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Stripe Atlas で米国デラウェア州の法人を設立して、USのStripeアカウントを開設してみた

Last updated at Posted at 2023-02-08

こんにちは、小松です。Qiitaに初めて記事書きます。自分はWeb系のエンジニアで、近頃はアナログレコードのクラウドファンディングサービスやら、ナチュラルワインのレコメンデーションサブスクのサービスの開発・運用に関わっています。

みなさん、Stripe(ストライプ)使っていますか? Stripe は、Developer Experience をとても大事にする決済サービスです。私が運用に関わっている Qrates でもサービス立ち上げ当初から使わせてもらっていますが、シンプルで直感的なAPIやダッシュボード、豊富でわかりやすい(しかも翻訳も充実した)ドキュメント、使いやすいSandbox環境やAPIログへのアクセスの容易さなど、全体的にとても洗練されていて他のカード決済のサービスやPayPalとのDXの差が圧倒的だなと感じ、大ファンになりました。

使い始めた当時から歳月が経つ中で、Stripeのサービスもどんどん拡充していきましたが、そんな中、特に気になっていたサービスとして Stripe Atlas(ストライプ・アトラス) があります。Stripe Atlasは、他のStripeのサービスと少し毛色が違い、米国での会社法人設立手続きをサポートしてくれるサービスです。

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なぜStripeがそんなサービスを提供しているのか、というと、実はStripeが提供するサービスは、国ごとに少しずつ異なり、日本の法人や個人は、Stripeが日本向けに提供しているサービスのみ利用できるのですが、まだ日本では提供されていないサービスというのもあったりします(逆もあります)。そして、より多くの機能が提供され、特に新しい機能が先行して利用できるのが米国のStripeになっています。決済や金融のサービスには国ごとのさまざまな法規制などもあり、各国へのローカライズに時間がかかったり、そもそも提供が難しいということが裏事情としてあるようです。そういうことであれば、Stripeのサービスをフルで利用できるようにするために、いっそ米国に法人を作って、Stripe USのアカウントを開設できるようにした方が早いのではないか、というようなことで、Stripeが米国法人設立のサービスを提供しているらしいです(Webの説明を見るとそれだけではないようですが)。

今回、私が運用に関わっているQratesにおいて、Stripe Atlasを使って米国法人を作り、Stripe USアカウントを開設してサービスに投入するということを実際に行う機会がありました。この記事では、実際に米国法人ができるまでの流れ、その後にサービスで使う時に苦労したことなどを共有します。


Stripe Atlas 利用の動機

今回、Stripe Atlasを利用することになった理由は色々ありますが、(Stripeの新しい機能をいち早く使えるようにしたいなど)、主な理由は「通貨換算手数料を節約したい」「為替変動リスクを抑えたい」の2点でした。

実は、私たちの Qratesのユーザー・トランザクションの半数以上は米国で、その取引通貨も米ドルが使われています。従来、私たちは日本法人として事業をおこなっており、Stripeのアカウントも日本で作っていました。日本のStripeアカウントでサポートされている売上処理通貨は日本円のみとなります。Stripeは135を超える通貨を利用できるとしており、Stripe JPのアカウントからでも、日本円以外の通貨で決済を行うことは可能ですが、通貨換算手数料が追加で発生します。Stripe JPのアカウントに対しては、通貨換算が発生する場合は、決済手数料の3.6%に加えて、2%追加で手数料が発生することになるため結構大きな金額になります。しかも、受け取った資金から、その後また米ドルベースの支払いを行う場合、決済手段にもよりますが、そこでも同様に1~2%程度の通貨換算手数料が発生することになり、二重で発生します。米ドルベースの入金・米ドルベースの支払いの割合がそこそこ大きいので、この点は結構インパクトが大きいです。

また、2022年中には歴史的な円安も発生しました。米ドルベースで資金を受け取って、それを原価や、販売者の支払いに回す構造でありつつ、その間、資金を日本円で保持することになると、その間、米ドル換算の金額が大きく減少するということが発生しました。これも、米ドルで受け取った資金を米ドルで保持し続けられるようにすることで解決することができますが、Stripe JPアカウントではそれが難しく、Stripe USアカウントを開設することで解決することを目指しました。

Stripe Atlas での法人設立の申し込み

Stripe Atlas での法人設立の申し込みは、思いのほかスムーズでした。まず、Stripe JPアカウントでログインしている、Stripe Dashboardのメニューの、「その他」の中にある、「Atlas」の項目からStripe Atlasのサービスにアクセスします。

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基本的な流れはStripe Docsのビジネスを立ち上げる方法のページにまとまっているので、そちらに任せますが、今回やってみる中で迷ったところ、気づいたところをピックアップして共有します。

まず、いきなり会社組織の種類の選択から、馴染みのない言葉が出てきて戸惑いました。C Corporation (C株式会社) と、LLC から選択を迫られます。今回は、運用するときも手間が少なそうなLLCを選びました。簡単な説明がStripe Docsのこちらの記事 にあり、参考にしながら選びました。

その他入力した項目としては、会社名、資本関係、住所、創業者の情報、などです。ごくごく基本的な情報を入力して最後まで行き、審査中となりました。数日後に、Dashboardにアクセスすると、追加の情報の入力が必要と表示され、代表者のID画像をアップロードしました。その後はPreparing incorporationというステータスになりました。その後の進行は、StripeのDashboardのステータス表示で確認できました。

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通常1~2営業日と書かれていましたが、別途で、いつもより時間がかかる状態です、というような注記もあり、結果としては申し込みからおおよそ1週間後に設立完了の連絡がありました。

法人設立完了後どうなるのか

Stripe Atlas で設立できるのは、米国デラウェア州の法人です。あまり詳しくは知らないのですが、デラウェア州は法人設立の要件が緩いようで、手続きに必要な書類なども簡便で、また現地に居住していなくてもよいということで、Stripe Atlasのような米国法人設立代行サービスでよく利用されるようです。

申し込みから1週間経過後、米国での会社法人番号に相当する、Tax IDが発行され、AtlasのDashboardで確認できるようになりました。

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その他、設立の申し込みで作成された書類や、たぶん、日本でいう登記簿謄本的な書類のようなものも、一通り、AtlasのDashboardからPDFでダウンロードできるようになっています。

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また、おそらくAtlasで設立を申し込んだタイミングに、同時に、Stripe USのアカウントが申し込んだ会社の情報に紐づいた形で作成されていました。どの段階で利用可能になっていたのかはよくわかりませんが、設立完了した後は、Dashboardにログイン後、アカウント名の部分をクリックしていつでも切り替えられるようになりました。

Stripe Atlasの利用料

また、Tax ID発行され、設立完了したのと同時に、Atlasの利用料の$500.00 が 登録時に入力したクレジットカードに請求され、レシートメールが送られてきました。そう、Stripe Atlasのサービスフィーは $500.00 です。日本で法人設立しようとするともっとかかるでしょうか。資本金とかも特に払い込んでいません(資本金がなくても設立できるようです。LLCだけ?)。ちなみに、$500.00 よりも安く同様のデラウェア州の法人をオンラインで代行設立してくれるサービスも色々あるようです。(GoogleでStripe Atlasと検索すると、Stripe Atlasより安い、というような謳い文句のAdが色々出てきました)

米国銀行口座の開設

米国法人が設立され、Stripe USアカウントが作られましたが、USの銀行口座もStripe Atlas経由で開設できるようだったので、開設しました。Stripe Atlas のDashboardの Perks の項目に、色々なサポートサービスへのリンクが並んでいます。

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Mercury, Novo, Silicon Valley Bank (SVB) の3つが並んでいます。このうち、Novoは最近追加されたもののようで、私たちが試した当時は表示されていませんでした。それぞれリンクをクリックすると、各サービスのStripe Atlas向けのSign up ページやLPページが開きます。

Novoは当時候補になかったので、私たちはMercury と SVBを見比べて、Mercuryはそのままオンラインでsignupの手続きを進められそうだったところに対して、SVBは問い合わせフォームから連絡して、担当者からの返事を待つ必要がありそうだったので、ひとまずMercury Bankにて申し込みの手続きを進めました。

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Stripe Atlasで設立した米国法人があれば、すんなりいくだろう、と考えていたのですが、Atlasでの法人設立よりも入力項目が多く、特に、米国の電話番号の入力が必須なことがわかり、こちらも、オンラインで米国の電話番号を取得できるサービスを探して番号を用意して進めました。

色々突破すべきことはありましたが、なんとか口座開設が完了しました。Mercury BankのオンラインのUIや、オンボーディングフローは、とても洗練していて、ストレスなく進められました。また、Atlas経由で口座をサインアップしたことで、$500.00もらえるという特典まであったようで、Atlas での法人設立が実質無料でできてしまったことになり、これにもびっくりしました。

まとめ

と、上記のような流れで、米国法人設立 & Stripe USアカウント開設、米国銀行口座の開設までStripe Atlas経由で比較的すんなり進めることができました。今は、サービスでStripe JPアカウントとStripe USアカウントを併用して使っています。(日本円の取引はStripe JPアカウント、それ以外の通貨の取引はStripe USアカウント)

アカウントを複数に分けたことにより、多少面倒は増えましたが、為替換算手数料の節約につながりました。まだ、米国法人のメンテナンスのところはどれぐらい手間が発生するのかはわかっていませんが、その辺りも今後経験しながらレポートしていけると良いかなと思っています。

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