、容量の少ないデータを共有できる「ビジネス チャット」、インターネット回線を使って、ビデオ通話や音声通話のできる「Web 会議システム」、企業の経営資産である「ヒト・モノ・カネ・情報」を管理する「ERP」、顧客一人ひとりの基本情報や接点履歴を管理したり、営業担当者の行動や業績を分析する「CRM/SFA」、マーケティング活動を自動化する「MA」、ビジネスに必要なデータを集計・分析し、活用する「BI」などがあげられます。
4-2. DX ツールの選び方
DX ツールの選び方のポイントは、あまり背伸びをしないことです。従業員のスキルに合ったもので、社内の課題に合ったもの、そして業務の自動化につながるものを選ぶべきでしょう。
書いた人
Teamsのミーティング機能くらいしか使ったことが無い人。なので、ここに書かれていることは一切実体験に基づいていないので、そんなもんだと思って読んでいただければと。