なぜこの記事を書くのか
Amazon Monitronは産業機器に適しています。サービスの詳細はここでは割愛します。
センサーデバイス(振動と温度)は産業機器に設置するのですが、設定の際にISO 20816に基づいたクラス分類に沿って、クラスを選択する必要があります。
ただここで大抵つまずきます。規格がわかりづらく、どのクラスに設定すべきか自明でないからです。
規格のあいまいさについて
AWS公式のクラス、説明を元に、文章から読み取れる定格出力の幅と一言表現を表にしてみました。
クラス | 説明 | 定格出力の幅 | 一言で |
---|---|---|---|
クラス I | エンジンや機械の個々の部品を、通常の運転状態で機械全体に一体的に接続します。例えば、最大 15 キロワット (kW) または 20 馬力 (hp) の生産用電気モーターなど。 | ~15kW | small machines |
クラス II | 特別な基礎を持たない中型機械 (通常、出力が 15~75 kW (20~101 hp) の電気モーター)、特別な基礎の上に強固に取り付けられたエンジンまたは機械 (最大 300 kW または 402 hp)。 | 15~75kW | medium machines |
クラス III | 振動方向において比較的堅い、強固で重い基礎に取り付けられた回転質量を持つ大型の原動機やその他の大型機械。 | ??? | large rigid foundation |
クラス IV | 振動測定の方向は比較的柔らかく、強固で重い基礎に取り付けられた、回転質量を持つ大型原動機やその他の大型機械。例えば、出力が 10 メガワット (MW) または 13,404 hp を超えるターボ発電機セットやガスタービンなど。 | 10MW~ | large soft foundation |
上記のようにまとめてみると、クラスのレベルがあがるにつれ機器のサイズが大きくなり、基礎が柔らかい(ゆえに揺れが大きくなる)という流れは見えてくるものの、定格出力もクラス3には記載がなかったり、定量的な指標があいまいなため、なんとも要領を得ません。
なお、クラス4の「出力が10 メガワット級のタービン」の規模感を図りたい場合は、画像検索するとよいかもしれません。
https://www.google.com/search?q=10mw+turbine&tbm=isch
また、Monitronセンサーには温度センサーもあるにも関わらず、ISOは振動についてしか定義されていません。(おそらく温度はAIのみで判断する?)
少し深堀り
SORACOMの人が記載した公式上の記事には、さらに詳しく書いてあります。
機械クラスは基本的に定格出力で選ぶことになります。仕様から読み取れない場合は、他の機械と比較して設定することになります。例えば、50 cc 排気量区分の電動バイクは、最大 0.6 kW 定格出力でクラス I に分類 されます。クラス II (ISO 20816 なら Group 2) に該当する定格出力 20 kW は、電動バイクなら大型自動二輪が必要な出力です。
仕様と異なる設定をしても、警告 / アラートのしきい値が異なるだけで、計測や運用に大きな支障を与えるわけではありません。運用開始後にクラスの変更もできるので、実測を基に調整できます。そのため、定格出力が不明であれば、まずはクラス I を設定するというのも方法の 1 つです。
クラス1から設定してみるのもよいと記載されています。
たしかにあとからクラスを変更することはできますし、なんならカスタムクラスという機能で、自分でしきい値を設定することも可能ですが、高額なセンサーが自身の産業機器で適切にセンサリングできるのかは事前に把握しておきたいものです。
勝手にマッピング
少し調べてみると、Monitronの管理画面で、現時点の各クラスのしきい値を確認することができます。
- 上記を単純にマッピングすると、下表のようになります。
各クラスのしきい値はグラデーションのようになっていることがわかります。
つまり複雑な計算式があるのではなく、ごく単純に典型パターンを指標化しただけのようにみえます。
結局のところSORACOMの中の人がいうように、クラスにこだわるというよりも、自身のデバイスの正常な値がHealthyの範囲となるクラスを選ぶか、カスタムクラスで定義してしまえばよいということに思えます。
サンプルデータ
ちなみに私の金魚用のエアーポンプ(定格消費電力 1.5W) を、Class 1 で設定した結果のグラフは以下のような感じです。正常稼働しているはずなのですが、X軸が設置直後からアラームしきい値である4.5を余裕で超えて9以上をマークしています。(設置後、5時間ほどでMonitronのアラーム通知が発生しました)
- 金魚用の小型のエアーポンプが、本来、15kWの定格出力まで対応するクラス1のアラームしきい値を余裕で超えてしまうのは、素人考えで少し解せない感じもありますが(※)、そもそも家電製品は非推奨ですし、このような場合はカスタムクラスを作るべきなのかもしれません。
ただしまだ私の取得データはMonitronにおけるAI学習のベースライン期間である14~21 日 を超えていないため、もしかしたらカスタムクラスを作らずとも正常範囲を学習してくれるのかもしれません。
状況、運用シナリオ、ユースケース、アセットの職務サイクルなどのさまざまなパラメータに応じて、このベースラインを確立するには 14~21 日 Amazon Monitron かかります。この初期学習およびトレーニングフェーズでは、アセットは正常であると想定されます。
アセットのベースラインを確立した後、 は収集したデータを Amazon Monitron モニタリングし、潜在的な障害を示すイベントや傾向を探します。特に、温度や振動レベルの上昇、あるいはその両方を監視します。温度と振動の上昇は、マシンの故障を示す主な指標です。多くの場合、マシンの異常はアセットが故障し始めていることを示しています。
振動に関する基礎知識
以下のページが数学音痴の私にはわかりやすかったです。
振動数(F)
振動している物体が、1秒間に繰り返し運動する回数を振動数(または周波数)といいます。
単位:Hz
速度(V)
変位の時間に対する変化率を速度といいます。
単位:mm/s, cm/s
C・F(波高率・クレストファクター)
PEAKとRMSの比。
ベアリングの相対比較による劣化判断材料に利用できます。
技術的には、 RMSインジケーターは周期信号 (特に電気信号の分析) の統計的記述に関連する非常に正確な定義を持っていますが、振動信号の実際の分析では、平均的な「振動レベル」を表す最も一般的な数値であると言えます。とある機械の。電気または電子技術者は、これを信号の「実効値」と呼びます。
RMS は振幅値に関係なく振動レベルの値を非常に簡単に推定します。
振動規格に準拠した速度信号の実効値(Velocity RMS – 略称「VRMS」)
技術的には、純粋な正弦波の RMS 値は、半波の下の面積に等しくなります。
結局のところ、振幅は、マシンの状態について特定の一般化を行うための単なる数値です。どの数値を超えると災害が発生し、どの数値を下回ると安全であるという正確かつ正確な数値はありません。
とりいそぎ以上です。本記事は随時更新していきたいと思います。