はじめに
LITALICOの亀田です。エンジニアしてます。
- Qiita: @kamesennin
- X(Twitter): ka_me_sen_nin
エンジニア採用も大事な仕事の一つとしてやっています。
今まで1万人近いエンジニアの方々のご経験を見て、1,000人以上とお話してきました。
何を書いたか
LITALICOでは新卒/第二新卒/中途に限らず(大体)通年でエンジニア採用を行っていて、採用面接の中で「どんな質問をどんな意図で行っているのか」を整理してみました。
※実際には、弊社の面接で以下質問事項を「網羅的に一方的にしつこく聞いて見極める」などはございません。
※「お互いが今一緒に働くことが良いと思えるか?」が採用プロセスの本質で、まずは弊社のことをお伝えさせて頂き、皆様に今後の環境に求めることや今までのご経験を伺い、「どういったポジションや環境が弊社に存在するか、そこはご希望に沿えているか?」、を丁寧にご一緒に考えていくスタイルです^^
※あくまでご経験からマッチングを図るための手段として以下のような質問事項を活用する、といった役割です。
なぜ書こうと思ったか
理由1:社内ドキュメント
- LITALICOのエンジニア採用はどんな観点で見ているのか/見てきたのか、の目線を揃える(別途リストで整理していますが、よりカジュアルに読めるように記事化)
理由2:外部採用施策
- 情報にオープンな会社でありたい。何を大切にしている会社なのかが、伝わる一端となれば嬉しい
その他補足
- 質問内容を共有による面接の採否に大きな影響は出ない(本記事で載せている質問はあくまで入り口の質問)
具体的に以下で何を書くのか
- そもそもどういう組織か
- どんな人を採用したいか、なぜその観点か
- どんな観点で見ているのか、なぜその質問をしているのか
の順番でいきます。
1. そもそもどういう組織か
会社全体について(コーポレートサイト)
組織づくりで大切にしている思想
- 全社でのエンジニア組織の立ち位置
- 「エンジニアリング本部」という機能型組織の部門が事業部と並列で存在し100名程度のエンジニアやデザイナーが所属
- エンジニアリング本部の役割
- エンジニアリングを軸として以下に責任を持つ
- 1.各部門に必要な開発・制作人員の供給と提案、全社の未来を見据えた戦略的なケイパビリティ向上
- 2.各部門に必要な短期から中長期を見越したシステム・制作物の質・速度の担保
- 3.専門スキルを軸に育成・目標・評価・マネジメントでの組織全体のパフォーマンス最大化
- 4.所属する全員の専門家としてのキャリアと自分らしい働き方の実現
- エンジニアリング本部のミッション
- ビジョン達成に必要なあらゆる困難をエンジニアリングとデザインの力で解決するプロフェッショナル集団
- エンジニアやデザイナーの内製化組織を強化する理由
- 正解や前例が少ないLITALICOの関わる領域では、法律や慣習の理解が必要で、顧客との対話を通し、プロダクトやビジネスの仮説検証を素早く大量に行うこと、また社内の多様な専門家や社外組織(自治体・福祉施設・学校・病院・企業・家庭)を巻き込み、最適解を導くことが求められる
- 業界もテクノロジーも変化が激しく、我々自身も常に進化が必要。そんな中では我々自身が長い時間をかけて共に考え、向き合い続ける必要がある
2. どんな方が今のLITALICOにマッチするか
どんな観点を大事にしているか
- ポータブルスキル:多様な人とコミュニケーションを取って巻き込み難しい課題解決を行うために必要
- 1-1. 日本語理解力
- 書類/文章
- 文章が構造的である、ルールに則った記載方法が出来る
- 文書が読み手に配慮されたわかりやすい構成になっている
- 質問に対して過不足なく答えている
- 口頭
- 質問に対して結論から言い、過不足のない適切な回答が出来ている
- 難しいこと/専門領域を簡単な言葉を使って説明が出来ている
- 質問の意図がわからない場合に、認識を揃えるための逆質問が出来ている
- 書類/文章
- 1-2. 構造化思考力
- 考えたことない問いにも、一定の規則に基づいた論理構成を展開して説明出来る
- 微細に考えたり、俯瞰したりとフレームを変えながら思考できる
- 1-3. 課題解決力
- 課題解決の一連の流れを異なる問題に対して正しく行える(特に課題特定力)
- 事実を集め、経験や歴史を含めて、論理的に仮説を立てられる
- 計画で終わらず、行動/検証まで自ら行えている
- 1-4. 学習能力
- 成果を生み出すために学習の質・量を向上させるための自分なりの方法論を確立している
- 自分の興味は好き嫌いが学習効率や意欲に影響でずに、目的を理解して安定的に学習できる
- 1-1. 日本語理解力
- テクニカルスキル:(それぞれの得意があるが)何かしらの尖った専門性が必要
- 各職種ごとに社内の等級要件(スキル要件)と期待値(年収)を満たしているか
- パーソナリティ:未知への変化や挑戦を、良き仲間として共に楽しめることが必要
- 3-1. 誠実/素直/謙虚さ
- 思いやりがある。相手の気持ちに立って行動が出来る
- 誰からも学び、自らを変えられる
- 「知らない・分からない」も正直に言える
- 3-2. 目的思考
- どんな小さなことでも目的を持って取り組める
- 目的を見失わない、見失いかけでも立ち返られる
- 個人からはみ出て組織やチームの目的のために思考/行動ができる
- 目的のために、粘り強く考え、矛盾を越えて新しい解を導ける
- 俯瞰視点(広い視野と高い解像度)が持てている
- 3-3. ストレス対応力
- 自分にとってのストレスの理解が出来ている
- ストレスがかかった時の解消法が持てている
- 自分の弱さが見せられる、必要なサポート体制を理解できている
- 3-4. 自己理解
- LITALICOで自分のしたいことがきっと叶えられると思える
- 健康的にパフォーマンスを出し続けられる環境が分かる
- 3-1. 誠実/素直/謙虚さ
要件を決めるときの思想
- できるだけ多様な人材が集まる組織でありたい。経験業界や技術内容は基本的には気にしない
- 今の組織にある育成体制として育てられる部分は気にしない(ex.ドメイン知識、特定のプログラミング言語)
- 採用実績からコンピテンシーを出して項目の抜け漏れと修正を定期的に行う
- 完璧に満たす必要は一切ない(実際難しい)。「その人らしい強み弱みのバランス」と「想定ポジション」を比較した時に、上記観点を特に良く見ることで、入社後の双方想定外のミスマッチが起きづらくなると考えている
3. どんな観点で見ているのか、なぜその質問をしているのか
ようやく本題です。
※本記事執筆(2019年12月)から2年程度運用した結果、未熟な自分の結果、良くない観点で見てしまっていたことがいくつもあったと認識し、2021年10月に大きくアップデートを行った。
※参考のため、以前の観点は取り消し線で残している
書類
観点1. 情報の量
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一定の情報量があるか情報量が不足している場合、所属組織が優れていても基本NG (とりあえず会ってもお互いミスマッチと感じる確率が高くなる)例えば「案件A:Nヶ月:要件定義、設計、開発」だけはNG1案件に対して「PJの概要、具体的な役割」が150-200文字以上は書かれていないと判断しづらい感覚
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一方ちゃんと見るのは、出来るだけ新しく、ボリュームある案件結構多くの書類を見るから、1人あたりは出来るだけ少ない情報量で決めたい出来るだけ新しい中で、自信ある/貢献したPJ/大きな失敗をしたが頑張ったPJなどを中心に見る
- 2021年10月にアップデート
- エージェントの方に紹介頂く場合/応募頂く場合
- 情報量は大体充実しているのでここでは論点にしない
- 媒体などからスカウトを送る場合
- 就職活動への積極性も人それぞれ、忙しく書く余裕がない場合も多いため、それだけで判断するのは時期尚早
- 最低限必要なことは「どれくらいの年月、どういった役割で、どんなPJやプロダクトに取り組んでいたのか」である。数十文字程度でも最近はアプローチさせて頂く
- 書類の情報量が少なくてもメディア露出などで知っている場合は他からの情報で役割の重要性や難しさはある程度判断出来るため
- 一方、あまりメディア露出していないかつ書類の情報量が少ない場合はそれだけで判断するのは難しいので、現在の面接人員的に、一旦お見送りにするようにしている
- エージェントの方に紹介頂く場合/応募頂く場合
観点2. 情報の質
- 一定のフォーマットに沿って見やすく書かれている
- 「概要、役割、使用言語、学び」などフォーマットの形はその方の書きやすい形で良い
- フォーマットがバラバラで、だらっと書かれている記載はNGの場合が高い(issueやドキュメントを見やすく書けるかに近い印象)
-
細かいが、職歴の「上が新しく、下にいくほど古い」になっている10年前の経験より、この1-2年何をしたかの方がマッチング精度の確認では重要恐らく「相手への思いやり、読む人をイメージ出来るか、細かな体験に気を使えるか」が表出される上から下にかけて新しくなる職歴はその後の面接NGな場合が実績としても多かった
- 2021年10月にアップデート
- とは書いていたものの、過去の積み重ねで順番を書き直すのが大変で、そのままになっている場合はあると考える
- 上記のような細かな項目のみで、マッチングの機会を捨てるのは大きな損失と判断してあまり気にしない(ただもちろん見易くなっていると素敵だなと思う)
面接
観点1. 過去の経験
- Q. どんなサービスを作ったのか・関わったドメインの市場環境を簡単に教えてください
- 意図:関わったサービスへの理解度(日本語理解力、専門性の高さ)
- 意図:はじめて聞く人に概要が分かりやすく説明出来るか(構造的思考力)
- Q. その中での組織課題、事業課題、業界の課題は何か教えてください
- 意図:技術だけでなく、関わる領域への理解をどこまで主体的に学べるか(日本語理解力、専門性の高さ)
- Q. その内、一番自信のある期間はいつ、どんなメンバー構成で、その中で担った役割は何か教えてください
- 意図:候補者を知る、深堀りする話題を抽出
- 意図:はじめて聞く人に概要が分かりやすく説明出来るか(日本語理解力)
- Q. 特に上手く問題解決出来た点は何で、それは何が問題で、なぜそのアプローチをして、成果は何と定義して、何が成果で、なぜその問題の優先度が高かったか教えてください
- 意図:どういうプロセスで問題解決するのか
- ex. ファクト→課題特定→解決策抽出→意思決定→実行→振り返り
- 意図:事業や経営への成果まで考えて動けるか(したいことではなく、必要なことが行えるか)
- 意図:どういうプロセスで問題解決するのか
- Q. 解決が困難だった課題に対してとったアプローチは何か、なぜその手段を取ったのか、改めて考えて更により良い方法はあるか教えてください
- 意図:どれだけの難易度をこなしてきたか
- 案件の難易度 << 採用要件の難易度の場合は難しいかもしれない
- 意図:上と被るが、質問の仕方を変えて別の内容を引き出したい
- 意図:どれだけの難易度をこなしてきたか
- Q. 成果が出た中で、周りに助けてもらった/環境が良かったと感じたものは何か教えてください
- 意図:環境要因とその人の成果を分けて理解したい、どこまで謙虚に捉えられているか
- Q. 組織の中で自分はどういう貢献する人か、どういうサポートが必要か、教えてください
- 意図:自分の能力が発揮されるポイントを理解しているか
- 意図:成果の内、環境要因が大きかったことが結構あるので聞き逃さないようにするため
- Q. 工夫して頑張ってみた/リスクを取ってみたが、上手く行かなかったことは何で、そこから何を学んだか教えてください
- 意図:振り返ることが出来ているか
- 意図:出てこない人は謙虚さが疑わしい、全部上手くいくことはないはず
- Q. 一番大きな権限と責任範囲を持っていた内容は何か、その権限の中で最大の意思決定は何で、なぜそれか、効果はどうだったか、反省点は何か、教えてください
- 意図:与えた権限の中でどういう意思決定が出来るか、どこまで任せられるか
- Q. 過去の意思決定で、矛盾の中で正しいかどうか最も判断に困った内容は何か、そこでどう感じたか、どんなプロセスで決まったか、戻るとしたらどうするか教えてください
- 意図:矛盾に対してどう立ち向かえるか、どんな考え方を持つか
観点2. 専門性深堀り
- Q. 使ってきた言語、サーバーの構成はどうで、なぜその構成で、もっと良い方法あるか、現在の課題は何か、教えてください
- 意図:得意領域、苦手領域の確認
- 意図:技術的な向上や理想形を考えられるか
- Q. 出てきた技術単語についてwhat?why?をいろいろ聞かせて頂くので、教えてください
- 詳細:設計や実装方針や技術選定への候補、メリデメ(なぜ良いか、何が解決されるか)、導入理由
- 詳細:単語の意味、その単語で出てきた単語の意味を更に聞く、それを繰り返す
- 意図:どんなプロセスで判断をする人か(どれだけ任せられるか)
- Q. 設計、開発をするときに大切にしている思想は何か、なぜそれを大切にしているか、具体的に過去の事例でその思想でどういう成果が出たか、逆に失敗した例はあるか教えてください
- 意図:学びを体系化できるか、どんな一貫した行動を取れるか
- 意図:思想だけじゃなくてどこまで実践出来ているか、実現可能性があるか
- Q. プロダクト/プロジェクトマネジメントで大事にしている思想は何か、なぜそれを大切にしているか、具体的に過去の事例でその思想でどういう成果が出たか、逆に失敗した例はあるか教えてください
- 意図:学びを体系化できるか、どんな一貫した行動を取れるか
- 意図:思想だけじゃなくてどこまで実践出来ているか、実現可能性があるか
- Q. (ex.PMの場合)権限はどこまであったか、目標は何か、今の戦略と課題は何で、まずどうすべきと考えているか教えて下さい。
- 意図:どの範囲まで任せられるのか、どこまで考えられるのかを判断
- Q. 各技術(ex. ruby,php,react.js/vue.js/アーキテクト/インフラ)は、組織内で最も詳しい人たちから深堀り
- 意図:どこまでその技術で課題解決が行えるか(深い所まで一問一答を繰り返す)
- Q. 会社からどんな環境を用意できれば、成果を出せる自信があるか、逆に何がないと苦労しそうか教えて下さい
- 意図:何で成果を出せて、どこが苦手かのスキル面での自己理解を見る
- Q. 一般的にはこう言われているが、実はもっとこうじゃないかって考える開発や組織思想は何かあるか教えて下さい
- 意図:スタンダードを学びつつ、自分の思想を持てているか、日々考えられているか
- Q. 解答に対して正解っぽくても「なぜそれが解答になる」と質問させて下さい
- 意図:当たり前にとらわれず、その場でのベストな手法をゼロベースで丁寧に考えられるか
観点3. ケース
- Q. xxx.jpのURLをブラウザから叩いてページが表示されるまでに起きていることを出来るだけ詳細に教えて下さい
- 意図:webアプリケーションの得意領域、苦手領域の確認
- Q. xxx.comの表示が遅いのが気になる、想定される問題と解決のアプローチを考えうる限り教えて
- 意図:問題解決能力の確認
- 意図:webアプリケーションの得意領域と苦手領域の確認
- 良い例:トラブルシューティングのための思考のヒント
- Q. テレビ販売業者の管理者が使うウェブサイトを作る場合のデータモデル、ワイヤーフレームを簡単に(ホワイトボードへ)教えて下さい
- 意図:設計周辺の得意領域、苦手領域の確認
- Q. LITALICOのとあるプロダクト/組織で現在こんな問題があって、あなたに任せたいが、どうやって解決する?必要な情報は可能な限りお伝えするので、教えて下さい
- 意図:どんな問題解決をするか
- 意図:どこまで組織やプロダクトにイメージが湧いているか
- Q. リーダーの立場で開発速度を上げて欲しいというオーダーがあった時にどう進めるか教えて下さい
- 意図:PJの推進経験の確認(一般論で終始しないか、状況を自ら定義し、具体化して言えるか)
観点4. 人間面
- Q. イラッとする時やモチベーションが下がる時はいつか、なぜそうなって、どう対処するか、どうしても無理な時はどうするか教えて下さい
- 意図:ネガティブな感情になるトリガーを知り、組織とのマッチングを見る
- Q. モチベーションが上がる時は、やっていた良かったと感じる時はどんな時か教えて下さい
- 意図:ポジティブな感情になるトリガーを知り、組織とのマッチングを見る
- Q. (他のメンバーとの面談後)感想はどうか、一緒に働きたいと思える点や懸念はないか教えて下さい
- 意図:組織とのマッチングを見る
- Q. どんな人とうまくやっていけるか、逆に上手くやっていけないかなどの点を教えて下さい
- 意図:どこまで多様な人達と自立的にうまくやっていけるか
- Q. 一番人とぶつかって本気で議論した経験はいつか、逆に言いたかったけど言えなかった経験はあるか教えて下さい
- 意図:率直さ、謙虚さ
- Q. なぜ転職を考えたか、今の会社はなぜ入ったか、今後どういう観点で企業を見ているか教えて下さい
- 意図:仕事観の確認、転職へのモチベーション
- Q. 今後何がしたいか、どんなサービス、どんな技術、なぜそれか教えて下さい
- 意図:組織とのマッチングを見る
- Q. 今後何がしたくないか、どんなサービス、どんな技術、なぜそれか教えて下さい
- 意図:組織とのマッチングを見る
- Q. 会社の方針で納得いかなかったことは何かあるか、どう向き合って行動したか教えて下さい
- 意図:どこまで主体的に考えられるか、違和感にどう向き合えるか
その他
本記事を考える中で参考になったリンクです。(ありがとうございます。)
最後に
観点は日々アップデート中です。
プログラミング試験や、実技試験などはほぼなく、面接中心なので、それ以外の手法は次年度以降考えてもいいかなと思っています。
こういう選考をしている、効果的だ、などありましたら是非情報交換させてください。
また、上記の観点で採用をしているからとはいえ、社内で完璧に出来ていることは決してなく、そのような観点でお互いに学び合い、育てあう中で日々切磋琢磨をしております。成長出来るかも、楽しいかもと、もしご興味持ってくださったら是非連絡くださいませ。
少し早いですが、2020年も株式会社LITALICOをよろしくお願いいたします!