TempleOSは日本ではほとんど知られていません。実際、本記事の執筆時点ではQiitaの記事が1件も見当たりませんでした。TempleOSとはなんでしょうか。
TempleOS(テンプルオーエス)はアメリカの天才プログラマー、テリー・A・デイビスによって開発されました。デイビスは2003年ごろに、神からの啓示を受けてコンピューター上に第三神殿を建立することを試みはじめます。第三神殿とは、聖書に記された未来のエルサレムに存在するユダヤ教の神殿です。キリストが地上に再誕する前に出現すると考えられています。
こうしてできたのがTempleOSです。TempleOSはOSであり神殿でもあるのですね。
ここまで読んで、何を言っているのかよくわからないかもしれません。私にもよくわかりません。とにかく、そういうOSなのです。
では早速、TempleOSを動かしてみましょう。
VirtualBoxでTempleOSを起動する
本作業を進めるにあたり、以下の動画を参考にしました。本節では、この動画とほぼ同じ内容を記述していきます。
まずVirtualBoxをインストールしてください。
私はmacOS BigSurのバージョン11.6.3、VirtualBoxのバージョンは6.1.30を用いました。
続いて、TempleOSの公式サイト( https://templeos.org/ ) を開きOSの本体をダウンロードしましょう。
「Download the free, public domain, ...」と書かれた黄色いボタンの下にある「Downloads」を押してください。ダウンロードページ( https://templeos.org/Downloads/ )が開きますので、「TOS_Distro.ISO」を選択してダウンロードしてください。
続いてVirtualBoxを起動します。「新規(N)」をクリックし、仮想マシンの設定を行います。
「タイプ」に「Other」、「バージョン」に「Other/Unknown(64-bit)」を指定してください。
メモリーサイズは2GBに指定しました。続く「ハードディスク」、「ハードディスクのファイルタイプ」「物理ハードディスクにあるストレージ」「ファイルのサイズと場所」はデフォルトのまま進めていき、「作成」を押してください。これでVirtualBox上に仮想マシンが作成されます。
早速「起動(T)」を押して仮想マシンを起動しましょう。
ここでディスクの選択ウィンドウが表示されるので、さきほどダウンロードしたTOS_Distro.ISOを選択し、「Start」を押します。
するとインストーラーが起動しました。
左手のウインドウに質問が表示されていますので、yを押して進めていきましょう。
最後に「Reboot Now」と質問がされるので、yを選択するとリブートされます。
しかしこのままだと、再びインストーラーが起動してしまいます。不要となったインストーラーを削除する必要がありますので、Ctrl-qで一度仮想マシンをシャットダウンしましょう。
続いて、VirtualBoxマネージャーから「設定(S)」をクリックし、「ストレージ」タブを選択。「ストレージデバイス」からTOS_Distro.ISOを削除します。
「TOS_Distro.ISO」を選択し、下の×ボタンをクリックすると消えます。
再び起動すると以下のように選択肢が表示されます。
キーボードで1を押すと「1. Drive C」が選択され、いよいよTempleOSが起動しました。
「Take Tour」をするかの選択肢が表示されますが、Tourは後でも戻れるためnを押しましょう。「Ctrl-m」が、メインメニューが開くためのコマンドです。早速「Ctrl-m」を押してください。
これがTempleのメインメニュー画面です。TempleOSのインストール方法は以上です。神殿と呼ぶにふさわしい、たいへん美しいUIですね。
TempleOSのアプリケーションで遊んでみよう
ご覧のように、TempleOSはCUIとGUIを合わせたような独特なUIを持っています。
一見CUIのようですが、カーソルはテキストエディタのようにテキスト上を自在に移動でき、また、そのテキストのなかにアプリケーションを起動するための下線付きテキストやアイコンが並んでいます。奇妙にも、Deleteキーを押すとそれらを消せてしまうのです。「失敗したかな?」と思っても大丈夫。「FastReboot」をクリックすることで素早くOSを再起動し、元に戻すことができます。
TempleOSは神殿ですので、神的コマンドが数多く搭載されています。例えばF7キーで実行される「God Word」では、聖書から抜粋されたと思われる単語がおそらくランダムに入力されます。
TempleOSを実際に操作したときの雰囲気は、以下の動画を見るとわかりやすいでしょう。
では早速、TempleOSに搭載されているアプリケーションを見ていきましょう。
TempleOSには、一般的なOSにあるようなサードパーティの便利なアプリケーションは一切ありません。
以下は「Fun Games」(たのしいゲーム)です。見事なピクセルアートのアイコンですね。「Varoom」などいくつかは3Dグラフィックのアニメーションで表現されています。
以下は「UnFun Games」(たのしくないゲーム)です。たのしくないゲームとはどういうことでしょうか。
他にも「Code Scraps」と「Nongames」があります。つまり、ほとんどゲームなのですね。
「Varoom」 をクリックし、起動してみます。意外にも、3Dグラフィックのプリミティブなレースゲームがはじまりました。
ルールはよくわかりませんが、気づくとゲームオーバーになっていました。
エスケープキーを押すとアプリケーションは停止し、メインメニュー画面に戻ります。
続いて「Titanium」を起動してみます。
緊張感のある縦スクロールシューティングゲームです。残念ながら、私の環境では起動して間もなくフリーズしてしまいました。
最後に...テリー・A・デイビスについて
TempleOSは100%のオープンソースソフトウェアであり、C言語の方言である「HolyC」(ホーリーシー)で書かれています。聖なるC言語なのですね。コードはgithub( https://github.com/cia-foundation/TempleOS )にありますので、簡単に読むことができます。(githubはHolyCをサポートしていませんので、ダウンロードして手元のエディタで開く必要があります)
このたいへん奇妙なOSを作り上げたデイビスは、2018年、48歳のおりに電車にひかれて亡くなりました。デイビスは早くから統合失調症を患っており、晩年はホームレスとなりました。そのためTempleOSは、アウトサイダーアートとして評価されるときもあるようです。
デイビスの事績をわかりやすく紹介した動画がありましたので、記載しておきます。