はじめに
データベーススペシャリスト試験(2021年秋)に合格したので、体験記録をまとめました。
これから受験を考えている方に少しでも参考になればと思います。
データベーススペシャリスト試験とは
データベーススペシャリスト試験は、IPA(情報処理推進機構)の実施する情報処理技術者試験のうちの一つで、データベースに関する知識・技術を問う試験です。
試験の対象者像については、以下のように記されています。
企業活動を支える膨大なデータ群を管理し、パフォーマンスの高いデータベースシステムを構築して、顧客のビジネスに活用できるデータ分析基盤を提供するデータベース管理者やインフラ系エンジニアを目指す方に最適です。
具体的には以下の能力を試すための試験と位置付けられています。
高品質なデータベースを企画,要件定義,開発,運用,保守するため,次の知識・実践能力が要求される。
① データベース技術の動向を広く見通し,目的に応じて適用可能な技術を選択できる。
② データ資源管理の目的と技法を理解し,データ部品の標準化,リポジトリシステムの企画・要件定義・開発・運用・保守ができる。
③ データモデリング技法を理解し,利用者の要求に基づいてデータ分析を行い,正確な概念データモデルを作成できる。
④ データベース管理システムの特性を理解し,情報セキュリティも考慮し,高品質なデータベースの企画・要件定義・開発・運用・保守ができる。
※IPA データベーススペシャリスト試験概要 - 対象者像・期待する技術水準より引用
さらに、今日では機械学習やシミュレーションなど「データの価値」が注目される分野でもデータベースの技術を学ぶことが重要視されており、その目的で受験する方もいます。私もこのような分野で必要性を感じたことが受験の動機です。
試験対策など
データベーススペシャリスト試験は、午前Ⅰ・Ⅱ、午後Ⅰ・Ⅱの4つのペーパーテストを受験する必要があり、すべての試験で基準(60%以上得点)を満たす必要があります。近年の合格率は13%~18%程度となっています。
以下、私の行った試験対策を書きます。
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対策期間
1ヶ月半程度 -
使用した教材
翔泳社-情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ、TAC出版-ALL IN ONE パーフェクト・マスター データベーススペシャリスト、インプレスブックス-徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書、データベーススペシャリスト過去問道場、公式過去問
※URLは2022年1月現在のものです。新版が出ている可能性があるのでご注意ください。 -
得点
午前Ⅰ:免除、午前Ⅱ:78%、午後Ⅰ:72%、午後Ⅱ:72% -
試験対策
私の勉強方法は全般的に正攻法で、参考書で基礎と傾向をある程度頭に入れた後は、過去問ベースで勉強していました。ただSQLは過去問だけでは不十分かと思い、参考書で勉強しました。以下に個別にまとめます。 -
試験対策 - 午前Ⅰ
午前Ⅰは四肢択一(マークシート方式)の試験です。高度試験・情報処理安全確保支援士試験に共通の問題で、試験時間は50分で問題数は30問です。
基礎的な内容ですが、情報処理に関して広い範囲が問われます。
この試験には免除制度があり、私は免除制度を利用しました。(免除に関してはIPA 免除制度の概要を参照)
午後Ⅰから受験される方は、応用情報技術者試験の対策や高度試験午前Ⅰ向けの参考書を一冊買って対策されることをお勧めします。範囲が広いので対策をしないのは少し不安があります。
私は前年度に安全確保支援士試験を受験した際に、
『翔泳社-情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ』を使って勉強しました。
本書には午後Ⅱの範囲も入っていますが、午後Ⅰの範囲を中心に勉強すれば広い範囲の過去問学習ができると思います。 -
試験対策 - 午前Ⅱ
午前Ⅱも四肢択一の試験で、データベースの基礎的な事項が問われます。試験時間は40分で問題数は25問です。
私は、『ALL IN ONE パーフェクト・マスター データベーススペシャリスト』を使い、基礎的な部分から勉強しました。本書の第一部では午前Ⅱで出題される必要事項がまとまっています。基本/応用情報技術者試験の勉強をされた方であれば、勉強時間はそこまでかからないと思います。
ある程度知識をつけてからは、"データベーススペシャリスト過去問道場"で勉強しました。過去問が網羅されており解説も丁寧なのでお勧めです。何よりブラウザ上のインタフェースが使いやすいです。
午前試験は基礎的な過去問対策で手堅く合格点に届きます。 -
試験対策 - 午後Ⅰ
午後Ⅰは記述式の試験です。大問が3題出題され、うち2問を選択回答します。試験時間は90分です。
私は『ALL IN ONE パーフェクト・マスター データベーススペシャリスト』と、実際の"過去問"で勉強しました。
問題にはある程度パターンがあるようですが、教科書レベルの内容は全体的にしっかり理解しておくことが必要だと思います。範囲(※)は広いですが、この中でも概念データモデル、物理データベース設計、アクセス性能、データ資源管理、SQL、排他制御のあたりは過去問でもよく見かける分野だと思います。また、SQLは頻出で知らないとまず解けないので、勉強しておいたほうが良いです。
私は午後Ⅰは苦手意識がありました。どの分野もそれなりに勉強しておかないといけない、問題量が多く回答時間内に解ききれないなど..。実際、本番でも一問目の概念データモデル作成の範囲で60分使ってしまい、2問目は30分で解くことになりました。
時間管理の反省はありますが、どうしても一方の問題に時間がかかる場合もあるので、焦らず得点できる部分で得点するという姿勢も大切かと思います。その点で、頻出分野を自信を持って回答できるように対策しておくこと、過去問を時間を測って解いて慣れること、という正攻法がやはり一番だと思います。 -
試験対策 - 午後Ⅱ
午後Ⅱは記述式の試験です。大問が2題出題され、うち1問を選択回答します。試験時間は120分です。
この試験は近年、問1が”物理データベース設計”、問2が”論理データベース設計”という構成が続いています。私は午後Ⅱに手を付けたのが2週間前くらいで、問2を解くと決めて”論理データベース設計”だけを過去問で勉強しました。解説は『インプレスブックス-徹底攻略 データベーススペシャリスト教科書』の付録を読んで理解しました。この参考書は内容が丁寧で網羅的なのでおすすめです。
問2は10ページ以上の問題文を読みながら概念データモデルとスキーマに落とし込んでいくので、過去問で練習するのが一番の対策だと思います。データモデルは午後Ⅰよりも複雑なので、文章を注意深く読んで着実にモデル化していく必要があります。この点は"習うより慣れよ"です。
※午後Ⅰ・Ⅱの試験範囲 試験要項より引用
1 データベースシステムの企画・要件定義・開発に関すること
データベースシステムの計画,要件定義,概念データモデルの作成,コード設計,物理デー
タベースの設計・構築,データ操作の設計,アクセス性能見積り,セキュリティ設計 など
2 データベースシステムの運用・保守に関すること
データベースの運用・保守,データ資源管理,パフォーマンス管理,キャパシティ管理,再
編成,再構成,バックアップ,リカバリ,データ移行,セキュリティ管理 など
3 データベース技術に関すること
リポジトリ,関係モデル,関係代数,正規化,データベース管理システム,SQL,排他制御,
データウェアハウス,その他の新技術動向 など
まとめ
筆者はデータベースに関する予備知識はほぼなく、この試験を受験した目的は知識を得ることでした。企業データセンターの管理システムなど細かい設定は問題には出てきませんでしたが、データベース技術の基礎となる勉強ができたと思います。
読んでくださってありがとうございます。この記事が受験を考えている皆さんのお役に立てば幸いです。