アプリケーション開始時に発生するシステムイベントがApplication Ready。
実際の動作タイミングを実地に確認してみる。
環境情報
ODC Studio(Version 1.5.2)
On Application Readyとは
アプリケーション開始時に発生するSystem Event。このEventに対するハンドラーで、各種変数の初期設定などを行う。
ドキュメントはこちら：On Application Ready - ODC Documentation
OutSystems 11の頃は、途中まではOn Application Readyは非同期に実行され、Version 11.16.1からは同期に実行されるように変更された。
同期に実行されるとは、この場合、On Application Readyの完了までUIの描画がブロックされるということ。
↓はドキュメントの履歴から、いつ非同期→同期に帰られたタイミングを確認できるもの。
実際、On Application ReadyにJavaScript要素を配置し、数億回無駄にループさせる（ちょっと時間がかかる）と、ループが完了されるまで画面は表示されない。
On Begin Web Requestとは何が違う？
最近OutSystemsを始めた人は聞いたことがないかもしれないが、古いWebアプリケーション開発には、Traditional Webという種類のモジュールを使っていた。
Traditonal WebはSPAではなく、より古い方式のWebアプリケーション開発方法。System EventとしてBegin Web Requestがあり、これはWebリクエスト（ページアクセスやUI操作による）の最初に動く。このため、各リクエストに共通する初期処理を書けた。
これに対し、Application Readyは、ブラウザへの最初のアプリケーションロード時に発生する。
イベントハンドラー作成方法
Applcation Readyはクライアントで発生するイベントなので、ハンドラーはClient Actionとして作成する。
Logicタブ > Client Actionsを右クリック > Add System Event > On Application Ready
と選んでいくと、Client Actions直下にハンドラーが作成される。
この記事中での動作確認方法：JavaScript要素でconsole.logして、ブラウザの開発者ツール > Consoleを確認
イベントハンドラ中にJavaScript要素を配置し、
JavaScriptコードは以下の通り、シンプルにコンソールに日時付きでログを出力するもの。
console.log('On Application Ready' + (new Date()));
これで、On Application Readyが動作すると、ブラウザの開発者ツール > Consoleタブにログが出力される（以下はChromeの例）。
画面遷移の検証
以下の様々なパターンで画面遷移させてみて、Consoleログの出力有無でOn Application Readyが動作するかを確認する。
同じAppのScreen間で通常の画面遷移：Application Readyは発生しない
以下の実装パターンでは、遷移先の画面を開く際に、Application Readyイベントは発生しないようだ。
- ButtonのOn Clickに直接画面を指定する
- ButtonのOn ClickにClient Actionを指定し、その中で画面を指定したDestinationを配置
- ButtonのOn ClickにClient Actionを指定し、その中で画面の相対パスへのRedirectoToURLを指定したDestinationを配置
- LinkのOn Clickに直接画面を指定する
- ブラウザの戻る/進む操作
JavaScriptで画面遷移する場合：Application Readyは発生する
例えば、以下のコードを配置したJavaScript要素を利用した場合 (同じAppのNavigation2 Screemに遷移する）。
location.href = "Navigation2";
アドレスバーでEnter押したり、直接貼り付けたら：同じ画面であってもApplication Readyは発生する
これは、画面を表示している状態で、ブラウザのアドレスバーを変更せずEnterキーを叩いたり、ブックマークから開いたり、URLをアドレスバーに貼り付けた場合。
これは、ドキュメントにも記載がある（ブラウザのページ更新でも同じようだ）。
Note that if the user types or refreshes the URL of a screen directly in the browser address bar, On Application Ready is executed.
時間を置いてから画面遷移した：2時間程度では画面遷移してもApplication Readyは発生しなかった
一度画面を表示し、2時間ほど放置してから同じAppの別画面へ遷移させてみた。
この時、Application Readyは発生しなかった。
ただし、ODCのApplicationはSPAであることから、ブラウザのメモリにいろいろ載っており、それを前提に初期ロードが必要か判定しているはず。つまり、何からの理由でメモリから対象部分が失われていればApplication Readyが発生するかもしれないので注意。
他Appを開き、画面参照やRedirectToURLで戻ってくる：Application Readyは発生しない
App1とApp2があるとき、
- App1からDestinationを使ってApp2へ遷移
- ①App2からApp1のScreenを参照し、App2上からButtonクリック時に参照したScreenへ遷移させる
- ②App2上からButtonクリック時にApp1のScreenへサーバーからの相対パスで遷移させる
①②共に、On Application Readyは動作しなかった。
その他の技術的事項
ネットワーク処理を含めるとOn Application Readyが非同期になる
時間のかかるServer Actionを呼んでみたら、非同期に動いた（On Application Ready終了を待たずにUIが表示された）。
これは、恐らくClient Actionにサーバー処理を含めると非同期に動作するという仕様のため。
if a given client action contains server calls, like executing server actions or refreshing aggregates, this will also make the client action to be considered asynchronous.
On Application Readyで発生した例外はGlobal Exception Handlerでは補足できない
On Application ReadyにRaise Exceptionを配置し、かつException Handlerを配置しないと、以下のエラーメッセージのみが表示される（本来のUIは全く表示されない）。
There was an error processing your request.
これは、未捕捉の例外があるため。
に記載がある。Global Exception Handlerで捕捉されないということは、On Application Readyで例外発生の可能性があるときは、当Action自身で確実にException Handlerを配置する必要があるということ。
OnApplicationReady is a special event handler that is not covered by the Global Exception Handler. For that reason, error handling should be implemented in the action itself.
関連：OutSystems11の時に動作確認した時の記事
実装方針案
上記を踏まえると、以下の方針がよさそう。
- On Application Readyでは通信や長時間実行される処理は行わない
- Exception HandlerでAll Exceptionsを捕捉する
「画面リクエストごとに必要な処理は、On Application Readyでは行えない」
→Traditional WebのOnBeginWebRequestの代わりには使えないという点にも注意。