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mini_racerと、シンプルさのメリット

Last updated at Posted at 2018-12-11

Railsのプロジェクトを書いていたところ、ある1つのGemの存在を知りましたが、そこから派生していろいろなことに考えが思い至っていきました。

therubyracerとは

Railsでは、JavaScriptやCSSといったアセットの生成用としてSprocketsという仕組みが組まれていますが、CoffeeScript、Uglifier、autoprefixerなど、アセットのコンパイルにはJavaScriptで書かれたコードを多用するものなので、execjsという仕組みが入っています(過去に自分が書いたもの)。

そして、JavaScriptを動かすランタイムが必要なのですが、Unix系では多くの場合、V8エンジンを組み込んだtherubyracerがよく使われて…いました。

問題点

therubyracerはV8を細かく制御できる…のはいいのですが、細かなところまで使っているのが仇となって、

  • テストも回しづらい
  • V8のアップデートに追随するのが困難

というような状況になり、ついにはセキュリティ問題も含んだ古いV8でしか動かない状態が固定化してしまいました。

新顔のmini_racer

ここで登場したのがdiscourse/mini_racerです。自称「最低限のブリッジ」を謳ってはいますが、ふつうにJavaScriptのコードを呼んで実行する以上のこともできますし、よほど極限的な用途でもない限り事足ります。

ブリッジ部分をシンプルにしたことで、V8のバージョン依存性も緩やかになり、バージョンアップに追随しやすくなっています。そして、libv8自体もバージョンが上がったことで、インストール性が改善されているようです。

シンプルさの価値

Unix哲学にも、「一つのことを行い、またそれをうまくやるプログラムを書け。」という言葉があります。「RubyからJavaScriptを実行するランタイム」の場合、大半のユーザーが求めるものは「execjsで実行できること」でしょうから、あまり複雑なバインディングを取らずに簡潔化する、mini_racerの戦略も間違いなく合理的なものです。

もっとシンプルにしようとすると、別な問題が

とはいえ、libv8もまだまだ巨大なプロダクトで、Rubyに組み込むのがうまくいかないこともあります。これをシンプル化する方策もいくつか考えられます。

  • Duktapeのような、もっと軽量で組み込みに向いたJavaScriptエンジンを使う
  • 別にインストールしたNode.jsを呼び出す形にして、組み込みの煩雑さを回避する

これらの方策でシンプルさは増しますが、引き換えに速度面ではハンデを負うことになります。これは多くの場合に問題となることですが、速度と性能のバランスも時を減れば移り変わっていくので、最適な形を選ぶのが難しいものです。

ただ、execjsのようなレイヤーが入っていれば、使うランタイムも適宜切り替えられますので、このような抽象化レイヤーを入れて部品を入れ替え可能にしておく、というのもあとあと役に立ちうる設計です。

別解

もはやSprocketsには見切りをつけて、アセット類はすべてWebpackに任せる、というような分業も1つの方法かもしれません。ただ、CommonJSやES Modulesで標準化されているJavaScriptはいいとして、CSSをWebpackに載せてしまうと、Webpackが廃れたときに行き詰まる危険性が考えられます。

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