Linuxのファイルシステムは、特定の規則に基づいてディレクトリが構造化されています。これにより、システム全体のファイルの管理が効率的に行われ、ユーザーやアプリケーションが必要なファイルを見つけやすくなります。本記事では、Linuxの主要なディレクトリ構造とその役割を、具体例を交えて解説します。
目次
-
/
(ルートディレクトリ) -
/bin
(バイナリディレクトリ) -
/sbin
(システムバイナリディレクトリ) -
/etc
(設定ファイルディレクトリ) -
/dev
(デバイスファイルディレクトリ) -
/proc
(プロセス情報ディレクトリ) -
/var
(可変データディレクトリ) -
/home
(ユーザーホームディレクトリ) -
/tmp
(一時ファイルディレクトリ) -
/lib
(ライブラリディレクトリ) -
/usr
(ユーザーアプリケーションとデータ) -
/opt
(オプショナルなアプリケーション) -
/mnt
(マウント用ディレクトリ) -
/media
(メディアデバイスの自動マウントディレクトリ)
1. /
(ルートディレクトリ)
役割
- ルートディレクトリは、Linuxシステム全体の最上位に位置し、全てのファイルとディレクトリの親ディレクトリです。
- 他の全てのディレクトリは、このルートディレクトリから分岐します。
具体例
- 例えば、
/home/username/Documents
というパスは、/
を起点として「home」→「username」→「Documents」というサブディレクトリにアクセスする形になります。
2. /bin
(バイナリディレクトリ)
役割
- システムが起動するために必要な基本的な実行ファイル(バイナリ)を格納します。
- システム管理者だけでなく、一般ユーザーも使用するコマンドが格納されています。
具体例
- よく使うコマンドとして、
ls
(ディレクトリの一覧表示)やcp
(ファイルのコピー)などがここにあります。/bin/ls /bin/cp
よく使う場面
- システムのトラブルシューティング時や、シングルユーザーモードでの操作などで利用されるコマンドがここにあります。
3. /sbin
(システムバイナリディレクトリ)
役割
- システム管理用のコマンドが格納されており、一般ユーザーには基本的に必要ないコマンドが多いです。
- サーバーの設定や管理を行うためのツールがここにあります。
具体例
-
reboot
(システムの再起動)やifconfig
(ネットワークインターフェースの設定)など。/sbin/reboot /sbin/ifconfig
よく使う場面
- サーバーのメンテナンスやシステム管理者が使用します。一般ユーザーが直接使用することは少ないです。
4. /etc
(設定ファイルディレクトリ)
役割
- システムやアプリケーションの設定ファイルが格納されるディレクトリです。
- システムの動作に関する重要な情報が含まれているため、管理者による編集が必要です。
具体例
- ネットワーク設定ファイル
/etc/network/interfaces
- サービス管理設定
/etc/systemd/system/
- ユーザー管理設定
/etc/passwd
よく使う場面
- サーバーやシステムの設定変更時に使用します。例えば、Apacheの設定変更時に
/etc/httpd/
ディレクトリを編集します。
5. /dev
(デバイスファイルディレクトリ)
役割
- ハードウェアデバイスや仮想デバイスを表すファイルが格納されています。これらは、デバイスドライバを通じてシステムと通信するために使われます。
具体例
-
/dev/sda
(HDDやSSD) -
/dev/tty0
(端末デバイス) -
/dev/null
(データを破棄する特殊ファイル)
よく使う場面
- デバイスを操作したり、ハードウェアにアクセスする際に使います。例えば、ディスクのマウントやアンマウントの操作は、
/dev/sda
を使って行います。
6. /proc
(プロセス情報ディレクトリ)
役割
- 実行中のプロセスやシステム情報を提供する仮想ファイルシステムです。
- ここに格納されているファイルは、実際にはディスク上に存在するわけではなく、カーネルから提供される情報を表示しています。
具体例
-
/proc/cpuinfo
(CPU情報) -
/proc/meminfo
(メモリ使用状況) -
/proc/[PID]
(特定プロセスの情報)
よく使う場面
- システム監視やパフォーマンスチューニングの際に役立ちます。例えば、
cat /proc/cpuinfo
でCPUの詳細情報を確認します。
7. /var
(可変データディレクトリ)
役割
- ログファイルやキャッシュ、メールデータなど、変動するデータを格納します。
- ファイルサイズが可変であり、特にログやキャッシュが多く含まれます。
具体例
-
/var/log/
(ログファイル) -
/var/spool/
(メールキューなど)
よく使う場面
- システムのログを確認したり、キャッシュの管理を行う場面でよく使用します。
/var/log/syslog
などでシステムのログを確認することが多いです。
8. /home
(ユーザーホームディレクトリ)
役割
- ユーザーごとのデータを格納するディレクトリです。一般ユーザーの個人用ファイルがこのディレクトリ内に保存されます。
具体例
-
/home/user1/
(ユーザー1のホームディレクトリ) - ユーザーごとに
Documents
やDownloads
などのサブディレクトリが存在します。
よく使う場面
- 個人ファイルや設定を管理するために使用します。例えば、ユーザーがファイルを保存する場所として最もよく利用されます。
9. /tmp
(一時ファイルディレクトリ)
役割
- 一時的なファイルを格納するためのディレクトリです。アプリケーションやシステムが動作中に一時的に生成するファイルが保存されます。
具体例
- プログラムが一時的に使う作業ファイルや、圧縮したデータの一時解凍など。
よく使う場面
- アプリケーションが実行中に一時ファイルを作成する際に利用します。例えば、インストールやアップデート処理で一時ファイルを格納する場合があります。
10. /lib
(ライブラリディレクトリ)
役割
- システムが動作するために必要な共有ライブラリが格納されているディレクトリです。バイナリファイルが依存するライブラリもここに格納されます。
具体例
-
/lib/libc.so.6
(標準Cライブラリ) -
/lib/modules/
(カーネルモジュール)
よく使う場面
- システムの動作やアプリケーションの実行に不可欠なライブラリを管理する場面で使用されます。
11. /usr
(ユーザーアプリケーションとデータ)
役割
- システム全体で使用されるアプリケーションや
データが格納されています。
- システム管理者がインストールしたプログラムやユーザー向けのソフトウェアがここに含まれます。
具体例
-
/usr/bin/
(アプリケーションの実行ファイル) -
/usr/share/
(アプリケーションの共有データ)
よく使う場面
- ユーザー向けのアプリケーションやツールのインストールに使用されます。
12. /opt
(オプショナルなアプリケーション)
役割
- 通常のパッケージ管理システムでは管理されない、追加のソフトウェアやアプリケーションが格納される場所です。
具体例
- Google Chromeやその他の商用ソフトウェアをインストールする際に使われることがあります。
/opt/google/chrome/
よく使う場面
- 特定のソフトウェアをインストールする際に利用されます。
13. /mnt
(マウント用ディレクトリ)
役割
- 外部ストレージやネットワークドライブなどを一時的にマウントするためのディレクトリです。
具体例
- 外部ハードディスクを
/mnt/usb
にマウントする場合など。
よく使う場面
- 一時的に外部メディアをマウントしてファイルを操作する際に使用します。
14. /media
(メディアデバイスの自動マウントディレクトリ)
役割
- USBドライブやCD/DVDなど、外部メディアが自動的にマウントされる場所です。
具体例
- USBメモリが自動的に
/media/username/usbdrive
にマウントされます。
よく使う場面
- 外部デバイスを接続した際に自動的にマウントされるディレクトリです。
おわりに
システム管理者や開発者にとって、これらのディレクトリの構造と役割を理解することは、システムを適切に管理するために不可欠です。本記事を繰り返し参照しつつ、ディレクトリ構造を意識してLinuxを使っていく事で、Linuxに対する理解を深めていきましょう。