仕事で翻訳ソフトMemoQ から機械翻訳のDeepL を使うことがあり、使い方をメモっておきます。
MemoQ は、翻訳ソフトの中では割安なもので(業界標準のTrados と比べると)す。翻訳する内容が多くなってきて、機械翻訳(Machine Translation)にしてさぼろうかと重い腰を上げた次第です。
対象は、複数ファイルのコンテンツを継続的に安定して翻訳するプロのローカライズ向けです。ファイル群を取り込む、翻訳ソフトで機械翻訳であるDeepL で翻訳をかける、翻訳ソフトで翻訳内容を翻訳メモリに保存、翻訳済みのファイルをエクスポートするという形です。すでに使っている人にとっては当然の内容なので、ご容赦を。
機械翻訳がなかなか運用に乗らない?
そもそも機械翻訳はブレークスルーはすでに5年前ぐらいで、みなさんもGoogle Translate とかDeepL とかをブラウザベースで使っていて「ほぼ完ぺきじゃん」という状況だと思います。しかし、ローカライズ業務などではいくつかハードルがあります。それを考えると「翻訳ソフト+機械翻訳」というやり方がいいのかなと思います。ほかのやり方をそれほど勉強したわけではないので、もっと便利なやり方があれば教えてください。
翻訳対象が一つのファイルではないし、ファイル内は文字だけではない
テキストだけを翻訳してその場で読めればいいor翻訳テキストをコピペ、という個人利用の世界なら問題はないのですが、業務としてのローカライズの場合はHTML ファイルやXML ファイルがたくさんあるものをテキストだけを翻訳し、元のファイルの中で動くようにしないといけません。テキスト部分をチマチマ機械翻訳のブラウザUI に入れて、翻訳結果をコピペするということでは効率があがりません。そこで、ファイルごと持ってきて、翻訳後のファイルをエクスポートしてくれる翻訳ソフトの機能に乗っかりたくなります。
安定・継続的に翻訳を続けないといけない
翻訳は一度きりではなく、ドキュメントなどは追記や変更を加えながら継続的に続いていきます。機械翻訳はある程度気まぐれですので、毎回同じ訳が返ってくるわけではありません。「一度確定させた翻訳を保持しながら追記や変更に対応していく」というのもの翻訳ソフトが便利なところです。
プログラミングしたくない
翻訳者は文系多いんすよね(ステレオタイプ)。「機械翻訳はAPI で呼び出して使うのがデフォだろ」というご意見はもちろんありますが、翻訳担当者でもなんとかコードを書かずになんとかできないものか?
ということで、継続的に安定して行う本格的ローカライズ業務で使えるMemoQ + DeepL MT の使い方です。
使用するソフトウェア
- MemoQ Cloud を使いました。MemoQ のデスクトップ版でもできる気はしますが確認していません
- DeepL のPro Advance
DeepL 側の準備
DeepL は、「CAT ツールへの組み込み=MemoQ への組み込み」が可能なAdvanced プランより上を使う必要があります。セキュリティも無料版と比べてしっかりしているので安心です。
おそらくですが、CAT ツール経由でもAPI を使っているので、月に50万ワードという制限があるので、それ以上の利用を想定する場合はAPI Pro プランを買う必要があるでしょう。
https://support.deepl.com/hc/ja/articles/360020685440-DeepL-API-Pro
DeepL にログインした状態で右側の自分の名前のところから[アカウント]→[アカウント]タブ→右下の[翻訳支援ツールのプラグインで使用する認証キー]から認証キーをコピーしておきます。いわゆる外部からAPI アクセスができるようにしておくということです。
MemoQ でのMT(機械翻訳)プラグインの設定とプロジェクトでの利用
では、実際に翻訳ソフトウェアのMemoQ でDeepL プラグインをつかっていきましょう。
DeepL プラグインをMT(機械翻訳)リソースに登録する
まずは、左上の[MemoQ]と書いてあるところから[リソース]を選択します。リソース画面の下に[MT 設定]があるのでここを開きます。[新規作成]をクリックすると新しいMT 設定の画面が開きます。この例ではオンラインを選択して、任意の名前を付けます。OK を押してリソース作成!
次に機械翻訳の種類を選択する画面になります。今回はDeepL MT Plugin を選択します。チェックボックスをチェックして、⚙マークをクリックします。
外部のプロバイダーにデータを送るよというワーニングが出ますので、OK をクリック。ちゃんと社内のデータを外部にだすので、ちゃんと社内手続きをしてくださいね。
DeepL MT Plugin がインストールされます。DeepL MT のプラグイン設定画面が開きます。Authentication のところで認証キーを入力します。DeepL のアカウント画面で取得できる認証キー文字列をペーストして[ログイン]ボタンをクリックします。
公式ドキュメントの通りにRequest Format はXML、形式は規定でOKします。これでDeepL アカウントとMemoQ のMT 機能をリソースとしてつなげることができました。
プロジェクトで実際にMT を使う
では、さっそくプロジェクトでDeepL MT を使っていきましょう。普通にプロジェクトを作成して翻訳するソースドキュメントをプロジェクトに読み込ませます。この辺のMemoQ の使い方は公式ドキュメントを見ていただければ大丈夫です。DeepL による機械翻訳は、[前翻訳(Pre-Translate)]のフェーズで使うことになります。いわゆる前翻訳フェーズでは過去に翻訳した結果と近いテキストの自動翻訳や用語ベースを使った仮翻訳をしてくれるフェーズですが、ここで勝手に機械翻訳を当ててくれる形になります。
MemoQ では、ドキュメントをプロジェクトに取り込んだ後、翻訳前にリソース設定を行います。プロジェクト画面で[設定]を開き、一番右側の[MT]の四角いロゴを選択します。そこで先ほど作成したDeepL のMT リソースが表示されているので、これをプロジェクトで使うMT リソースとして設定します。
前翻訳に進みましょう。[準備]タブから[前翻訳]ボタンをクリックします。前翻訳は、特定のソースファイルを選択しても、プロジェクト全体に対しても行うことが可能です。
前翻訳の設定画面が開くので、機械翻訳の項で、[TM または資料の一致がない場合には機械翻訳を使用]にチェックを入れます。つまり事前に翻訳してTM(翻訳メモリ)に合致しない場合は、すべてDeepL の機械翻訳を入れてくれます。過去に翻訳したものはTM(翻訳メモリ)を先に充ててくれるので変に変わることなく、新しい場所だけ機械翻訳を当ててくれるという、まさにローカライズとして欲しい仕様です。
MT リソースを選択するために[MT とAIQE サービスを選択]をクリックします。
前翻訳で使う言語とリソースモジュールを選択します。日本語を選択。
前翻訳の設定画面に戻ると、jpn がMT リクエストとして設定されています。では、満を持して[OK]をクリック。
わーい。前翻訳でDeepL を呼び出しています。結構時間がかかりますので、余裕でコーヒーでも飲むかストレッチでもして待ちましょう。DeepL とMemoQ が翻訳作業をしてくれているわけなので、さぼっているわけではありません。機械翻訳万歳!テクノロジー万歳!
前翻訳Including 機械翻訳が終了しました。しかし、この状態ではMemoQ に前翻訳が入っただけなので、全部翻訳されていますが、まだエクスポートできません。確認したい方は内容を確認し、私のようにソフトウェアを信じる方は、そのまま[準備]タブから[確定して更新]ボタンをクリックし、前翻訳と機械翻訳の内容を確定します。
あとは、プロジェクト画面から翻訳後の結果をエクスポート(元の文章を翻訳内容に置き換えてファイル形式で戻す)処理を行うだけです。
まとめ
ということで、翻訳ソフトのMemoQ でのローカライズ作業にDeepL 機械翻訳のプラグインを使えるようにする方法を書きました。かなり初歩的な内容になりましたが、ゴリゴリと翻訳ソフトでのローカライズをやって来た方で、「そろそろ機械の力を借りたい」という方に見ていただければと思います。もしくは、ゼロからローカライズ業務を行う方にもおすすめです。
- 過去に行った翻訳内容がメモリとして使いまわせるので機械翻訳でも毎回翻訳しなおして変わってしまうことがない
- プロジェクトにファイルのままインポートできて、ファイルのままエクスポートできるのでコピペ不要
- コーディング不要。まあ、ツール操作は必要だが
- 安い(DeepL4500円/月、MemoQ も翻訳ツールの中では安い)
自分がやったことのメモ的なものなので、ほかに便利なやり方があれば、ぜひ教えてください。