LoginSignup
12
13

More than 5 years have passed since last update.

組み合わせ数(二項係数)を計算する

Last updated at Posted at 2015-11-08

「○個のものから□個だけ取り出す」という処理はときどき必要となりますが、それを行った場合の「数」だけ考える場合も、地味に面倒だったりします。

定義とその性質

このような、「$n$ 個のものから $k$ 個だけ取り出す場合の数」は、二項定理の係数としても現れることから、二項係数という呼び名があります。いろいろな表記法がありますが、ここでは $_n\mathrm{C}_k$ と書いてみることにします。

まず、掛け算として書くと、

_n\mathrm{C}_k=\frac{n!}{k!(n-k)!} = \frac{n\times(n-1)\times\dots\times(n-k+1)}{k!}\tag{1}

のように書けます。また、この二項係数はいくつか満たす性質があります。

\begin{align}
_n\mathrm{C}_k&={}_n\mathrm{C}_{n-k}\tag{2}\\
  &= {}_{n-1}\mathrm{C}_k + {}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1}\qquad(k \gt 0)\tag{3}\\
_n\mathrm{C}_0&=1\tag{4}\\
_n\mathrm{C}_1&=n\tag{5}\\
\end{align}

とりわけ(3)は、パスカルの三角形として知られています。

Rubyの場合…何も考えなくてもじゅうぶん速い

Rubyの場合、こんな場合に便利な言語仕様が1つあって、それは「整数演算で値が大きくなっても桁あふれせず、勝手に多倍長整数(Bignum)になってくれる」ということです。ということで、桁あふれを気にせず、いきなり(1)の式を使うことができます(ただ、項数が増えても無駄なので、$n/2<k$ の場合には (2)を適用して、掛ける項数を減らすことだけはしています)。

combi.rb
def combi(n,k)
  k=n-k if 2*k > n
  return 1 if k == 0
  ((n-k+1)..n).reduce(&:*)/((1..k).reduce(&:*))
end

なお、RubyではRangeEnumerableなので、そのまま範囲内の値についてreduceできます(関連)。

そして、速度についても申し分なく、$_{1000}\mathrm{C}_{500}$ の計算が1ミリ秒で完了する程度に高速でした。

JavaScriptの場合…

JavaScriptの場合、標準で多倍長整数をサポートしておらず、(1)をそのまま書けば浮動小数点数での演算となって、2進法で53ビットの精度を越えてしまえば正確な値が出なくなります。ということで、正確な値を出すための戦略は2つ考えられます。

  1. より小さいものの足し算から算出する
  2. 途中で適宜約分しながら掛け算を進める

足し算で計算

(3)を使えば、より小さな値の計算へと変換することができます。ということで、まずはシンプルに実装してみましょう。

シンプルな実装
function combi_simple(n, k){
  if(k*2 > n) k=n-k;
  if(k===0) return 1;
  if(k===1) return n;
  return combi_simple(n-1, k) + combi_simple(n-1, k-1);
}

これで、解が$2^{53}$ 以下になるのでJavaScriptでも正確に表せる $_{100} \mathrm{C}_{13}$ を計算させようとしましたが…10秒しても応答がありませんでした。ただのしかばねのようだ。

キャッシュさせてみる

実は、この計算にはかなりの無駄があります。

\begin{align}
_{100} \mathrm{C}_{13}&={}_{99}\mathrm{C}_{13}+{}_{99}\mathrm{C}_{12}\\
&={}_{98}\mathrm{C}_{13}+{}_{98}\mathrm{C}_{12}+{}_{98}\mathrm{C}_{12}+{}_{98}\mathrm{C}_{11}
\end{align}

というように、展開していく中で同じ項が何度も登場するのですが、そのたびごとに計算してもあまり意味がありません。そこで、メモ化させてみることにします。

メモ化
var memo={};
function combi_memorized(n, k){
  //メモるまでもなく出る値はそのまま返す
  if(k*2 > n) k=n-k;
  if(k===0) return 1;
  if(k===1) return n;
  //メモを確認
  var memo_key = n + ',' + k;
  if(!memo[memo_key]){
    memo[memo_key] = combi_memorized(n-1, k) + combi_memorized(n-1, k-1);
  }
  return memo[memo_key];
}

こうすることで、一瞬で値を返すようになりました。

約分して掛け算

もう1つの戦略の「約分して掛け算」について考えてみましょう。できるだけ約分の回数を減らすために、「$2^{53}$ を超えない範囲で掛け算をしてから、最大公約数で割る」ことにしてみます。

約分
// 2^53より少し小さな値
var MAX=9e15;

function combi_reduction(n, k){
  //すぐに出る値はそのまま返す
  if(k*2 > n) k=n-k;
  if(k===0) return 1;
  if(k===1) return n;
  function gcd(x, y){
    var t;
    while(y){
      t = x % y;
      x = y;
      y = t; 
    }
    return x;
  }
  var num=1, denom=1, tmp, i;
  var nums=[], denoms=[];
  for(i=0; i<k; ++i){
    nums.push(n-i);
    denoms.push(k-i);
  }
  while(denoms.length){
    while(denoms.length){
      tmp = denom * denoms[denoms.length-1];
      if(tmp > MAX) break;
      denom = tmp;
      denoms.pop();
    }
    while(nums.length){
      tmp = num * nums[nums.length-1];
      if(tmp > MAX) break;
      num = tmp;
      nums.pop();
    }
    tmp = gcd(num, denom);
    num /= tmp;
    denom /= tmp;
  }
  for(i=0;i<nums.length;++i){
    num *= nums[i];
  }
  return num / denom;
}

この2つの速度比較をjsPerfに投稿しましたので確認できますが、メモ化のほうが速そうです。

12
13
7

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
12
13