はじめに
ネットオークションサイトで中古CPUを見ていたらBroadwell-EP世代のCPU、Xeon E5-2699 v4(22コア、44スレッド)が約2万円/個で売られていた。2023年12月現在は出品数が減り価格が上がり始めている。筆者は運よく価格上昇前に2個ゲットすることに成功。合わせてマザーボードなど起動に必要なパーツも入手できたので自作ワークステーションを組み上げて性能を検証してみた。
主な使用パーツ(すべて中古)
CPU:
Intel Xeon E5-2699 v4を2個。CPUのベース周波数2.2GHz、ブースト時3.6GHz。ソケットLGA2011-3とかLGA2011 rev. 3と呼ばれるものに対応。
マザーボード:
Supermicro製のワークステーション用マザボX10DAi。フォームファクタE-ATX(12" x 13" (30.5cm x 33.0cm) )。デュアルCPUマザボでメモリスロット16本。RDIMMなら最大1TBまでサポート。Xeon E5-2699 v4を搭載するにはBiosバージョン2.0以上が必須。Biosアップデートはよく下調べし自己責任で実行。このため起動可能なCPU付きの中古マザボを購入するのが安全。
このマザボは汎用電源コネクタで接続できるため特殊な電源を使う必要がありません。
マニュアルからTPMピンアサインを確認し同じようなアサインのサードパーティ製TPM2.0モジュールを購入し取り付けました。BiosよりTPM2.0が有効化されたことを確認しました。
メモリ:
DDR4-2400MHz ECC Registerd RDIMM 16GB x 16枚で256GB。Sumsong製とSK-Hynix製が混在。
グラボ:
GTX-1050Ti。X10DAiマザボにはオンボードVGAがないためグラボが必須。PCIEスロットにさすだけで問題なく動作しました。
電源:
玄人志向の850Wフルプラグイン+セミファンレスタイプ。マザボには24ピン電源のほか、8ピンCPU電源を2か所つなぐ必要があります。そのためフルプラグインかセミプラグイン電源の利用が便利です。
ベンチマークその1:Cinebench2024
Cinebench2024のCPUマルチ性能結果は次の通り。
なんとIntel Xeon E5-2699 v4デュアルマシンの性能がCore i9-13900KどころかApple M1 Ultraも超えてます。正直なところ評価基準がわかりません。
Cinebench2024のCPUシングル性能結果は次の通り。
シングル性能は予想通り比較CPUの中では最下位でした。欄外になりましたがシングル性能1位はCore i9-13900Kで126pntsでした。
シングル性能が低いため通常のオフィスソフトやゲーム使用にはモッサリ感がでます。Cinebench2024のマルチスコアから高性能PCをうたうオークション出品もありますので注意しましょう。
ベンチマークその2:Quantum Espresso 7.0
倍精度計算の計算速度はレンダリングベンチマークプログラムで比較できません。そこで複数のシステムと密度汎関数計算プログラムQuantum Espressoとベンチマーク用データを用いて計算速度を比較しました。ベンチマーク用データはこちらにアップロードされているAUSURF112を用いました。このデータはOpen Benchmarkでも採用されています。
OSはUbuntu 22.04で事前にIntel One APIをインストールしFFTW3をインストールしました。その後Intelコンパイラを用いてQuantum Espresso ver. 7.0をビルドして使用しました。手持ちの様々な環境で計算してみました。
Intel Core i7-13700およびi9-13900K環境ではこちらで紹介されているようにPコア数で走らせないとスコアが下がるため8コアで実行しました。その他はフルコアで実行しました。
Wall Timeは計算に要した時間のため短いほど計算能力が高いことになります。Xeon E5-2699 v4デュアルCPU環境はわずかにCore i9-13900K(8コア実行)に負けています。しかしCore i7-13700(8コア使用)には勝利しており、Ryzen9 5900X、5950Xには圧勝です。Ryzenは倍精度計算が苦手なようです。
主観的にはXeon E5-2699 v4デュアルCPU環境は倍精度計算用ワークステーションとしてまだ戦えると言えそうです。
Windowsについて
Xeon E5-2699 v4はWindows 11に公式対応されていないCPUです。そのため価格が下がっていると思ったのですが、最近はまた価格が上がりつつあります。
Win 11導入についてはTPM2.0モジュールを取り付ければInstaller USBかDVDよりクリーンインストールできます。ただしデュアルCPU環境にはPro版が必須です。
44コア88スレッドは流石。Win 11タスクマネージャーでCPUの論理プロセッサー表示させるとスレッド数が多すぎるためグラフの代わりに数値だけが表示されます。
なかなか壮観です。
最後に
Xeon E5-2699 v4デュアルCPU環境構築は中古パーツの寄せ集めです。さらにパーツはワークステーションやサーバー用のものであるためオークションサイトでも出品数が少なく、安価に購入できるかは運まかせです。今回のマシンはゲーミングPCよりは安価に構築できましたが、お小遣いで気楽に、とは言えない額になりました。はじめてワークステーションを自作したのですが、使用するパーツ規格の違いだけで他はPCと変わりないことがわかりました。
皆さんもワークステーションを自作し逸般の誤家庭を目指しましょう。