はじめに
次の記事のための準備.式自体は知ってたけど,証明を知らなかったり何が美しいのか実は知らなかったり(苦笑
証明とか興味ない人もいるだろうから先に結論から行きましょう.最後に証明します.
オイラーの等式
この名前を知らない人は少なからず,いる気がする.でもこの式は知ってる!って人は多くいるでしょう.
{
e^{i\pi}+1=0
}
これがオイラーの等式.Tシャツとかに書かれてそう.
美しい理由
さて,この等式,何が美しいのか?数Ⅲの範囲になってしまうが,この文字たちにはそれぞれ意味がある.
- e=2.71828182846$\cdots$ ;自然対数(ネイピア数)
数Ⅲの極限の範囲で初めて登場する.理系ではおなじみの,
{
e=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n
}
である.
-
$\pi$=3.14159265359$\cdots$ ;円周率
100桁まで覚えた人もいそう.いわゆる3.14ってやつ. -
$i$ ;虚数単位
存在しない数を文字でおくということに慣れなかった人もいるよね.
{
i^2=-1
}
です.
- 1 ;乗法単位元
- 0 ;加法単位元
さてこの2つは大学範囲の単語.え?ただの0と1じゃないの??って.違うんです.意味は簡単.要はある数aに対して
{
a\times 1=a,a+0=a
}
と,掛け算,足し算したのに,その数を変えない値を乗法単位元,加法単位元,という.少し考えれば分かるが,**実数全体$\mathbb{R}$の乗法単位元,加法単位元はそれぞれ1,0のみなんです.**そう考えると,ちょっと特別な数って思いません??
以上から,もう一度オイラーの等式を見てみよう.
{
e^{i\pi}+1=0
}
一見関係ないような数たち$e,\pi,i,0,1$が一堂に会するこの等式美しいと思いませんか!!私はさっきこれを知ったときは,なるほどな~ってなりました.感動まではしなかったけど.
ここまで読んでほしい!
心の声が出てしまった.さて,ここから虚数の虚数乗を考えていこう.
実はオイラーの公式というものがあって,
{
e^{i\theta}=\cos \theta+i\sin\theta
}
右辺は複素数の極形式表示ですね.実は左辺のように表せたりするんです.なにが言いたいって,この$\theta$を$\theta=\pi$とすれば,あら不思議.オイラーの等式が現れました.
と,これだけではなく,$\theta=\frac{\pi}{2}$とするとどうだろう.
{
\begin{align*}
e^{\frac{i\pi}{2}}&=\cos \frac{\pi}{2}+i\sin\frac{\pi}{2}\\
&=i
\end{align*}
}
これを両辺$i$乗してみよう.
{
\begin{align*}
i^i&=\left(e^{\frac{i\pi}{2}}\right)^i\\
&=e^{\frac{i\pi}{2}・i}=e^{-\frac{\pi}{2}}\\
&=\dfrac{1}{\sqrt{e}^\pi}\\
&=0.2078795763507619\cdots
\end{align*}
}
**控えめに言ってやばい.何がやばいって,存在しない数を存在しない数乗したら存在する数になるんだもん.**というわけで以降証明していきましょう.
証明1(マクローリン展開)
さてここから,オイラーの公式
{
e^{i\theta}=\cos \theta+i\sin\theta
}
の証明をしていこう.証明の1つとしてマクローリン展開を利用する.まず,準備として,
{
\begin{align*}
e^x=&1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots\\
&=\sum_{k=0}^\infty \frac{x^k}{k!}
\end{align*}
}
これがどのように近似されているかを考察し始めるときりがないのでここでは割愛.この$x$を$ix$に変えると,
{
\begin{align*}
e^{ix}=&1+ix+\frac{(ix)^2}{2!}+\frac{(ix)^3}{3!}+\cdots\\
&=1+ix-\frac{x^2}{2!}-i\frac{x^3}{3!}+\cdots\\
\end{align*}
}
さらに,
{
\begin{align*}
\sin x&=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^{2k+1}}{(2k+1)!}(-1)^k\\
\cos x&=1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}+\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^{2k}}{(2k)!}(-1)^k
\end{align*}
}
三角関数もマクローリン展開した.ここまでくればいいでしょう.$\cos\theta+i\sin\theta $を計算することで,$e^{i\theta}$と一致する.以上!
証明2(微分方程式)
2つ目の証明として微分方程式を使ってみよう.
$f(x)=\cos x+i\sin x$とすると,
{
\begin{align*}
f'(x)&=-\sin x+i\cos x\\
&=i(\cos x+i\sin x)=if(x)
\end{align*}
}
この微分方程式の一般解は$f(x)=Ce^{ix}$である.初期条件$f(0)=1$から,$C=1$とわかる.より,$f(x)=e^{ix}$とわかる.
まとめ
虚数の虚数乗,考えたくもなかったがオイラーの公式を使えば案外簡単(?)にわかるのね.このオイラーの公式は次の記事で使うので頭の隅っこにでも置いておいてください.
別に証明なんて知らなくても,少しでも,へ~,ってなってくれれば当方は満足です.
(注釈)
複素関数のところもっとしっかり証明しなきゃダメでしょとか,当たり前だわこんなの!!とか,そういう指摘はナンセンス.少しでも数学に興味をもってもらうのがこの記事の趣旨なので,そういう議論は(もちろん必要だけど)この記事では必要なし.興味をもったら自分で調べてね.当方もよくわかってない☆