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ネイキッドドメイン+HTTPSで運用するRailsアプリを5.1にアップグレードしたら、サブドメインも強制的にHTTPSになってしまった話

Last updated at Posted at 2017-07-07

問題:実際に起きた怖い話

長いタイトルですいません。この問題はちょっとわかりづらいので、まず実例からお話しします。

僕の妻はクープバゲットというパン屋をやっていて、僕はそのWebサイト(メインサイト)を管理しています。
このWebサイトはRailsで構築しています。

このほかに、ブログサイトがあります。
ブログサイトの実体はTumblrですが、独自ドメインを充てています。

この時点で押さえておくポイントは以下の2点です。

  • メインサイトはネイキッドドメインで、ブログサイトはサブドメインで運用している
  • メインサイトはHTTPSで、ブログサイトはHTTPである

今朝、メインサイトのRailsのバージョンを5.0から5.1にアップグレードしました。
メインサイトは順調に動いていたのですが、Railsアップグレードとは無関係なブログサイトが急にアクセスできなくなりました。
以下がそのエラー画面です。

Screen Shot 2017-07-07 at 9.42.30.png

エラーメッセージをよく見ると、ブログサイトのURLが https://blog.coupe-baguette.com になっています。
しかし、ブログサイトはHTTPS対応していないので、当然HTTPSでは接続できません。

でもなんで勝手にHTTPSになってるの!?

・・・というのが、実際に起きた怖い話です。

問題の原因:HSTSがサブドメインに対しても有効になったため

ブログサイトが強制的にHTTPS接続になった原因は、メインサイトのレスポンスヘッダにありました。
以下がその問題の行です。

Strict-Transport-Security:max-age=15552000; includeSubDomains

この行はHSTS(HTTP Strict Transport Security)の設定情報です。
HSTSについては以下の記事で詳しく説明されています。

HSTS (HTTP Strict Transport Security) の導入 - Qiita

簡単にいうと、これはブラウザに対して、

「常にHTTPS接続してくれよ、サブドメインも含めてな!」

とお願いする設定です。
そのため、ブラウザはメインサイトのみならず、ブログサイトまでHTTPSで接続しようとしたのです。

ちなみにRails 5.0時代は以下のようになっていました。

Strict-Transport-Security:max-age=15552000

ご覧のとおりincludeSubDomainsが付いていないため、ブログサイトはHTTPS接続されることを免れていたのです。

Rails 5.1からincludeSubDomainsが付くようになった

includeSubDomainsオプションが付くようになったのは、このコミットの影響です。

実はincludeSubDomainsオプションは、新規にrails newした場合に限り、5.0でも有効になっていました。
なぜなら、config/initializers/new_framework_defaults.rbで明示的に設定されているからです。

config/initializers/new_framework_defaults.rb
# 省略

# Configure SSL options to enable HSTS with subdomains. Previous versions had false.
Rails.application.config.ssl_options = { hsts: { subdomains: true } }

しかし、Rails 4.xからアップグレードした場合はこのオプションが付きません。
そのため、新規に5.0でrails newした場合と、4.xからアップグレードしたときで、設定内容が異なることになります。

上記のコミットはこの問題を避けるために、明示的にオプションを指定しなくても、そのバージョンのRailsのデフォルト設定を有効にするための変更です。
その結果、Rails 5.1からは新規にrails newした場合と同様に、includeSubDomainsオプションが付くようになりました。

もうひとつの条件:force_sslがtrueのときだけHSTSの設定も有効になる

しかし、rails newしたRails 5.0や、アップグレードしたRails 5.1で必ずHSTSの情報が付与されるわけではありません。

HSTSの情報が付与されるのはforce_ssltrueになっているときだけのようです。

config/environments/production.rb
  # Force all access to the app over SSL, use Strict-Transport-Security, and use secure cookies.
  config.force_ssl = true

解決策:HSTSのオプションを明示的に上書きする

解決策はデフォルト設定を明示的に上書きすることです。
今回は以前と同じ状態に戻すために、以下のような設定を入れました。

config/initializers/ssl.rb
Rails.application.config.ssl_options = { hsts: { subdomains: false } }

これで以前と同じようにincludeSubDomainsオプションなしのHSTSになりました。

Strict-Transport-Security:max-age=15552000

なお、ssl_optionsの設定値については以下のAPIドキュメントを参考にしてください。

ActionDispatch::SSL

この件のまとめ

というわけで、以下の条件が揃うときっと痛い目を見るよ!

  • ネイキッドドメインのサイト(メインサイト)がHTTPS
  • サブドメインがサイト(サブサイト)がHTTP
  • メインサイトがRailsで構築されている
  • メインサイトのforce_sslオプションがtrueになっている
  • メインサイトをRails 5.1にアップグレードした
  • メインサイトにアクセスしてからサブサイトにアクセスする → サブサイトまで強制的にHTTPS接続に:skull::skull::skull:

もしこの問題が発生したら、Railsのssl_optionsを明示的に設定して、サブサイトがHTTPS接続されないようにしましょう。

全部の条件が揃うのはかなりレアかもしれませんが、みなさんも注意してくださいね。

Special thanks to

この件の調査と解決に協力してくれた同僚の @ruzia に感謝します。:pray:

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この問題とは直接関係ありませんが、妻のパン屋のWebサイトをデザインリニューアルしたときの話をこちらのブログに書いています。

妻のパン屋のWebサイトを4年ぶりにレスポンシブデザインに作り替えた話 - give IT a try

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